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はじまり
卒業式の朝
少女たちの息吹が宿る教室に 春の風が迷い込む
開け放たれた窓から見下ろせる校庭の花壇には
スノードロップの花が 咲き乱れている。
教師である彼女も
かつてはこの校舎に通っていた 生徒だった。
あの頃を思い返すと
教師という立場になった今でも
償いの気持ちが込み上げ
胸が苦しくなる。
過去を吐き出すように深く息を吐き
窓から視線を戻して教室を見渡す
心に迷いはもうない。
教師は三年間受け持った生徒たちの顔を思い浮かべながら
年季の入った机の上に
一つ一つ
「卒業おめでとう」
と印字された短冊付きのコサージュを静かに置き始める。
すべての席に配り終えたとき
ふと誰かに手を掴まれたような 感覚がして振り返った。
だがそのには誰もいない。
空気に紛れてしまった手を
そっと握り返す。
「大丈夫、私作るから」
あの凄惨な授業が行われてから 七年もの時が流れ
いつしかその手の温もりは思い出せなくなった。
けれどあの日の死を
決して忘れない。
無念に散っていった親友の思い出を
絶対に無駄にはしない。
そのためにも今日
最後の授業を執り行うと 決めたのだから。
「いじめのない教室を」
教師は誓うように呟き
ゆっくりと教壇に歩み進め
短くなった白のチョークを取る。
そして
震える手で
黒板に書き出した。
・二人一組になってください