完璧を求める

社長……僕もついて行きます。
僕は失敗しかしない無能ですけど
……それでもついて行きます

甲斐田も泣きながら言った。

加賀美も泣き始める。
だが、この涙は恐怖から来るものではなく、
安心したという安心から来るものだった。
2人はまだ泣いているが、不破湊が口を開いた。

もう大丈夫ですよ社長、
俺らは一緒にいますし、全員いますからね

３人は涙を手で拭った。

加賀美はそう言って微笑んだ。

それから退院後しばらく、
加賀美は仕事の話はしなかった。
今日は3人でゲームをしたり、
雑談をしたりして盛り上がった。
気づけば夜になっていた。

あ……もうこんな時間ですね

ほんまやね

甲斐田は伸びをする。
不破もあくびをしていた。
そしてまたそれぞれ解散の雰囲気になる。

せやな。また明日

お疲れ様

バイバイ

そう言い加賀美は、
ベッドに潜った。

最近加賀美ハヤトは、悪夢を見る。

今もそうだ。

一つ目は、
なにものかに追われる、
脅される、
刺されるなど他者から恐怖を与えられる夢。
二つ目は、
事故にあったり溺れたり、
高い所から落ちるなど、
自分自身の言動によって怖い思いをする夢。
そして三つ目は、
事件などのトラブルに巻き込まれたり、
戦争や地震、
洪水などの、
いわば否応なしの被害にあって怖かった夢。

今回は…
三つ目だ。

加賀美が、
自分のせいで誰かが傷つくのは嫌だと、
その恐怖を夢に見た。

……見えてきたのは……

人が倒れている光景だった。

声をかけながら駆け寄る。
返事はない。ﾀﾋんでいた。

相手は、

過呼吸を起こした。
加賀美の周りには、死体が沢山ある。

もう、加賀美の精神は限界に達していた。

加賀美ハヤトは、完全完璧を求めてしまった。


加賀美ハヤトという『人格』が無くなった。