「人、殺しちゃった…」
君は突然言い放った
あれは僕が中学3年の梅雨の時期で
ずぶ濡れのまま、君は家の前で泣いていた。
夏が始まったばかりで、蒸し暑いはずなのに
君は酷く震えていた。
瑠夏
夏月
瑠夏
夏月
未希、というのは4月から瑠夏を虐めている女だ
僕が何を言っても、彼女は瑠夏への嫌がらせをやめなかった。
放課後、未希に呼ばれて階段に行った。
今考えれば、きっと未希はここで私を怪我させるつもりだったんだと思う。
未希
瑠夏
未希
未希
瑠夏
未希
未希
未希
バンッ!
もう、耐えられなかった
夏月を悪くいうのだけは許せなかった。
階段から未希が転げ落ち、広がる赤い液体を、黙って見つめていた。
でも、急に何かが込み上げてきて
夏月の家まで走った。
瑠夏
瑠夏は今にも泣き出しそうだった。
瑠夏
瑠夏
夏月
瑠夏
瑠夏
さっきまで泣き出しそうだったのに
そう話す瑠夏は、酷く落ち着いて見えた。
瑠夏
夏月
瑠夏
夏月
夏月
それから僕らは、財布や護身用ナイフ、携帯やゲーム、食料などをカバンに詰め込んだ。
大事にしていた日記や写真も、もう要らない。
そして、翌日
僕ら2人は逃げ出した。
家族もクラスのやつらも…何もかも全部捨てて。
ここから遠い、誰もいないような場所で、2人で死のう。
もうこの世界に価値なんてないんだから。
夏月
2人での旅の途中、僕はそう呟いた。
たくさんの人が行き交う夜の街中
ドンっ
通行人
夏月
ぶつかった通行人に頭を下げ、その場を去った
夏月
瑠夏
僕は付けていたマスクをとり、
さっきぶつかった通行人から盗んだ財布を瑠夏に渡す。
僕らが逃げ出して、1ヶ月が経とうとしていた。
その為、僕らの持ち金はゼロになり
金を盗んで逃げるという日々を繰り返していた。
時にはコンビニなどからものを盗む時もあった。
でも今更、怖いものなんて僕らにはなかった。
瑠夏
夏月
瑠夏
夏月
夏月
瑠夏
瑠夏
夏月
最期だね
お互いに見つめあった僕らはそう呟いた。
その時だった。
警察
警察
そう言いながら警察が近づいてきた。
夏月
そう言って僕らは走り出した。
警察
瑠夏
夏月
でも、勝つのは僕達だ。
だって
僕らは鬼達の前で
死ぬと決めているから。
人気の無い道をただ走った。
瑠夏
瑠夏
夏月
こけるなよー
水もなく少し揺れる視界や
迫り来る鬼達の怒号に
僕らは呑気にはしゃいでいた。
そして、誰もいない廃墟へ入った。
瑠夏
瑠夏
夏月
そう言って瑠夏はリュックからナイフを取りだした。
警察
警察
息を切らしながら、僕らを見つめる2人の″鬼″
瑠夏
瑠夏
警察
そう言って、警察はゆっくりと僕らに近づく。
それを合図に僕はポケットからナイフを取り出そうとした。
その時だった。
瑠夏
夏月
瑠夏が突如叫び、僕が振り向く前に彼女の片腕が僕の首に回された。
瑠夏
夏月
瑠夏の持っていたナイフが僕の首元に当てられる。
警察
警察
瑠夏
瑠夏
警察
夏月
瑠夏
瑠夏
瑠夏
瑠夏
瑠夏
夏月
その言葉を最後に瑠夏は僕を突き飛ばした。
夏月
待っ…瑠夏…!!
警察
瑠夏
そして瑠夏は
首を切った。
夏月
警察
瑠夏の首から飛び散る赤い液体。
それと同時に倒れる瑠夏の体。
まるでなにかの映画を見ているようだった。
白昼夢を見ている気がした。
僕の頭の中は真っ白で
気づけば僕は捕まっていた。
僕は人を殺すことも無く、金や物を少し盗んだだけだったからか
1ヶ月の謹慎で済まされた。
あの日のことは忘れられなかった。
家族もクラスのやつらもいるのに、なぜか瑠夏だけはどこにもいない。
何日経っても、あの夏の日を思い出す。
なのに僕は現実を受け入れられず、今でも瑠夏を探しているんだ。
そして、瑠夏。君に言いたいことがあるんだよ。
もうすぐ9月も終わるよ。
でも僕の中ではずっとあの6月の日の匂いを繰り返してる。
そして、瑠夏の笑顔が…瑠夏の無邪気さが…
いつまでも僕の頭の中を飽和しているんだ。
あの日僕はどうすれば君と一緒に死ねたんだろうか。
君だけを殺させずに済んだんだろうか。
いや、違うな。
きっと…僕が一緒に逃げると言ったときから、この未来は決まっていたんだ。
瑠夏、君はきっと
夏月
夏月
夏月
そう言って欲しかったのだろう?
夏月
夏月
静かな公園で1人、涙を流していた。