テラーノベル
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太宰
何事も無かったかのような顔で始まった、春。
珈琲は疾っくに冷めて、 ベンチの塗装は禿げて、 その速さに、私は着いて来れずにいる。
横浜から、五百十五キロ。
太宰
距離は便利だ。 数字にしてしまえば、感情を後回しにできる。 手を伸ばさなくてもいい。
____声も、理由も、何も要らない。
太宰
桜が一欠片、足元に落ちる。
舞う桜に、胸がじんと痛んで、 それは見なかった振りをする。
____きっと、今じゃないだけ
____春の匂いがする。
中也
横に誰か居た気がして、 反射的に横を見た。
……しかし当然、誰も居ない。 桜の花びらだけが、言の葉のように落ちている。
中也
その言葉は、まるで…… " だれか " に云えなかった言葉を表している気がして。
中也
中也
近づくな
思い出すな
____彼奴は、危険だ
中也
誰に向けた言葉なのかも判らない儘、 一人、呆然と立ち尽くす。
世界は、何事も無かったように回っているのに、
____こんなにも、切なく思うのは、
何故なのだろう。
コメント
3件
なんかもう…切ない表現が上手すぎるし、2人の会いたいっていう気持ちがめっちゃ伝わってくる…🥹
とにかく意味不明ですが、最後まで見てくだされば幸いです。