君の全てを見せて

『君の全てを見せて』 第3話

スタート！

昔は

こんな感じじゃなかった

今と違って父さんもいた

ピアノも弾けた

母さんも優しかった

歌うことを我慢することもなかった

料理上手な母と

ピアノの練習を誰よりも応援してくれた優しい父

俺はこの2人と､ 自由に過ごせるこの生活が

大好きだった

だけど…

ﾋﾟｯ…ﾋﾟｯ…ﾋﾟｯ…

ﾋﾟｰｰｰｰｰｰｰｰｰ……

父は

肺の病で 亡くなった

それからというもの

母は変わってしまった

母は俺の話を聞かなくなってしまった

ピシャッ！((ドアの音

小学生になると勉強について よく怒られた

暴力は受けてはいなかったもの

母の冷たい言葉や視線が

俺の精神を削った

中学受験が失敗して

普通の公立の中学に入ったことで

母の行動はエスカレートしていった

テストの点数が90点超えていないと必ず殴られた

夜中の2時まで勉強させられたり

毎日塾に行くようになった

唯一の安らぎを与えてくれたピアノは ｢勉強の邪魔だから｣ と､母に捨てられて

歌うことは禁止された

そう心の中で思っていても

1人で自分を育ててくれている母に 逆らうことができず

なにも言わず､ただ耐えた

あぁ

もう　限界だ

痛い

辛い

苦しい

解放されたい

あの頃に戻りたい

誰か……

誰か……ｯ！！！

……い､

う､り…い

うり先輩

放課後

ピアノの音を聴くと心が安らぐ

歌を歌うと昔のことを思い出す

歌を歌うと自分に素直になれる

泣いたって問題は解決しないのに

涙は出るばかり

ｷﾞｲｯｯ((扉を開ける音