テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
キュートアグレッション (Cute Aggression)
脳が過剰な愛情や幸福感を 処理しきれず、 感情のバランスを取るための防衛反応
夢
何処から 女の啜り泣く声が聞こえた。
荼
荼
声をかけた理由は、 心配でも善意でもなく ただの気まぐれだった。
強いて理由をあげるとしたら 咽び泣く女を目の当たりにして 僅かなカメリアコンプレックスが 無意識下に促されただけ。
夢
夢
荼
夢
荼
裏路地にへたり込み、 壁に背中を凭れ膝を抱えて泣く女が 大粒の涙を拭いながら 俺を見上げた。 足も腕も、顔までも 殴られたような痣と傷だらけ。
荼
この女に頼れる居場所がないことは 聞かずとも分かった。
それは俺も同じだから。
荼
荼
必要最低限の物しか揃えていない 無機質なワンルームで 憔悴しきった野良猫のような女の 脚を濡れたタオルで拭いてやる。
夢
力無く女は頷く。
荼
荼
夢
夢
夢
荼
荼
荼
夢
荼
逃げる途中で転んだのだろう。 擦りむいて血だらけの膝に 濡らしたタオルを当てた。
夢
荼
荼
夢
荼
夢
夢
泣いているのか笑っているのか 分からない顔で俺を見る表情は 安堵に満ちていた。
こうして狭量な世界から はみ出た俺と家出女の 同居生活が始まった。
まだ陽が登らない明け方。
ガチャ─
玄関を開けると 座ったまま壁に凭れる彼女が 布団に包まり眠っていた。
コイツが来て約十日。 俺が出かけると必ずここで 帰りを待つように寝ている。
荼
荼
言いながら軽い体を抱き上げ 布団まで運んで隣に寝転ぶ。
出会った当初の傷や痣、 顔の腫れは目立たなくなり 見違えるほど女らしくなった。
荼
長い睫毛、通った鼻筋、 柔らかそうな唇。
透き通るような白い肌、 容易く折れそうな細い首。
壊したい。
荼
荼
顔にかかった髪を 耳にかけてやりながら 穏やかに眠る彼女を 起こさないよう息を潜めた。
気付けば眠ってしまっていた。
素肌の残る頬骨に 微かな温もりを感じて 目が覚めた。
荼
夢
僅かに感じた温もりは 彼女の指先から伝わる体温で、 慌てて離れようとする 細い手首を掴んだ。
夢
荼
荼
掴んだ手首を引き、 彼女の手のひらに頬を寄せた。
驚いたような表情を向ける瞳が 言葉を探して彷徨っている。
酷い火傷で変色した顔は 嘸かしいたわしく彼女の瞳に 映っているのだろう。
荼
夢
頬に寄せた彼女の手指は 温かくて柔らかくて 頼りないくらいに細い。
夢
夢
彼女の指腹が 医療用ホチキスに触れた。
荼
夢
夢
夢
夢
綺麗。
聞き慣れない言葉が 心の中のやわいところに落ちて じわりと満ちていく。
きれい
キレイ
夢
不安げに眉を下げて ちらりと寄越した視線は 俺だけに向けられている。
荼
荼
荼
純粋な愛情ほど怖いものはない。 それなのに欲してしまう。 もっともっと、と求めてしまう。
その濁りのない真っ直ぐな瞳を、 嫉妬や憎悪や劣等感が 混在している俺の全てで 汚して壊して征服したい。
夢
夢
夢
彼女が言い切る頃には 肩を押し倒していて、 布団に艶やかな黒髪が広がった。
荼
荼
透けてしまいそうなくらい白い 首筋に口付けて
夢
舌先でじっとりと舐め上げて きつく吸い付き跡を残した。
折角 痣ひとつなくなった肌に 好き勝手噛み付いて、 今度は俺が壊して 染め直していく快感は たまらないものだった。
とめどない衝動を 鎖骨や胸元、脇腹、 内腿、背中など 彼女の全身に殖えて
親からの愛を知らない二人で ドス黒い愛を八つ当たりみたいに ぶつけ合う。
「もうやめて」と涙を流す顔に どうしようもなく興奮して 踏み躙ってやると 益々俺の愛に溺れる姿が たまらなく愛おしい。
荼
荼
荼
今度は容易く折れそうな細い首に 手をかけて絞めてやると、 低酸素状態で蕩けた瞳が 愛らしくて だらしなく開いた口を唇で塞いだ。
苦しいよな、つらいよな。
でも可愛くてたまらない。
御前はもう俺のもの。 だから今は許して。
キュートアグレッション