稲荷山神社
千世
(神木の下で待ち合わせだよね)
千世
(いるかな?)
千世
(いた)
凪
あ、千世ー
千世
凪ごめん
千世
待たせちゃった?
凪
ううん全然大丈夫!
千世
…
凪
僕にどう説明すればいいのか困ってるね
千世
え?
凪
千世何かあるって顔してるよ
千世
凪は勘が鋭いね
凪
それほどでも
千世
じゃあ質問
凪
はい
千世
凪は妖怪?
凪
うん、そうだよ
千世
鬼?
凪
そうだねー
千世
じゃあ黒鬼組の鬼なの?
凪
はっきり言うとそうだね
千世
そっか…
凪
悲しい顔してるよ?
千世
だって敵なんだって分かって悲しいよ
凪
千世は石成家の人でしょ?
千世
やっぱり分かる?
凪
分かるよ、僕たちの敵って言ったら石成家になっちゃってるから
凪
けど今の黒鬼組はそんなに人間とは争いたくないと思ってるんだ
千世
本当に?
凪
うん
凪
石成家と仲直りがしたいけど近づいたら攻撃してくるでしょ?
千世
多分ね
凪
だから今は何も手を出さずにしてる
千世
そっか…
千世
私ね親に黒鬼組に潜入して来いって言われてるんだ…
凪
いいよ、うちにおいでよ
千世
え⁈けど私、敵だよ?
凪
多分うちの組は歓迎してくれると思うよ
千世
本当に?
千世
何か重要なこと喋っちゃうかもよ?
凪
千世は僕たちを悪いように言わないって分かってるから
凪
うちにおいでよ
千世
わ、分かった
黒鬼組
凪
ただいまー
千世
お邪魔します…
鬼たち
お帰りなさい若頭!
千世
⁈
凪
お前たち千世が驚くだろ
鬼たち
客人がおられましたか
鬼たち
どうぞゆっくりしてってください
千世
ありがとうございます
凪
俺の親のところに行こう
千世
…
凪
そんなに身構えなくても大丈夫だよ
千世
分かってる…けど…
凪
大丈夫、僕がついてるから
千世
ありがとう
王座の間
凪
ただいまー
千世
失礼します…
凪
父さん、連れてきたよ
千世
石成家当主の娘の千世と申します
黒蓮
これはご丁寧に
黒蓮
黒鬼組の頭、黒蓮と申す
黒蓮
私のことは黒とでも呼んでくれ
千世
はい
涼香
妻の涼香です
涼香
気軽に接してくださいね
千世
ありがとうございます
黒蓮
ではかしこまるのはこれくらいにして
黒蓮
黒鬼組へようこそ千世
黒蓮
今は敵対している存在ではあるが
黒蓮
私は千世に黒鬼組は敵ではないと伝えたい
千世
それは私も同じです
千世
いつか人間と妖怪は分かり合えると信じています
千世
しかし今の石成家は黒鬼組を完全な敵と認識しているんです
千世
私は石成家の考えを壊すためにここに来ました
黒蓮
ありがとう千世
涼香
千世ちゃん、今日は貴方の歓迎会をするわ
涼香
今日は泊まって行って
千世
え、そんな悪いです
涼香
いいのよ
涼香
凪にこんなに素敵なお友達ができたんだもの
涼香
凪を、黒鬼組を受け入れてくれてありがとう
千世
こちらこそ私を信じてくれてありがとうございます
黒蓮
いやでなければなんだが
黒蓮
千世の能力を教えてくれないか?
千世
全然いいですよ
千世
私の能力は「心を操る香り」です
黒蓮
心を操る…
千世
喜び・悲しみ・苛立ちを引き起こすことができます
千世
この能力は麻酔や精神病の人の薬にも活用できます
黒蓮
それは便利だな
千世
けど私は相手を殺すなんてことはしたくありません
千世
だから私の使ってきた香りはごくわずかです
黒蓮
何の香りを使ったんだ?
千世
『安心させる・落ち着かせる・痛みを和らげる』
千世
この3つしか使ったことがありません
黒蓮
なぜ他の香りは使わなかった?
千世
人や妖怪の感情は他者が操っていいものではないと考えているからです
黒蓮
なるほど…
黒蓮
千世は優しいのだな
千世
私がですか?
黒蓮
千世は能力とは関係なく人や妖怪を動かすことができるみたいだ
涼香
いいお嬢さんね
涼香
将来凪の相手にでもどうかしら?
凪
母さんまだ早いって
涼香
けど凪はそうしたいと思っているんでしょう?
凪
まぁそうだね…
千世
?
黒蓮
千世は恋愛には鈍いみたいだぞ?
凪
大丈夫、僕が千世を何年想ってきたか分かってるでしょ?
鬼たち
頭!準備ができましたぜ
黒蓮
それじゃあ行くか
凪
千世!行こう
千世
う、うん…