コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
『 人生倏忽 、夢の如く幻の如し 』
いつの日か 、貴方が言った言葉 。
石鹸玉みたく脆い 、貴方の声の羅列 。
淡雪の奥で触れた 、貴方がくれた何か 。
『 其れ 』は確かに私を抱いた筈なのに 、
最後には雪華の如く咲いて枯れた 。
私の世界からは 、 貴方と共鳴した様に忽然と色が消えた 。
己の髪 、眼 、 そして周囲の景色に至るまで全てが白だった 。
白でしかなかった 。
色が死んだ 。
色を殺した 。
紛れもない 、貴方の死が 。
ならば 、何故 。
私は死なないのだろう 。
答は直ぐに出た 。
人間は2度の死があるからだ 。
肉体的な死と 、 周囲からの忘却による死 。
でも仮に周りが私の事を忘れ去っても 、 ‘ 自分自身 ‘ と云う人物が忘れなければ死ねないのではないか 。
ならば 、私が私自身の全てを忘れなければ 貴方の元へは逝けないのだと 、
そう己を戒めた 。
あれ程までに拒んだ白で 、空白で 、 ‘ 加賀美隼人 ‘ と云う物語を無かった事にした 。
白の痛みを白で上書きした 。
だから 、だろう 。
あんなに大切だった筈なのに 、
あんなに焦がれた筈なのに 、
あぁ 、私はもう 、
『 貴方 』が誰だったかすら思い出せないのだ 。
彼から紡がれた『 永遠 』と云う言葉と 、 其れに付随する質問に少し戸惑ってしまう 。
そういえば 、永遠が何かなんて 、 碌に考えた事なかったな 。
…… かなり難しいんじゃないか? 、此の質問 。
まだの不破湊の言語を解読する方が簡単なまである 。
此の人 、白々しい演技は飛び抜けて上手いな 。 主演男優賞の代わりに蹴りを入れてやりたいくらいだ 。
まず土下座に連れる・連れないと云う概念が あるのか教えてくれ 、葛葉さん
切り替えのスピ − ド イかれてるな此の人 。
…… まぁでも此の人の魅力は其処にあるのかなぁ 、 と如何でも良い様な事を考えて 、ほんの少し和む 。
余計な事を考えてしまう 、私の悪い癖 。
多分 考えがまとまらないのは此の所為でもある 。
如何にも「何でェ?」と言いたげな顔である 。 いや 、こっちが「何でェ?」なんですけども 。
「 全く … 」と 、彼は悪態を吐きながら月を仰ぐ 。
遠い故郷に想いを馳せるかぐや姫の様な 、 想い人との泡の様な運命に焦がれる人魚姫の様な 、
酷く儚く 、其れで居て恍惚とした横顔が其処には在った 。
びゅうっと海風に攫われる髪は 何処までも白く 、透き通っていて 。
月光は彼の真紅の瞳に吸い込まれ 、 生命を宿された様に爛々と煌めいている 。
そんな馬鹿げた噺を心から思う程に 、 彼の姿は永遠の美と生命を称えた妖の長 其の物であった 。
………… まぁ 、姿だけを見ればの話なんですけども 。
そう言って彼が私に肩をぽんっと叩く 。
………… おかしいな 、友好的な仕草の筈なのに 「 勿論わかってるよな? 」と云う有無を言わさぬ 圧を感じるんだが 。
文字通り圧で死んじゃいますよ 、私 。
何故だろう 、全く嬉しくないな此の正解 。
まぁでも … 彼と話すのは嫌いでは無いし 、 寧ろ滅多に無い機会だから嬉しいのは嬉しい 。
ただタイミングと会話の内容が問題なんですよ 、葛葉さん 。
『 永遠の意味 』 、ちゃんと答えてくださいね 。
海の音 、 貝殻が擦れる音 、 彼と私が呼吸する音 、
そして彼の赫く染まった羽が風を切る音が 、
果てのない彼方に響いて空気と共鳴する 。
「「 良い夜を 」」
今でも 、後悔して居る 。
如何して 、あの時の私は彼に尋ねなかったのかと 。
彼が 、彼こそが 、
誰よりも永遠を生き 、 誰よりも永遠を知る者であったのに 。
あぁ 、あの時あの場で 、
‘ 貴方 ‘ にとっての永遠の意味は何かって 、
その一言でも言えていたならば 、
こんなにも別れを恨まずに済んだのに 。