紅

すちの体の中には、少しだけ俺の血が混じっている。

これでよかったんだ

すちもわかってくれた

許してくれた

すちだけが唯一の理解者なんだ

すちしかいないんだ

少し前、すちのスマホを壊してしまった

通知が多かったのと、すちが他と繋がるのが嫌だったから。

それでも笑って許してくれた

暇ちゃんさえいればいいよって

すちは、家族や友達、様々な人と縁を切った

俺のために

Q,今幸せ？

精神科に入院し始めた頃から、幻聴として取り扱ってきたこの声

はっきりとは聞こえないけど、よく質問を投げかけてくる

それに俺はいつも正直に答えている

俺は俺の普通をすちに説いた。

すちは頭が良いから、わかってくれた

俺にとっての普通が、すちにとっての普通になった

これで良いんだ

これで

外はまだ冷えていた

すちは昔から寒がりだったから、ずっと俺にくっついている

本当は不安に押しつぶされそうなんだ

いつか嫌われたら怖い？

違う…1番怖いのは…すちが死んだ時

俺はついに独りになる

すちが死んだら、すちは今までの俺のこと許してくれないよね

来世でだってずっと一緒にいたい

来世では兄弟とか…どっちかが女になって結婚とかしちゃったり…？

言わなくてもわかるよね。すちは、独りでも強いから

自分がどうしたら良いかなんて、わかってるに決まってる…

学校でも上手くやってたもんね

だから

そっか。

それが「すち」の普通だったな…

昔はこんなんじゃなかった

独りでも強かった

だからすちが寂しいなんて言っている姿は見たことなかった

俺がこうしたんだ…

でもそうだよね

寂しいよね

分かってくれたの？

もう独りじゃない？