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主
主
主
主
主
主
主
???
雨乃恋雨
つい言ってしまった
恐らくこの建物、構造を見るに喫茶店のようだがそこのオーナーなのだろう
それがわかっていてもなおこう口走ったのには訳がある
あまりにも不可解だからだ
突如現れた理由も、どこか妖艶な口調も、なにもかも
萬屋満箏
雨乃恋雨
どこか古風さを感じさせる佇まいに、言葉が詰まる
萬屋満箏
されるがままについて行く
簾を潜るとそこは畳が敷き詰められた部屋だった
あるのは座布団とちゃぶ台、壁に掛け軸がかかっているだけだった
掛け軸の文字はよく読めないが、どことなく歴史と風情を感じさせるものだった
萬屋満箏
少し驚いたが、渡された見開きの注文一覧表を見て、当たり前かと安堵する
と同時に、自分がまだ一言も話していないことに気づく
何となく無愛想で嫌な感じがして、口を開こうとするが、何を話せば良いのやら
雨乃恋雨
やっとの思いで声を絞り出した時には、もう彼はいなかった
雨乃恋雨
注文を決めようと一覧表に手を伸ばそうとした時、ふと大変な恐怖が自分を襲った
そもそもここはどこなんだ?と。
オーナーから説明されたのは「萬治屋」の3文字のみ
いつもの帰り道にこんな店はあったか?
答えはNo
では自分が道を間違えてしまったのか?ここはどこなんだ?
焦ってスマホを取り出す
が、マップはいつもと同じ帰り道に針を指していた
スマホをみて、これを使ってこの店について調べればいいと気づく
しかし、どんなに調べても検索結果はでてこない
キーボードをタップする音だけが、虚しく室内に響く
自分の心臓の音の大きさに自分で驚きながら、震える手でマップのアプリをタッチする
マップの針の周りをいくら探しても、そこには空地しか無かった
行き詰まった
最近出来ただけで、何にも反映されていないだけだ、そう自分に言い聞かせる
大丈夫だ、大丈夫だ、と
恐怖で居た堪れなくなっていた時、自分の心を呼んだかのように、簾が捲られた
萬屋満箏
雨乃恋雨
萬屋満箏
微笑をたたえた彼の顔を見ると、不思議と不安が消えていくような気がした
ふと掛け軸を見ると、字が変わっていた
雨乃恋雨
雨乃恋雨
萬屋満箏
なんとも無愛想だ、といつもなら思っていただろうに
何故か今はそんな気持ちがしない
饅頭を手に取り、宇治抹茶を飲む
心のなかの靄が晴れていくような、心にこびりついた汚れがあり落ちていくような
今まで経験したことの無い清々しい感覚に酔いしれる
靄が晴れた視界で、注文一覧に目を落とす
そして驚く
注文一覧の値段が書かれる部分には、全て零円と書いてあったのだ
店として不可解な構造に驚歎を隠せないでいると、また信じられないことに気が付いた
配られた一覧表には、すべての商品が「雨乃恋雨様への~」という形で書かれていた
それはまるで自分が入店するのを待っていたかのようだった
しかし、何故か当たり前に受け入れている自分がいる
自分を俯瞰で見た時にその歪な構造に気付く
だが、心は波ひとつなく穏やかであった
ふと、何も頼まないまま居座り続けるのは失礼だろうと、なにか頼もうとしてまた一覧表を見る
そこにある、「店長のお任せ」というメニュー名に目を惹かれ、なんとなく注文してみることに
どうせタダだからいいのだ
雨乃恋雨
今の時代、そこそこ広い店内で、簾で遮られた部屋があってなお呼び鈴のような機会が無いのは、和風を再現するためなのだろうか
萬屋満箏
雨乃恋雨
萬屋満箏
萬屋満箏
雨乃恋雨
主
主
主
主
主
主