僕の取り柄

設定は特に無し.

主に 黄桃 他メンもでてくるよん

10月の終わり. ドームツアーのラストを終えた 僕の所属するグループは

アルバム制作に大忙しだった.

僕は作詞作曲を担当していて今回の アルバムに入る楽曲も 数多く担当することになった.

相方のりいぬが作詞してくれたものに 曲を付けていく工程が終わり

時計に目を向けると午前の3時半.

特に食欲もなく 作業の続きをしようと エナドリを片手に机へ向かう.

次の曲は作詞作曲 どちらとも僕担当でコンセプトも 自由指定だから中々迷う...

感動系でもいいし

盛り上がる系でも良さそう

いつもなら30分程度で 曲調やサビが浮かんでくるのに 今日は調子が悪いのか2時間経っても

何も浮かばなかった.

そう愛犬のみるくんに語りかけて 寝る準備をする為作業部屋を後にした.

ため息が響くお風呂場.

明日の会議は何時か 確認するためにLINEを開く.

午前10時 オフィス集合.

歯磨きを終え ベッドの中に入る

作業が捗らなかったことが 突っかかって全然寝れない..

そう自分に言い聞かせながら 目を瞑った.

目が覚めると まだ外は真っ暗で

時間を確認しようと スマホの電源をつけると

あれから2時間も経ってないことが わかった.

最近はリハーサルやテレビの収録 アルバムのレコーディングなどで大忙し

あまり寝れてはいなかった.

スマホで検索したところ 目を瞑り安静にしてた方がいいらしく

仕方なくスマホの電源を切り 再び目を瞑った.

アラームが鳴り響く寝室.

あぁ、結局寝れなかった.

色んなことを考えてしまって 気づいたら朝になっていたのだ.

準備しなくちゃって思っても 体が重くて上手く起きれない.

まるで頭から爪の先まで重りを 付けられたかのようだった.

なにもやる気がでない.

やるべきことは分かるのに 体と心が追いついてないんだ.

自然と溢れてくる涙.

どうすることも出来ず 時を過ぎるのを待つ.

数十分後.

起き上がれる程に回復した時には 確実に遅刻する時間になっていた.

曲の締切が近いのにもかかわらず 作業が出来なかった気持ち と 遅刻してしまうショックで 頭がぐちゃぐちゃに.

体は軽くなったはずなのに 気持ちは重くなる一方で

とにかく急いで集合場所へ 行こうと支度を始めた.

都会の交差点を通行人の人達と ぶつかりながら猛ダッシュで渡る.

彼らから連絡が来てるとも知らずに.

※桃目線__ .

今日はこれからの作戦会議.

だがメンバーのるぅとが 連絡がつかなくて

会議を始められない状況だ

何本か電話を入れ 先に会議を始めようとした時.

ｶﾞﾁｬ

勢いよく開けられたドアの方へ 目を向ければ

走ってきたのか息が荒く 足ももたつかないるぅとが立っていた.

あわあわしながら るぅとに声をかけるころんと莉犬

それもそのはず

るぅとの顔は疲れきってて 目の下にはクマまで出来ている.

でも寝てないとしたら 今回は何故遅刻したんだ?

るぅとは基本約束を破らない 時間通りいかないと怒るタイプだ.

大丈夫な訳無い

ただいまは無理に聞くのも あまり良くない気がする.

赤と青が不満そうに返事をして これからの会議を始めた.

※るぅと目線.

みるくんにごはんをあげてから パソコンの前にすわる.

どうしてもアイデアが浮かばない.

その感覚に見覚えがあり 一瞬にして全身の血の気が引いた.

2年前.

オリジナル曲を頼まれて 作曲をしていた時に

僕は曲が作れなくなった時期があった.

その時もCD関連で追い込まれて その焦りからきたものだった.

小さい時に友達に利用されてた でも僕はそれでも良かった.

良いように使われて居ても傍に 居てくれるのであれば友達でしょ..?

そんなこと思っていたら 突然 もうお前に用は無い と 僕は友達に捨てられたんだ.

だからきっと仲間もスタッフさんも 僕が音楽を作れなかったら 捨てるかもしれない.

結局その後 メンバーに家に入られて なんとかまた曲を作れるようになるまで 助けてもらった.

過去のことを思い出し 余計に頭はパニックになった.

そんな恐怖が頭を支配して 僕は自我を失いかけてた.

一人なんの感情も表に出さず 腕に赤い線を付けていく.

痛さなんて感じなくて 僕のこの気持ちをどうにか消したかった.

そんなことを呟いては涙を流す. その繰り返し.

泣き疲れては寝るの繰り返しだった.

もう全てがどうでもよくて なにもやる気がでない.

ｶﾞﾁｬ

玄関が開いた音がして

このまま殺してくれと願いながら 僕はまた瞼を閉じた.

※桃目線.

会議の日からるぅとが 連絡を返さなくなった.

アルバムの締め切りが過ぎ スタッフさん達からも 連絡がきていた為

俺はるぅとの家に合鍵を使って 乗り込んだら

家は異様に綺麗でるぅとの姿が 見当たらなかった.

寝室のドアを開け部屋を見渡すと 血が染み付いた布団とカッターの芯 そして倒れ込むるぅとがいた.

最初は驚きが隠せず るぅとを追い詰める言い方をしてしまったなと自分に反省しながら

わんわん泣くるぅとを 抱きしめて優しく声を掛け続けた.

恐怖からなのか 上手く言葉を発せれなくなっていて 上手く理解できない.

正直何を捨てるなと言っているのか わからない.

今の彼にはきっと必要なものなんだろう.

俯きながら首を横に振る.

泣きながら俺に理由を話してくれる君.

取り柄が無くなったら捨てられると思い込んでパニックになったこと.

迷惑かけたくなかったこと.

まだ言葉はぎごちないけど るぅとなりにゆっくり教えてくれた.

この後傷の手当をされて 2人仲良くお寿司を食べたそうです

end.