こいつが居たら皆、不幸になる。皆幸せになる為に。 私が犠牲にならなければ行けない。
父
がちゃ
パタンッ
紗良
父
殺る、絶対に。確実に取り逃さないように。
こいつを生かしたらだめだ。
包丁をぎゅううっと握り締めた。 包丁が逃げる事の無いように、
カチッ、......カチッと時計の秒針だけが、 規則正しく浮かんでは消える。
勢いよく包丁の先を父へ向ける。 私の心臓が耳のそばにあるのかと疑うほど バクンバクンと言っていた。 そのバクバクが収まる事は無かった
今だ、今だ、今しか無いっ!殺れッ!殺れ!動け!!
紗良
父
生きている可能性を少しでも低くする為に、 何回も何回も何回も刺し続けた。
父
父
父は私の事を睨みつけた。 誰が殺したのか確認する為。 もし自分が生きていたら仕返しをする為。 その為に私を睨みつけたのだろう。
父は雄叫びを上げて死んだ。
スカッとした。もう二度と この憎らしい顔を見る事が無いのかと。 正直とても嬉しかった。家族を守れたと言う安心。
死んだ、?
私が本当に殺したのか、....
急に体の力が抜けて血だらけになった床に座り込む。
紗良
これで皆幸せになる。
き"ぃ、...
扉を大きく開く音。息を吸う音。足音。人の気配。
美希
美希
紗良
美希
美希に怒られる気がした。それを弁明する為に必死だった。
紗良
ごめんね。ごめんね?
自然と熱い涙が次々と止まることなく、零れ落ちた。
紗良
あんたを守りたかったのっ
美希
紗良
血だらけになった私の手を見ながら確認するように言った。
美希
紗良
美希
そっか、..ありがとう。
父
父
父の怒鳴り声に母はビクッと体が反応した。
母は小さく頷いて、謝る。そして 皿の向きを何mmか動かす。
母
小さい事ですぐ怒鳴る。そんな父に飽き飽きしていた。 めんどくさい。それくらい許せと、毎回思う。
父
俺の前で生きてられるよな
母
父
自分が居ないと家が崩壊するとでも思っているのだろう。
そうして父は携帯を触り出す。
ニチャアと笑う父が気味悪くてしょうがない。
父の携帯を覗き込むと「美穂」と 登録された人とやり取りをしていた。
父
くるっと父が振り返る
父
紗良
知らないふりをしてやり過ごした。
泣きそうな、助けを呼ぶような声で言う。
美希
紗良
ぶんっぶんっと首を振り手を引いた。
そして小声で私に囁いた。
美希
紗良
私たちはこんなめちゃくちゃな環境で 育ったのかと思うと誇らしく思う。
美希
美希
みんなで、死のう?
紗良