雛田
好きです!
甲斐
えっ?
雛田
好きなんです!
誰もいない、静かな教室で、2人きり、女の子の声が響き渡る
お互いに目を見ることも出来ず
甲斐
それって
雛田
本が好きなんです!
甲斐
えっ?えっ…?
高校2年の夏
少年は告白された
少女に
本が好きと
愛はいつでも突然に!? 〜目を見てなんて出来ません!〜
雛田
甲斐くん、おはようございます!
甲斐
おはよう、雛田さん
甲斐
そういえば、本読み終わったよ
雛田
そうなんですか!
雛田
どうでしたか?
甲斐
俺には難しかったけど、とても面白かったよ
あの告白以来、少女は少年に本を貸している
甲斐
だから続き、また貸してね
雛田
はい!
少女は鞄から本を取り出す
雛田
次は3巻ですね!
甲斐
そうだね、ありがとう!
数ヶ月後の2年生の冬
甲斐
あっ!雛田さん
甲斐
読み終わったよ5巻
甲斐
早くなったでしょ!
雛田
とても、早くなったね!
雛田
今回はどうだった?
甲斐
主人公はなんであんなにも鈍感なのかな?
甲斐
見ててモヤモヤするよ
雛田
はぁ、そうだね…
雛田
本当に鈍感だと思うよ…
甲斐
だよね…ってあれ?
甲斐
どうかした?体調でも悪いの?
雛田
ううん、大丈夫
雛田
夜更かししたから、ちょっとね
甲斐
そうなんだ、あまり夜更かしはダメだよ
雛田
そうだね
雛田
気をつけるよ
高校生3年の春
甲斐
7巻読み終わったよー
甲斐
8巻貸してー
雛田
ペースがはやいよ、受験勉強してるの?
甲斐
して…ないかなぁ
雛田
えー、それじゃあ貸せないよー
甲斐
わかった!
甲斐
勉強もするから、貸して!
雛田
しかたないなぁ、とりあえず貸すけど
雛田
次のテスト点数低かったら、貸さないからね
甲斐
オッケー!ありがとう!雛田さん
雛田
今回の感想は?って
雛田
その感じだと今回も聞かなくていいや
雛田
まとまって聞くことにする
甲斐
まとまってかぁ、わかったー
高校3年の秋
甲斐
雛田さん、受験おわった?
雛田
終わったよ!
雛田
早めに終わってよかったよ
甲斐
おめでとう!
雛田
そういう、甲斐くんも
雛田
もう終わったでしょ?
甲斐
終わったよー
甲斐
早めに終わらせたくてね!
雛田
一緒だね
甲斐
というわけで
甲斐
10巻貸してー
雛田
はい、どうぞ
甲斐
そうそう
雛田
?
甲斐
すぐ読み終わるから、3日後の放課後に 11巻貸して!
雛田
良いけど、そんなに早く読まなくても
甲斐
それじゃあ、ダメなんだよ
雛田
そうなの?
甲斐
うん、だからお願い!
雛田
はーい、わかりました
甲斐家
甲斐
ふぅ
甲斐
今回も良い話だったなぁ
甲斐
確か次の巻が最新刊だよなぁ
甲斐
受験も終わったし
甲斐
やっとここまで来たよ
とっても長かった あれから1年かぁ…
3日後、放課後
雛田
ほんとに読み終わったの?
甲斐
もっちろん!はい、返すね
雛田
うん、じゃあ 11巻ね
雛田
ところでなんで放課後なの?
甲斐
いい加減に
甲斐
感想を言いたいなぁって
雛田
そういうことね
雛田
でもなぁ、 11巻読んでからでも
甲斐
だーめ
雛田
どうしても?
甲斐
どうしても!
雛田
しょうがないなぁ
30分くらい2人は語り合った
あの日みたいな静かな教室で
甲斐
いやぁ、楽しかったぁ
雛田
すごいみてるね!
甲斐
でしょ!
甲斐
あっ!
雛田
?
甲斐
ごめん!返した巻にしおり挟んだままだ!
雛田
しおり?
少女は鞄から本を取り出し 中をパラパラと開いた
ぽろっと、1枚の紙が落ちた
雛田
しおりってこれ?
雛田
ただの紙じゃん!
落ちた紙を拾う
紙は折り畳まれていた
少女はその紙を無意識に開いた
雛田
これ…
雛田
どういうこと?
甲斐
気づいていたよ
甲斐
2巻からだけど
甲斐
毎回最後に
甲斐
好きです!付き合って下さい!
甲斐
って書かれていたこと
雛田
そう、なの?
甲斐
うん、でも
甲斐
受験とかあるから
甲斐
迷惑になるかなぁって
甲斐
俺、馬鹿だから
甲斐
合格貰えなかったら、不安にさせてしまうから
甲斐
でも、貰えたから
甲斐
だから
あの時とほぼ同じ
ただ、今回は
響く声が違った お互いに相手の目を見ていた
甲斐
好きです!
雛田
はい!
甲斐
好きなんです!
雛田
はい…っ!
甲斐
俺はキミが好きなんです!
雛田
はい!!