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夢を見ていた。遠い記憶の夢を。
最後に母を見た記憶。
母に捨てられた記憶。
その記憶は私が まだ5歳の頃の記憶だった───。
母親
水澄咲幸(5歳)
誰よりも優しくて、大好きな母。
生まれた時から父親の存在を 知らない私にとって、 母は唯一の家族で大事な人だった。
だからあの時の私は返事とは反対に心の中では不安でたまらなかった。
水澄咲幸(5歳)
けれどここで我儘を言ってしまったら、母は困ってしまう。
これ以上、母が困らせないように 私は我慢をした。
水澄咲幸(5歳)
母の方を見た時は、既に街灯がある暗い道に走って行ってしまった。
母親
水澄咲幸(5歳)
水澄咲幸(5歳)
母の後ろ姿を見てもなんとか泣くのを 我慢して、母が戻ってくるのを ずっと待っていた。
何分経っても、何時間たっても······。
けれど、母が 戻ってくる事はなかった······───。
───そこで夢は途切れた。
咲幸の部屋
水澄咲幸
目が覚めた時に視界に映っていたのはオレンジ色の天井だった。
水澄咲幸
水澄咲幸
溜息をつきながら時計を見ると、 短い針は2時に指していた。 寝てから4時間は経っていた。
水澄咲幸
早く起きて、みんなの 朝ご飯とお弁当を作らないと······。
咲幸はそう思いながら もう一度目を閉じ、眠りについた。