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だいふく
暗い部屋
鉄格子つきの窓からは月明かりすらほとんど差し込まない
壁には何もなく、ドアには内側から鍵もない
タンスには服が一着だけ、何もかもが“最低限”
ここにずっと、閉じ込められるのか……
ぼんやりとした天井を見つめながら、麗央は小さく唇を噛んだ
胸の奥で、何かがカタカタと音を立てて壊れていく
……逃げなきゃ
思った瞬間、全身がびくっと動いた
まだ腰に痛みは残っている。歩くのすらままならない
でも、試さなきゃいけなかった
動かなきゃ、自分が“モノ”になる気がした
ゆっくりとベッドから降り、ふらつきながら壁伝いに歩く
ドア。ノブを回す。やはり開かない
知ってた……けど
悔しさで喉の奥が熱くなる
鍵穴にヘアピンでも差し込めば――
いや、何もない。道具はない
次に向かったのは、窓
鉄格子。外は闇。地上か、二階かもわからない
だが、隙間はある
細い身体なら、もしかしたら……そう思った
手すりに掴まり、ぐっと身体を持ち上げる
麗央
太腿が軋む。腕に力が入らない。それでも、必死に格子を揺らす
……ガシャンッ
小さく音が鳴った瞬間、背後で「カチャ」とドアの音がした
零斗
零斗の低い声が、冷たい空気の中に響いた
背筋が凍る。振り返らずとも、それが誰の声か、すぐに分かった
零斗
もう一歩、零斗が足を踏み入れる
感情の読めない声が、むしろ不気味だった
ドアの向こうから、別の足音が近づいてくる
龍牙
龍牙だった。タバコの匂いとともに、無表情な目がこちらを射抜く
朔矢
朔矢が楽しそうな口調で言う
けれど目だけは、ぞっとするほど冷えていた
最後に、蓮がゆっくりと姿を現す
言葉はない。ただそのまなざしが、すべてを語っていた
麗央は、何も言えなかった
ただ、立ち尽くし、泣きそうな顔をかろうじてこらえていた
零斗が、ゆっくりと近づいてくる
零斗
吐き捨てるように言いながら、彼は窓の格子を軽く叩いた
朔矢
朔矢がにやりと笑う。その笑顔の裏には、明らかに“楽しむつもり”が滲んでいた
そのとき、蓮が静かに口を開いた
蓮
一歩、前に出てくる。影が麗央を飲み込むようだった
麗央
麗央
やっと絞り出した声は、涙に濡れて震えていた
その懇願に対し、蓮が冷たく言い放つ
蓮
扉は閉まった
鍵の音が、静かに、しかし決定的に鳴り響いた
だいふく
だいふく
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