主
主
主
主
主
主
主
いふside
いふ
会社を定時に退社し、一度家に帰って着替えてから 待ち合わせ場所にやって来た俺
大した用でなければスーツのままで向かってしまうが、 今回は大切な用事や
その用事というのが、俺の誕生日を祝うためのデートや
ほとけが誘ってくれたんや
彼氏に誕生日の夜を一緒に過ごしたいと言われれば、断るわけがないやろう
いふ
ひとまず目的地には着いた
俺らが待ち合わせしたんは、駅前
今の時期はイルミネーションが始まったこともあり、賑わっとる
この中からほとけを見つけ出すんはかなり大変そうや
先に着いとるかは分からんけど、とりあえず探してみることにする
いふ
辺りを見回し、水色の彼の姿を探す
特徴的な髪色といっても、こんなに大勢の中では意味をなさへん
しかし、背丈の分多少は探しやすい
平均より高い身長をありがたく思う
ほとけ
いふ
いふ
少し遠くにほとけの姿を見つけ、駆け出した
走ったことにより、顔に風が吹きつけて来て寒さを感じるが、 そんなことは気にならへん程やった
それほどまでに早くほとけの元に向かいたいんかと思うと、 単純やなー、なんて思う
いふ
ほとけ
ほとけ
髪を揺らしながら勢いよく振り返ったほとけ
その姿は、いつもとは違う大人っぽい服装やった
落ち着いた色味のニットに黒いズボン
そこにペールブルーのチェスターコートを羽織っとる
顔もイケメンなだけあって、その姿はモデルと言われても驚かないほどや
いふ
ほとけ
いふ
俺のために気合いを入れてくれたことに嬉しく思う
と、同時に自分を大切に想ってくれとることが伝わってきて、 恥ずかしくなってしまった
さっきまで寒いと思っとたのに、今は体温が上昇して暑いぐらいや
いふ
照れ隠しに話題を変える
実際、これは気になっとったことや
いつもは俺が先に待ち合わせ場所に着いとることがほとんどや
ほとけが先に居ることがあっても、ほぼ同時とかや
やからかなり珍しいことなんや
ほとけ
いふ
いつになく真剣な顔で言うもんやから、思わず黙り込んでしまった
しかし、この沈黙も嫌ではなかった
普通なら気まずくなってしまうが、ほとけとやと全く感じへん
愛故にやろうか
二人で過ごすすべての時間が愛おしい
何もしていなくて、一緒に過ごせるだけで幸せなんや
人生の中でそれほどまでに好きになった相手はほとけ以外おらん
昔は、そんな相手ができるなんて思いもしんかった
なんなら、知り合ってすぐの頃は俺らが恋人同士になることなんて 考えたこともなかった
そう思うと考え深いな
ほとけ
いふ
ほとけの見た目の割に男らしい手に自分の手を重ねる
いつになっても慣れないこの行為
きっと何年経っても慣れることは無さそうや
つい、緊張して辿々しくなってしまうんや
ほとけはそんな俺を何も言わずに受け止めてくれる
申し訳なさと、少しの嬉しさを感じる
青組
二人で寒空の下を歩いていく
昼間は肌寒いぐらいやが、夜はかなり冷える
身震いするほどの寒さやったが、心は暖かかった
イルミネーションを見ながら歩いていく
キラキラと輝く電飾は満点の星空のようや
星の見えない都会の喧騒を色とりどりの光が浄化してくれとるように思う
と、同時に俺たちと同じようにデートしとるであろうカップル達が大勢おる
あっちこっちにハートマークが飛び交っとるように見える
もし俺が一人でここを通るとしたら、気まずくて早足で家路に着くやろう
しかし、今は俺もその集団の一員
男同士でここに来とる人はほぼおらんが、 お互いのことしか見てなさそうやから問題ないやろう
こういうデートスポットは逆に変に思われることも無さそうでありがたい
ほとけ
いふ
そんな風なことを考えとったら、いきなりほとけが足を止めた
どうしていきなり止まったのか分からず、戸惑う
ほとけ
いふ
改まって俺の名を呼ばれて、内心ドキリとした
真剣な眼差しと、緊張した面持ちで俺を真っ直ぐと見つめながら 言葉を紡ぐほとけ
その顔にすらかっこいいと感じる俺は末期なんやろうか(苦笑)
ほとけ
ほとけ
いふ
優しく微笑みながら誕生日を祝う言葉を伝えてくれるほとけ
と、同時に小さな袋を渡される
手渡されたんは青い袋に水色のリボンがついたプレゼント
どんなものをくれたんかが気になってウズウズする
いふ
いふ
ほとけ
いふ
リボンを丁寧に解いて、中身を取り出す
いふ
中に入っていたのは落ち着いた青色のキーケース
深い海なような色で綺麗や
デザインもシンプルで、使いやすくてちょうど良さそうや
ほとけ
いふ
戸惑いながらも、キーケースのボタンをはずす
中身を見ると、もう既に鍵が一つ付いていた
ほとけ
ほとけ
満面の笑みを浮かべて言われる
まさかキーケースにほとけの家の鍵がついているなんて思わんくて、 かなりびっくりした
やけど、恋人同士で合鍵を交換するんに憧れとったからめちゃくちゃ嬉しい
ほとけはロマンチストなところがあるから、 記念日とかはサプライズをしてくれるんや
俺もサプライズをするんもされるんも好きやから、 お互いにサプライズしあったりしとるんや
いつまでもそういう関係で居れたらええな、と思う
ほとけ
いふ
不意打ちの言葉に体温が上昇する感覚がする
きっと俺の顔は、林檎のように真っ赤やと思う
誰に何を言われても滅多に照れへん俺やけど、 ほとけにだけは敵わへん
彼の言動一つ一つに影響されとる気がする
でも、ほとけもそうやと思う
お互いがお互いのことを大切に思っとるからこそ、 関係が続いていくんや
どちらかだけが思っとるだけや意味ない
愛の一方通行やなくて、お互いに愛し合うことが重要なんや
一緒に暮らすんは俺もいつかできたらいいな、と思っとることや
やけど、今はまだ一緒に暮らすことは難しいと思う
活動もあるし、仕事もある
正直、現実的とは言えへんやろう
何年かかったしても、二人で暮らせる日が来ることを待ち続けるつもりや
きっとこれはほとけも同じ想いやと思う
ほとけ
いふ
ほとけに腕を勢いよく引かれ、よろける
ほとけは俺の一歩前を歩いているため、その表情は見えへん
ほとけ
いふ
しかし、後ろから見てもわかるほど耳が真っ赤に染まっとった───────
〜終〜
コメント
6件
うぅぅぅぅぅぅぅぅぅ((?? 尊すぎる………… はあ、ほのぼの…👍️
うぎゃっ 尊… スウー、神ですね。 ほんとに文章力ありまくりで尊敬でし。