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長い夏休みが終わり、二学期が始まって数日が過ぎた。教室内では夏休みを惜しむかのように、キャンプや花火大会、バーベーキュー、海水浴などの話題で持ち切りだった。中にはイメチェンをしたと嬉しそうに話す人もいた。
菜月
ポツリと菜月(なつき)が呟くと、それにつられて美鈴(みすず)が頷く(うなず)く。
美鈴
紗凪
菜月
ため息をついて答える菜月に、「ほんとだよね」と美鈴が首を縦に振る。
美鈴
菜月
美鈴
夏休みにあったダンスの大会を私はこっそりと見に行った。菜月たちには同じ目標を目指し、汗を流しながら練習に励み、同じ時間を共有しているたくさんの仲間がいる。踊り終わった彼女たちの笑顔はとても素敵で、どのチームよりも光り輝いて見えた。
菜月
ひとしきり大会の話をしたあと、菜月が私に尋(たず)ねる。私の夏休みは特別なことは何もなかった。唯一の出来事といえば、お盆に九州にいるおばあちゃん家に親戚で集まったくらいだ。だけど、自分の話題はなるべく持ち出したくはない。
紗凪
と、答えると、二人が、「そっかぁ」と相槌(あいづち)を打った。
美鈴
美鈴が優しい声で褒(ほ)めてくれる。
紗凪
私は自虐的(じぎゃくてき)に笑った。二人のように部活もしていなければ、何かをするわけでもないし、どこかへ遊びに行くわけでもない。ただただ時間持て余していただけだった。
美鈴
美鈴があたりを見回してポツリと呟いた。
菜月
なんて言いながら、菜月は肩につくかつかないかくらいの毛先に触れた。
美鈴
菜月
美鈴
菜月
美鈴
菜月
菜月たちは楽しそうにイメチェンの話に花を咲かせる。きっと、二人はどんな髪型でも似合うだろう。
菜月
紗凪
突然話を振られて、私は戸惑った。
菜月
"メガネ"のワードにドキッとしていると、「あー確かに」と美鈴が言う。
菜月
あまりメガネのことを話題に出してほしくない。だけど、場の雰囲気を壊すわけにはいかない。
紗凪
私は必死に口角を上げて笑ってみせた。すると、二人が、「そっかぁ」と残念がる。
菜月
菜月が顔を引き攣(つ)らせて笑った。その様子を見た美鈴が、菜月の顔を指さして笑い、自然と話は逸(そ)れていく。___入学してまだ間もない頃、私は一人で過ごしていた。休み時間やお昼休みは、極力教室にいないように努力した。一人だと余計に目立ってしまうからだ。過去の出来事を思い出して怖くなった。笑われたくなかった。ある日、いつものように授業が終わり、教科書をしまっていると菜月がやってきた。鞄につけていたキーホルダーを見て菜月が『それ、プータのレアキーホルダーだよね!』と私に声をかけてきたのが始まりだった。たまたま、従姉妹が(いとこ)からもらった気だるげな表情をしている犬のキーホルダーを鞄につけていた。まさかそれで声をかけてもらえるとは思っていなくて驚いたのをよく覚えている。どうやら菜月が好きなキャラクターだったらしく、それから度々(たびたび)声をかけてもらうようになった。あいさつや今日暑いね、など他愛(たあい)のない言葉だったけれど、私にとっては一人じゃないと実感できる瞬間でもあった。そんなことが数日続いて、『一緒に食べない?』とお昼を誘ってもらってから今に至る。いつもキラキラしている 菜月たちは、俗に言う"一軍女子"だ。お喋りがとにかく大好きで、行動を共にするようになってからはいろんな話をした。だけど私は、話題の中心に自分がいると、そわそわして落ち着かなくなるときがある。そういえば、場の雰囲気壊さないようになるべく笑って受け流したりする。
菜月
感慨(かんがい)深そうに菜月がポツリと呟いた。
菜月
と、菜月が考え込み、「......あっ、そうだ」と何かを思い出したように顔を上げる。
菜月
美鈴
ハイテンションだった菜月に美鈴が一撃を入れると、菜月は苦い顔を浮かべる。
菜月
美鈴
菜月たちのやりとりは楽しそうだ。本音で語り合えているのが見て分かる。それがすごく羨(うらや)ましかった。
菜月
私に泣きついてくる菜月。もちろん泣いてなどいないけれど、私はその様子を見て思わず苦笑い。
紗凪
冬といえば、の大一イベント。助け船のようなものが私が口にすると、菜月の顔色がぱあっと輝きだした。
菜月
指を折って数えながら、「いや、でも、練習があるのかな......」と今度は一人上の空で考えだす。すると、それを見た美鈴が今度は苦笑いする。
美鈴
菜月
人の口約束は果たしてどれだけの効果を発揮するのだろうか。四か月も先の未来のことなんて誰にも予想なんてできない。それでも、私はこの場所にすがりたくなる。
紗凪
菜月の口からは出そうになかったので、代わりに私が言う。その瞬間、菜月はハッとして、