ぺいんと
ぺいんと
ベットから体を起こし、ガンガンとバットで殴られる頭を抱える。
その痛みからくるやり場のない苛立ちが、言葉遣いを荒くさせる。
今にも倒れそうになる体を、壁を頼りに無理矢理起こし、リビングに続く寝室のドアを開ける。
リビングのテーブルに置かれた、記憶のない何個もの酒の空き缶が、昨日の自分の愚行を思い知らせる。
ぺいんと
昨日の行動を思い出し、しばらく振り返ってはため息を吐く。
とりあえずこの頭痛を抑えるため、薬でも飲むかと、ドアからキッチンに移動し
コップに水を注いで薬を持ってリビングのソファに座る。
グッと飲み干し、コップをテーブルに置く。
ぺいんと
テーブルの端に伏せられた、俺の愚行の原因でもあるそのスマホが目に入り、またひとつため息を漏らす。
ぺいんと
まさか自分が、会って1年も経っていない相手に恋をしていて
まさかそれが同性である男であり
そして無自覚のままその相手との初めての顔合わせで一線を越えてしまうという…
ぺいんと
だってふわっちだし…(?)
ぺいんと
ふわっちが
俺と同じように性別を気にしないとは限らないし
…………ん?
てか待て
性別云々の前に、そもそも俺のこと好きかなんて決まってなくね!?
ぺいんと
ぺいんと
……いや、
そういうことじゃない…
ぺいんと
だめだ。
情緒おかしくなって考えがまとめられん……
しょうがない…
だってふわっちに俺が「好きじゃないから安心して」などという嘘をついてしまって
まだ1日も経っていないのだから。
ぺいんと
いや、
だめだ
いくら自分で相手の考えを想像しようとしても、本人の口から聞くまではなんの確実性も持たない。
つまりどれだけ頭を巡らせても無意味なのだ。
とりあえず、と思い、スマホに手を伸ばす。
ぺいんと
伏せられていたスマホを手に取り画面をつけようと電源を押すと、画面は付かず、見えるのは赤くなった電池の表示だけ。
ぺいんと
そりゃそうか。とその辺にある充電器を刺して瀕死のスマホを充電する。
昨日送った、おれがご飯に行けそうな日にちが綴られたLINE。
多分確認しただろうな…。
返事が来てたのはわかってるが、おれが冷静に返事を返せるとは思えなかったから、まだどんな返信が来たかなんて確認してない。
それに……
日常組のみんなによくやっちゃうのだが、
おれは酒が入ると、普段絶対言わないような、感謝とか、尊敬とか、好きだとか、ボロボロと口から出してしまうし、LINEにも送ってしまうのだ。(実話)
それを本能のままふわっちにもやりかねないと思い、酒を煽る前に電源を落としていたのだ。
ぺいんと
ぺいんと
ないない。
ぺいんと
ねえ?
覚えてないだけでもしかしたら送っちゃってました。なんて。
ぺいんと
…………
何か盛大にフラグが立ったような気がするが、そんなの気にした方が負けだ。
誰と競ってんだって感じだけども。
不安になるこの問題の答えは見ればわかるよとでもいうように、ちょうどいいタイミングでスマホの画面がつく。
そろりと手に取り、充電の表示を確認する。
ぺいんと
本当にミリだが、このまま充電器をつけていれば問題なく操作出来そうだ。
ぺいんと
意を決して、LINEに指を運ぶ。
……いざ…!!
ぺいんと
おれは自分の目を疑うほどのそのトーク画面を見て、
字列をなぞるごとにフラッシュバックする昨日の記憶が、
おれの息をヒュッと止めた。
ぺいんと
ぺいんと
頭がぼわぼわする……
おれ何してたんだっけ………
あーーーー気持ち悪い……今にも吐きそう……
なんか無性に寂しいし……
……しにがみに連絡してみよう…
ぺいんと
ぺいんと
ぺいんと
なんだこれ
付かない…
あ、そういや電源切ったっけ
なんで切ったんだっけ?
まあいいか
ぺいんと
ぺいんと
ぺいんと
不破湊
不破湊
不破湊
不破湊
??
なんだ??あーーなんかよくわかんない……
とりあえずおっけって打っとこ
ぺいんと
不破湊
不破湊
不破湊
不破湊
不破湊
ぺいんと
ぺいんと
ぺいんと
不破湊
不破湊
ぺいんと
不破湊
ぺいんと
不破湊
ぺいんと
不破湊
不破湊
不破湊
不破湊
ぺいんと
不破湊
不破湊
不破湊
ぺいんと
ぺいんと
不破湊
ぺいんと
不破湊
不破湊
ぺいんと
ぺいんと
ぺいんと
ぺいんと
ぺいんと
不破湊
不破湊
ぺいんと
不破湊
ぺいんと
ぺいんと
不破湊
ぺいんと
不破湊
通話
08:24
ぺいんと
不破湊
不破湊
ぺいんと
ぺいんと
ぺいんと
ぺいんと
不破湊
ぺいんと
ぺいんと
ぺいんと
ぺいんと
ぺいんと
ぺいんと
ぺいんと
ぺいんと
ぺいんと
不破湊
ぺいんと
がちゃ
ぺいんと
ぺいんと
うれしい
うれしい!
会いに来てくれた!!
嬉しさのあまり、ふわっちにハグする。
ぺいんと
ぺいんと
不破湊
不破湊
不破湊
不破湊
ぺいんと
ぺいんと
ふわっちにやんわりとひっぺがされ、
家の中に押し込まれる。
ふわっちはそのまま、
おれと顔を合わせないまま靴を脱いで家に入ろうとしている。
おれは、不安になる
ぺいんと
不破湊
ぺいんと
ぺいんと
不破湊
ぺいんと
ぺいんと
ぺいんと
不破湊
ぺいんと
ぺいんと
ぺいんと
何故か、涙が溢れてくる。
不破湊
ぺいんと
ぺいんと
不破湊
ぺいんと
今度はふわっちが抱き寄せるようにハグをしてくれる。
なんで?嫌だったんじゃないのか?
ぺいんと
不破湊
不破湊
ぺいんと
ぺいんと
不破湊
ふわっちの抱き寄せる力が強くなり、より包まれる感覚に、心地よくなってくる。
ぺいんと
ぺいんと
おれもそのハグに応えるように、ふわっちの背中に自分の腕を回す。
ぺいんと
ふわっちだ
ふわっちがいる
さっきまでの寂しさが嘘のようだ
嗚呼、
好きだなぁ
口に出していいかな
いいよね
なにか忘れてる気がするけど
今伝えたい。
ぺいんと
不破湊
ぺいんと
不破湊
この感情の収めどころがわからず、とりあえず目の前の相手に感情のまま頬を擦る。
ふわっちのふわふわの髪の毛が、顔に当たってくすぐったい。
ふわっちはビクッと体を強張らせた。
ねこみたい。
まだ、伝え足りない。
どんどん
溢れて止まない
ぺいんと
ぺいんと
ぺいんと
ぺいんと
ぺいんと
ぺいんと
ぺいんと
ぺいんと
不破湊
不破湊
不破湊
不破湊
ふわっちはまたおれをひっぺがす。
なんでだよ。嫌じゃないって言ったのに。
おれはムッとなり、俯いているふわっちの顔に手を添えて、無理矢理顔を起こして目を合わせる。
不破湊
ぺいんと
不破湊
ぺいんと
不破湊
ぺいんと
不破湊
ぺいんと
不破湊
ぺいんと
不破湊
声が小さすぎてよく聞こえなかったが、ふわっちの赤くなった顔を見て満足してしまった。
ぺいんと
ぺいんと
おれはふわっちから手を離し、ふわっちを横切ってずんずんとリビングに進む。
ぺいんと
ぺいんと
不破湊
不破湊
ふわっちはきょとんとした後、一度ため息を吐いて、困ったように笑った。
おれは何故か嬉しくなり、気分は絶好調。ニッコニコのるんるんで
ふわっちが玄関の靴を整えてこっちに向き直った時に、
おれはニコニコのまま、立ったまま
その場で吐いた。
口から出た。
ぺいんと
不破湊
ふわっちが、吐いてしまったおれの諸々の後始末をしてくれた。
そして流れるようにお風呂に入れてくれて、パジャマを着せてくれて、今はベットのそばで寝かしつけてくれてる。
なんていいやつなんだ。
こいつは。
いいやつすぎる。
おれ、なんか、
今日のおれ、赤ん坊みたいじゃね??
……あたまいたい………
醒めようとする酔いか何かが、体が、拒否反応を起こしてる気がする。
なんだったっけ……
あたまいたい……
まあ……いいか……
……ところで、
おれが寝ているこの横で、椅子に座り本を読んでいるこの男は、いつまでいるのだろうか。
もしこのまま朝まで一緒にいてくれるなら、
一緒に寝ても問題ないのではないか?
なんか本読んでるの、寂しいし。
ぺいんと
えいや。
不破湊
おれはふわっちの腕を掴んで布団の中に引っ張り込む。
不破湊
不破湊
わたわたしてる。おもしろい
ぺいんと
不破湊
ぺいんと
不破湊
おれはそう言って満足して、
ふわっちの体温があったかくて心地よくて、
ふわっちの腕を握ったまま、
秒で夢の中に堕ちた。
ぺいんと
ぺいんと
おれは昨日の愚行全てを思い出し、冷や汗と自分に対する怒りとやるせなさで泣けてくる。
ぺいんと
ぺいんと
ぺいんと
自分が愚者すぎて、猛反省をする。
ふと、そういえばあの後ふわっちはどうしたのかと疑問に思い、時計を見やる。
今の時刻は13:00。
流石に家には着いてるだろうけど、いつ俺の家出たんだろう…
交通費とかかかったよな……今度何か奢ろう……てか次のご飯一緒に行く時奢らせてもらおう。うん。そうしよう。
そうしないと俺は俺を許せん。
そう悶々と反省をしている時に、ブーッとスマホが鳴った。
ぺいんと
ぺいんと
ぺいんと
そう言い、俺は重い指を動かす。
不破湊
不破湊
不破湊
不破湊
不破湊
不破湊
不破湊
不破湊
不破湊
不破湊
ぺいんと
こいつまじでいいやつすぎるだろ……っ
いいやつすぎて泣けてくる……泣
コンビニ…朝ごはん……って、この袋か。
わー…おにぎりにサンドイッチに……有能すぎる…気遣いの神すぎる……
まじで俺がゴミすぎて胃痛くなってくる……
本当にごめんよふわっち……
俺のうわ言のような告白まがいの言動は聞かなかったことにしてくれますように……。なむなむ。。
とりあえず
ふわっちに謝罪とか諸々送ろう…。
ひと段落ついたところで、虚空を見つめ、馬鹿でかいため息を吐く。
ぺいんと
俺は、
認めないぞ…
認めたくない。
認めるわけにはいかない。
俺の、数々の愚行を。
俺は、認めない…
いや、
認めないではなく、
赦さない。
ぜっったいに。
そのために
酒は…!
しばらくの間!!
禁・止・だ!!!!
俺はそう、心に誓い、
コンビニのおにぎりを貪り、気を紛らわすようにYouTubeを開いた。
コメント
1件