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第1話 - あ

2023年03月23日

#恋愛

結城真矢

ミキ

あんた、アユミくんの何？

マヤ

どなたですか？

ミキ

いいから答えなさい！

マヤ

アユミとは、幼馴染よ。

マヤ

家は隣だし。

ミキ

ほんとにそれだけ？

マヤ

名前も名乗らない人に、どうして責められなきゃならないの？

マヤ

あんた、誰？

ミキ

私はミキよ。

ミキ

あんたのクラスメイトよ。

マヤ

えーと、ミキ？

マヤ

ミキって、誰だっけ？

ミキ

コーラス部のミキって言えば、分かる？

マヤ

あーっ、コーラス部のミキね。

ミキ

本当に分かってるの？

マヤ

ところで、

マヤ

どうして、私の連絡先を知ってるの？

ミキ

あんたと同じ中学出身の子に聞いたのよ。

マヤ

誰よ！勝手に私の連絡先を教えたの！

ミキ

いいじゃない。誰だって・・・

ミキ

それで、あんた、アユミくんの何？

マヤ

だから、幼馴染だって言ってるのに・・・

ミキ

ただの幼馴染というには、ベタベタしすぎじゃない？

マヤ

そんなことないわよ。

マヤ

ずっとお隣さんだし、

マヤ

家族ぐるみの付き合いだから、

マヤ

あなたには、ベタベタした付き合いに見えるのかもね？

ミキ

ただの幼馴染なんだったら、

マヤ

ベタベタするのは止めなさいよ！

マヤ

そんなこと、してないじゃない。

マヤ

それに、なんでそんなこと言われなくちゃいけないの？

ミキ

それは、私がアユミくんと付き合うからよ！

ミキ

ちょっとは、遠慮しなさいよ！

マヤ

そんなの、アユミから聞いたことないけど。

ミキ

これから、そうなるの。

ミキ

私の友達だって、アユミくんとの付き合いには、

ミキ

応援するって言ってるわよ。

ミキ

あんたとアユミくんは似合わないって。

マヤ

どうして、そんなこと言われなきゃいけないの？

マヤ

それに、さっきから、アユミとはただの幼馴染って言ってるじゃない！

ミキ

あんた、随分生意気ね！

ミキ

そんな態度でいいと思ってるの？

ミキ

それに、アユミくんを呼び捨てにしないでよ！

マヤ

もう、何を言っても無駄みたいね。

ミキ

そんな態度とって、どうなるか、

ミキ

覚えておきなさいよ！

～数日後～

ミキ

重要事項があるの。

ミキ

体育の授業でクラスマッチのハンドボールの試合があるんだけど、

ミキ

もちろん、知ってるわよね？

マヤ

詳しくは知らないけど、あることは聞いていたわ。

ミキ

そうだったら、話が早いわ。

ミキ

あなたがピッチャーに決まったの。

マヤ

なんですって！

マヤ

そんなの、いつ決まったの？

ミキ

土曜日の体育の授業の後、

ミキ

誰がどこのポジションになるか、決まったの。

ミキ

結構すんなり決まったわよ。

マヤ

そんな・・・私が休みの時に決まったなんて・・・

マヤ

私はハンドボールなんて、したことがないわ。

マヤ

それなのに、ピッチャーだなんて・・・

ミキ

そんな、ご謙遜。体育委員だから、スポーツは得意でしょ？

ミキ

皆もあんたがハンドポールをやったことがないって、

ミキ

思いもしなかったみたいよ。

ミキ

中学の時の同級生も、あんたが球技が得意だと言ってたの。

ミキ

だから、皆もあんたには期待してるわ。

マヤ

今から誰かに代われないの？クラスマッチは二週間後だったよね？

ミキ

皆に聞いてみれば？

ミキ

でも、一度決まったポジションなのに、変わってくれるかしら？

ミキ

難しんじゃない？

マヤ

あんた、わざと私がいないときに決めたのね？

ミキ

そんなこと、するわけないじゃない？

ミキ

言いがかりだわ。フフフ・・・

マヤ

そんなにアユミのことで腹を立ててるの？

ミキ

それこそ、いいがかりよ。

ミキ

まぁ、頑張って、代わりを見つければ？

～翌日～

マヤ

アユミ、助けてよ！

マヤ

体育の授業のソフトボールのクラスマッチで、

マヤ

私がピッチャーに決まったって聞いたの。

アユミ

あっ、聞いたんだね。僕もポジション決めるときにいたんだけど、

アユミ

ミキさんが体育委員はスポーツ万能だから、マヤが適任だって

アユミ

言い張ってたんだよ。

アユミ

ミキさんコーラス部の部長だから、

アユミ

女子はミキさんの言いなりになっている子も多くてさ。

マヤ

そうなんだ・・・

アユミ

僕はマヤはソフトボール未経験だって、言ったんだけど。

アユミ

多数決で、ピッチャーはマヤに決まったんだ。

マヤ

他の子に代わってくれって頼んでも、

マヤ

自分はピッチャーなんか無理だと言って、

マヤ

皆に断られたの。

アユミ

断られたのか・・・

マヤ

先生に相談しても、チームで話合えと言って、

マヤ

取り合ってくれないの。

マヤ

決まったことは仕方ないし、

マヤ

私、ピッチャーをやるわ！

アユミ

大丈夫？でも、そんな潔いところ、僕は好きだな。

マヤ

ありがとう。

アユミ

でも、どうしてこんなことになったの？

アユミ

ミキさんの恨みでもかったの？

マヤ

一言、アユミのせいとだけ言っておくわ。

アユミ

どうして？理由を教えてよ！

マヤ

内緒！

マヤ

アユミのせいだから、練習に付き合ってよ！

アユミ

もちろん、付き合わせてもらうよ。

～数日後～

ミキ

どう？誰か代わってくれた？

マヤ

残念だけど、誰も代わってくれなかったわ。

ミキ

体育委員に任命されたんだから、スポーツ万能だものね。

マヤ

あんた、そう言って私がピッチャーになるように仕向けたそうね。

ミキ

思い過ごしだわ、そんなこと。フフフ・・・

マヤ

私はクラスマッチでピッチャーをやるわ！

マヤ

あんたが私に嫌がらせしても、私は負けないんだから・・・

ミキ

そういえば、放課後にアユミくんとソフトボールの練習してるんだってね？

ミキ

私は付き合いを改めてくれって、言ったわよね！

ミキ

アユミくんは私と付き合うんだから！

マヤ

アユミはあんたみたいなの、タイプじゃないと思うわ。

ミキ

いつも、腹の立つ女ね！

ミキ

まぁ、ピッチャーを頑張ることね。

ミキ

無様な姿をアユミくんが見たら、

ミキ

あんたのことを、見向きもしないようになるわ。

～数日後～

マヤ

アユミ、３日間クラスマッチの練習に付き合ってくれて、

マヤ

ありがとう。

アユミ

試合までに、なんとか形になってよかったね。

アユミ

最初はヒヤヒヤしたよ。

アユミ

球を投げても、球がホームに届かないし、

アユミ

ストライクが入らないとは、予想できなかったよ。

マヤ

私も自分でもびっくりだったわ！

マヤ

運動は得意だと思ってたけど、ソフトボールは別なのかな？

アユミ

当日は、サクラが助けてくれて、

アユミ

よかったね。

マヤ

そうなの。あの子、私が困ってるって知って、

マヤ

色々アドバイスしてくれたの。

マヤ

当日は練習を見てくれたし、

マヤ

私にはいい友達がいるんだって、改めて思ったわ。

アユミ

サクラさんは運動神経がいいだけじゃなく、面倒見もいいんだね。

マヤ

サクラはクラスのエースだからね。

マヤ

でも、やっぱり当日もストライクがなかなか取れなったね。

アユミ

いいや、いい試合だったよ。

マヤ

押し出しで３０点差のワンサイドゲームになったね。

マヤ

サクラのバスケットがゲームを終えて、

マヤ

ピッチャーを変わってくれて、本当に良かったわ。

マヤ

結局、クラスマッチは惨敗だったけど。

マヤ

私にとっては、いい経験になったわ。

アユミ

それにしても、ミキさんの仕打ちはひどかったな！

アユミ

取り巻きたちが、白状したよ。

アユミ

ミキに言われて、マヤをピッチャーにしたこと。

マヤ

やっぱり、首謀者はミキさんだったのね！

マヤ

私、いいこと思いついたわ。

マヤ

協力してくれない？

アユミ

もちろん！僕はいつでもマヤの味方さ。

～数日後～

マヤ

クラスマッチのピッチャー、あなたに決まったわよ！

ミキ

へっ？

ミキ

なんですって？

ミキ

私、そんなの聞いてないわよ！

ミキ

何かの間違いなんじゃない？

マヤ

間違いなんかじゃないわ。ポジションは昨日急に決まったの。

ミキ

昨日？私がコーラス部の用事があって、

ミキ

体育の授業を休んだ日ね！

ミキ

あんた、わざと私がいないときに決めたわね？

マヤ

ミキが体育を休む日なんて、知らなかったから、

マヤ

ただの偶然よ。

ミキ

本人が休みの日に決めるなんて、卑怯者！

マヤ

それは、あんたが最初に私にしてきた行為じゃない？

マヤ

私、滅多に怒らないけど、怒らせちゃったわね？

マヤ

やられたら、やり返す！覚えておきなさい！

ミキ

何よ！この間、マヤがピッチャーに決まったのも、

ミキ

本人が休みの時に、偶然決まったんじゃない！

ミキ

そんなの濡れ衣よ！

マヤ

あんたの取り巻きが、全部あんたの主導権で決まったって、

マヤ

言ってたわよ。

マヤ

その上で、お詫びに今回はミキがピッチャーになるように、

マヤ

協力してくれたの。

ミキ

みんなが私を裏切って、手のひらを返したってこと？

マヤ

そういうこと。あんたって、人望がないのね。

マヤ

それか、サクラの人望のほうが上だったのかしら。

ミキ

くっ、悔しい！

ミキ

覚えてなさいよ！私だって、素直にそんな決定なんて、

ミキ

認めないんだから！

～数日後～

マヤ

上手くミキをピッチャーに仕立て上げることができたね。

アユミ

本当に良かったよ。

アユミ

ミキも随分慌ててたよね。自分が同じようになるなんて、

アユミ

考えもしなかったんだろうね。

マヤ

見苦しかったよね。潔さがまるでないんだから。

マヤ

体育の先生に、自分はピッチャーは無理だから、

マヤ

誰か他の人に決めてくれって、泣き脅しまでしてたよね。

アユミ

その点、マヤは潔かったよね。

アユミ

ミキの取り巻きも、マヤが真剣に努力している姿を見て、

アユミ

感動してたよ。

アユミ

そのことがあって、ミキをピッチャーにすることを、

アユミ

快く協力してくれたんだよ。

マヤ

それで、今回上手くミキをピッチャーにすることが

マヤ

できたのかー。

アユミ

そうだよ。マヤの努力する姿で、

アユミ

マヤに対する評価がうなぎ上りだったよ。

マヤ

ほんと―、嬉しい！

～数日後～

アユミ

今回のクラスマッチは、泥沼合戦だったよね。

マヤ

そうね。私の時よりひどかったわね。

マヤ

ミキの投げた球は、ホームまで届かないし、

マヤ

ストライクは入らないし。

アユミ

練習しなかったんじゃない？

マヤ

投げても投げても終わらない押し出しに、泣いて詫びてたわね。

アユミ

泣いて詫びったって、マヤを貶めようとした事実は変わらないんだから。

アユミ

マヤは優しいよね。

アユミ

当日、途中からミキとピッチャ―を代わってあげたんだから。

マヤ

リベンジを果たせて、良かったわ！

アユミ

ミキは悔しそうにしてたよ。

アユミ

助けられて、屈辱だって顔してたよ。

アユミ

全く、助けられても、自分が悪いことをしたって、

アユミ

自覚がまったくないんだから。

マヤ

まぁ、私は満足よ。

マヤ

やられたことを、やり返すことができて、スッキリしたわ。

アユミ

マヤのいつまでも引きずることのない、さっぱりしたところがいいね。

マヤ

私が単純だって、言いたいの？

アユミ

そんなことないよ。僕はほめてるんだから。

マヤ

僕はマヤのそういうところが好きなんだよ。

マヤ

ありがとう。ほめてくれるんだったら、もっと言ってくれたら嬉しいわ。

アユミ

ハハハ。ハイハイ。

～後日談～

マヤ

あの、クラスマッチの後、ミキは孤立してしまった。

マヤ

マヤを陥れたことで、人望が失われてしまったからだ。

マヤ

コーラス部の部長をしていたのに、醜い一面を知られることになり、

マヤ

部長を続けられず、部活も辞めてしまった。

マヤ

皆からバッシングを受けて、反省しているという。

マヤ

あれから、アユミに告白するも、アユミが承諾するはずもなく、

マヤ

あっさり振られたらしい。

マヤ

アユミは今回のことで、増々好きになったと私に告白してきた。

マヤ

私はアユミの気持ちに気づかず驚いたが、アユミと付き合うことにした。

マヤ

ソフトボールをしてみて、完全スイッチの入った私は、

マヤ

強豪校として有名な日体大を目指すことにした。

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