正直言うと、最初から分かっていた。
今の僕じゃ敵わない。
ただ、・・・・・・一つ、勝算があるとしたら、清美の能力が有るか無いかだ。
まず、僕の速度で間に合うだろうか?
相手の能力は身体強化、無限に出来ると言っていた。なら、速度を上げるなんて容易い事だろう。
でも、その分身体の負担はあるはずだ。何も負担無く能力を扱えるはずが無い。
どうやって、清美の元へ辿りつのか・・・・・・
???
そりゃーそうなるだろう。
僕は今、男性を無視し、女性達が居る広場へ走っている。
が、僕は・・・・・・その足を止めた。
???
振り向き、広場に背を向けた。
涼風 一樹
そう言うと、男性は嘲笑していた。
???
???
男性は拳を固めると、急激に太くなった。
涼風 一樹
予想外ってのはこの事だ。
???
俺は思いっきり地を蹴った。
誰も反応出来ない様な速度で、奴の懐目掛けて、・・・・・・速度を絶やさず、勢いのまま拳を振るった。
その時、俺は不気味に思った・・・・・・
俺の拳が当たる直前、奴は、ひっそりと笑みを零していた。・・・・・・意味が、分からなかった。
疑問を抱きながら、自分の拳を眺めていた。・・・・・・
篠宮 清美
僕は、広場の壁に直撃していた。
涼風 一樹
これを狙っていた。こうすれば、一瞬にて辿り着けると思った。
・・・・・・血反吐を吐きながら立ち上がる。
休憩してる暇は無い。こうしてる間に、あの男の仲間が取り押さえてくるかもしれない。
だから、他の女性は後にし、清美を抱き抱えた。
篠宮 清美
篠宮 清美
僕の腕の上で暴れるが、数秒もせずに止まった。
涼風 一樹
元々、ボロボロな壁が、思いっきり僕とぶつかったお陰で、更に罅が入っていた。
その壁を壊す勢いで、突進した。
篠宮 清美
案の定、外に出れた訳だが・・・・・・
篠宮 清美
人を抱えてる分、更に早く落ちて行くが、僕は、清美を抱えながら受身を取った。
それから・・・・・・森の方へ全力疾走だ。
・・・・・・月の光が入ってこない程、草や木が生い茂っている。
ホッと一息吐けそうな場所に身を潜めながら、清美を下ろして、縄を解いた。・・・・・・
篠宮 清美
篠宮 清美
勘が鋭くて助かるもんだ。
篠宮 清美
篠宮 清美
かなり負担が掛かるのに、直ぐに解いてしまう清美は、本当に器用なんだろう。
篠宮 清美
涼風 一樹
清美は、僕に触れて能力を発動した。
すると、再び、何かが解けたのを感じた。
・・・・・・私は思う。一樹のそれを解いた時、彼は・・・・・・この世界で一番最強なんじゃないのか。
その逞しい背中。・・・・・・今の彼は、誰よりも人を救えそうな気がした。
涼風 一樹
と、救いに廃墟へ戻るのだった。・・・・・・
僕は今、廃墟に戻っていた。
可哀想だが、少し、清美には手伝ってもらう事にした。
古びた扉を開け、・・・・・・再び、広場へ向かい、着いたが、男性の仲間が増えている気がした。
そこには、勿論、あの男性も居た。
???
また、指をポキポキと鳴らしながら僕の方へ歩み寄ってくる。
???
男性は地を蹴り、僕の懐へと飛来してきた。が、前の僕なら反応出来なかっただろう。けど、・・・・・・男性の攻撃を軽々と躱した。
???
男性は、呆気に取られていた。
当然だ。さっきまでは、避けれずボコボコにやられていた僕が、途端に軽々と避けたのだから。
???
涼風 一樹
???
今度は、さっきよりも速度が増していた。
僕の元へ、飛来してくる男性に、右手を振り翳した。
すると、男性の姿は消えた。・・・・・・
男性の仲間らしき人達は、何が起きたか分かっていない様子だった。
僕は、そんなの構わずに言った。
涼風 一樹
問い掛けに、無言を返された。
戦意喪失している様だ。
女性達は、足だけが縛られていなかった。
僕の元へ誘導して、清美が居るであろう階段に向かわせた。
後は、清美が外へ連れてってくれるだろう。・・・・・・
『もういいよ』
数分経った後、清美からそんな連絡が届いた。
僕は一息吐いて、
涼風 一樹
僕は、壁に触れた瞬間、発動した。その、閉ざされていた力を。・・・・・・
刹那、廃墟全体に、大きく細かい罅が入った。
仲間らしき人達は動揺していた。硬直したかのように、その場にポツンと突っ立っているだけだった。
???
必死に嘆く男に僕は言った。
涼風 一樹
と。・・・・・・
徐々に崩壊して消えていく廃墟に、男性達も死ぬのは時間の問題だと勘付いている様だった。
・・・・・・それから、数分が経ち、廃墟も、男性達も、跡形も無く消えてしまった。
涼風 一樹
と、僕がため息を吐いていると、歳が近そうな女性が話しかけてきた。
???
涼風 一樹
???
???
女性は、腕を組みながら問い掛けてきた。
涼風 一樹
???
なんなんだこの人。
???
少し間が空いて、数秒後、口を開いた。
???
痛い所を衝かれた。
言い訳するか? ・・・・・・これっきり、会うこともないだろうし。
涼風 一樹
???
???
面倒臭い女性だ。
出来るなら、今からでも時を戻して、この女性だけを置いて行きたい。
涼風 一樹
???
女性は、怪訝そうに見てきた。
???
涼風 一樹
???
と、頭を下げた。
何処か、むず痒くなった。・・・・・・
篠宮 清美
清美がそう言いながら、肘で突ついてきた。
涼風 一樹
篠宮 清美
呆れた顔をしてそう言われた。
篠宮 清美
涼風 一樹
出来るなら、僕は使いたくもない。
閉ざされた力が解けたら、大抵負ける事は無い。が、影響を及ぼす程に強い分、バレたくないのだ。確実に、面倒事に巻き込まれるからだ。
何故、厳重に閉ざされたかはあまり覚えていない。曖昧だが、・・・・・・幼少期の頃、何者かに閉ざされたくらいしか覚えていない。
そういや、僕に過去の記憶がない気がする。
多分、何か嫌なことがあったのだろう。と、安直に片付けた。
考えたって仕方がないからだ。
涼風 一樹
篠宮 清美
清美は慌てた様子で止めてくるが、気にせず帰路を辿る事にした。
篠宮 清美
後ろから、そんな声が聞こえてきたが、構わずに進むのだった。・・・・・・
あれから、一日が経過して、いつも通り清美と会っていた。
篠宮 清美
突然、そんな事を言ってきた。
篠宮 清美
涼風 一樹
篠宮 清美
と、一拍置いた後、
篠宮 清美
そうなるとは思っていた。
断るのもなんだなと思った僕は、嫌々ながらも行くことにした。・・・・・・
・・・・・・ペットショップへ。
篠宮 清美
子供みたいにはしゃぐ清美の姿があった。
涼風 一樹
マンチカンやアメリカンショートヘア、ノルウェージフォなんたら・・・・・・僕には覚えれそうにないな。
・・・・・・ペットショップに常連客とかは居るのだろうか? その人なら、数多もの猫の種類を覚えてそうな気がした。偏見に過ぎないが。
もし、僕が猫を飼うなら、ノルウェーなんたらだな。
涼風 一樹
少し夢中になっている自分が居る。
ただ呆然と猫を見ていたら、聞き慣れた声が耳に入った。
篠宮 清美
結構掛かると思っていたが、判断が早くて助かる。
正直、まだ見てても良かった気もした。
涼風 一樹
篠宮 清美
涼風 一樹
そんな事を言うと、何処か驚いてる様に見えた。
篠宮 清美
こいつは馬鹿だ。改めて思う、馬鹿だ。大事な事だから二回言った。
涼風 一樹
篠宮 清美
何なんだこいつ・・・・・・
・・・・・・種類を見に行ったのか、僕の元から離れて行った。
時間が勿体無い気がして、僕も猫を見とこうと思った瞬間、何処かで聞いたことある声が耳に入った。
???
振り向けば、そこに、昨日救った女性が居た。あの、腕を組んでいた面倒臭い女だ。
???
涼風 一樹
???
???
涼風 一樹
思わず困惑する。
二度と会わないと思っていた女性と、こんな所で会うとは、誰もが思わなかっただろう。
???
涼風 一樹
???
何故か、この女性と話すと疲れる。
???
こいつはなんだ? 人の心でも読めるのか?
そんなことを思っていると。
篠宮 清美
清美も、女性の存在に気づいたようだ。
黒川 朱音
なんで僕と清美とでは態度が違うんだ? 虐めの一種か?
黒川 朱音
突然、そんな事を言い出した。
篠宮 清美
黒川 朱音
篠宮 清美
清美は、冷たい視線を僕に飛ばしてきた。
涼風 一樹
涼風 一樹
黒川 朱音
そんな事を言いながら、清美へ視線を向けた。
黒川 朱音
いつも通り腕を組んでいた。
何か、・・・・・・とは言わないが、重いのだろうか・・・・・・重いんだろう。きっと。
篠宮 清美
清美はそう言いながら、指を指した。
それは、僕も見ていたノルなんたらだった。が、
黒川 朱音
突然、そんな事を言い出す朱音。
篠宮 清美
黒川 朱音
涼風 一樹
黒川 朱音
黒川 朱音
涼風 一樹
言い返してやった。
・・・・・・まぁ、多分だが、こいつは嘘を吐いている。そんな気がした。
でも、こんな嘘を吐いてどんなメリットがあるのだろうか。考えても仕方がないか。
内心でそう思っていると、朱音は口を開いた。
黒川 朱音
嘘を吐いているとは思っていたが、こんな直ぐに教えてくれるとは思わなかった。
黒川 朱音
と、真実を教えてくれるのだった。・・・・・・