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3 - ヒースクリフの誕生日/星に願いを

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2025年07月07日

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とある早朝の騒がしいバスの中……。

ダンテ

さぁてと、今日も採光、採光……うわっ、今日狐じゃないか

グレゴール

面倒だったら、スキップすればいいだろ?

ダンテ

うーん、でもモジュールが……

ファウスト

現在、モジュールの貯蓄は、614(狂気変換2回済)個です。過度に消費しても問題ありません

ダンテ

なら、スキップするか……紐も増えるし……

ロージャ

ダンテも強欲になってきたね〜

採光の事や、今日の仕事など……。いつも通りのくだらない雑談が蔓延るバスの中。

しかし、今日は特別な日だと、何人かは認知していた。

ダンテが、PDAをカチカチを鳴らしながら、指を動かしていると……。

ダンテ

……あっ

突拍子もなく、ダンテがチーンと頭を鳴らした。まるで何か思い出したかにように。

ダンテ

今日って“7月7日”なんだね

その“7月7日”という言葉を聞いたバスの中にいる人達が騒ぐのをやめ、こちらを向く。

イシュメール

“7月7日”といえば……

ドンキホーテ

うむ!今日は……

ホンル

あぁ〜。そういえば、今日は……

今日という日が、それぞれの記憶に何かを呼び起こした。そして皆、まるで合図でもあったかのように、同じ言葉を呟く。

ダンテ

うん。今日は……

ヒースクリフの誕生日/七夕の日

ダンテ

だよね

…………

!?!?!?!?!?!?!?

異口同音でヒースクリフの誕生日について呟く……はずだった。

だがその中で、それ以外の事を呟く者がいたのだ!(何なら言わなかった人もいた)

シンクレア

え、えっと……ヒースクリフさんの誕生日ではないんじゃないんですか?

気まずい沈黙が流れる中、口火を切ったのは、ヒースクリフの誕生日だと答えたシンクレアだった。

ウーティス

わざわざ部下の出生日なぞ覚えて祝う必要があると思うのか?

そんな優しい言葉を卑下するかのように、七夕だと答えたウーティスがきつく返した。

ドンキホーテ

酷いでありまする!友の誕生日を祝って、何が悪だと言うのであろう!?

シンクレアと同様の答え持っていたドンキホーテが言い返した。

ウーティス

何を……!

ダンテ

ウーティス。ストップ

ウーティス

はっ!?申し訳ありません……

ウーティスが立ち上がり、また議論がヒートアップする所を見通し、ダンテが命令を下す。

ウーティスは、滅多なことで上官の意に逆らうような人物ではない。案の定、今回も素直に従うことにしたようだ。

そんな黙ったウーティスを見て、ダンテは申し訳なくなったのか、ウーティスに近寄り、助言を与えた。

ダンテ

ウーティス、ここは切羽詰まった戦場ではないから、祝っててもいいんじゃないかな?

ウーティス

……

どうやらまだ、過去に引きずられいているみたいだ。もう少し、言葉を紡ぐ。

ダンテ

バスの中では、気楽にね……?

ウーティス

はい……

どうやらウーティスは理解出来たみたいだ。小さく頷いたのち、再び席に座った。

ホンル

あはは、そういえばヒースクリフさんの誕生日でしたね、すいません

七夕と答えたホンルは、何処か申し訳なさそうな笑顔で謝罪の言葉を言った。

グレゴール

まあそんな気に病む事ないぜ、ホンル

グレゴールがあくびをしながら、ホンルを慰める。

良秀

……ふっ、閏年のい・か・やが何かほざいてるな

イサン

言ふ要やありし?

イサンの言う通り、良秀がグレゴールをバカにするような発言をしてしまった。いつも通りの良秀であった。

グレゴール

……悪かったな、四年に一度の男で

煙を一層濃く蒸した不機嫌なグレゴールが、嫌味のように言い返した。

ヒースクリフ

ふぁ〜

不意に、誰かの情けないあくびがバス内に響いた。

ダンテ

あっ、ヒースクリフ

その正体は、いかにも眠そうな顔をしたヒースクリフだった。

ヒースクリフ

なんだよ、朝っぱらから喚きまくって……

ホンル

ヒースクリフさん。お誕生日おめでとうございます

ヒースクリフ

あっ?誕生日?

タイミングを狙って、ホンルがヒースクリフの誕生日を祝った。だが、当人のヒースクリフは、どこかはっきりを分かっていないようだ。

ロージャ

覚えてないの、ヒース?

ヒースクリフ

……

まだ動きづらい頭を回し、当日について思考する……。のちに、ヒースクリフはなにか思いついたか、「あっ」っと口から漏らした。

ヒースクリフ

……ああ、今日オレのか

イシュメール

はあ。そんな寝ぼけてても、自分の誕生日を忘れるわけないでしょうに

ヒースクリフ

ったく、朝から気ィ悪くするなよな……

適当にイシュメールの言葉を流し、そのままいつもの席に座るヒースクリフだった。何だか腑に落ちない中、何か気になる事でも残っていたのか、またヒースクリフは口を開けた。

ヒースクリフ

そういえば、さっき何の話してたんだ?

シンクレア

えっと、それなら今日について話してましたよ

ヒースクリフ

今日?なんかあったか?

ムルソー

7/7は、一般的に二つの星が唯一出会える日だと伝えられている七夕と呼ばれている日だ。笹の葉に、短冊という己の願望が書かれた紙を括り付け、星に祈る儀式が存在する

ヒースクリフの疑問に対し、今まで傍観していたムルソーが突如、説明し出す。

ダンテ

あ、説明ありがとうムルソー

ロージャ

へぇ、他力本願で?

いつに間にか、話題が七夕へと偏っていた時、ドンキホーテが突然、ヒースクリフに問いかけた。

ホンル

違いますよーロージャさん。必ず叶えるという目標をつくって、自分を鼓舞させるんですよ

誰かが疑問を投げると、誰かが答え、誰かがぼやく……。そのうち、そのような会話が再びいつも通りに戻るだろう。

ダンテはその様子を見て、そう思うようになった。そして今日が始まる。

ちなみに、ヒースクリフの誕生日は、夜ちゃんと祝ってあげた。

その日の夜。

今日の夜は、なかなかに大変だった。

ヒースクリフの誕生日会は、成功したと言ったらそうだろう。

だが、その時に出された酒のせいで、会場はもう大騒ぎ。

誰かがビンで、誰かの頭をぶっ叩いたり……。

まあ、察せるだろう。

ダンテ

はぁ……

そんな誕生日会の被害者が、廊下をおぼつかない足取りで歩いていた。

ダンテ

はぁ、何でただの誕生日会で、死にかけるやつが出てくるんだ……

不満を、誰にも聞かれないように、静かに叫んだダンテは、未だ仕組みがわからない無限に続く廊下の中で、己の部屋へ戻る。

その道中で、ダンテはあるものを見つけた。

ダンテ

ん?あれって……

本来目があったであろうその頭を向けていた先には、笹が突き刺さっていた。

ダンテ

なんだあれ?

遠目ではよく分からない。ダンテはもう少し近づいて、その笹をもっと眺めてみた。

その笹には、いろんな色の紙が吊るされていた。

その紙を見た瞬間、ダンテはある事を脳の引き出しから取り出した。

ダンテ

あっ、七夕の

ムルソーの説明からわかった事だ。その笹は、七夕に使われるものだとダンテは理解した。

ダンテ

ってことは、この短冊に……

そういえば笹には、合計11枚の短冊が吊るされていた。まさかだと思い、ダンテは黄色い短冊を手に取った。

ドンキホーテ

『正義のフィクサーになる!!!』

ダンテ

ああ、やっぱり

黄色い短冊には、いかにもドンキホーテらしい願い事が書かれていた。

また別の短冊を手に取り、その内容を確認してみると……。

良秀

『あの野郎をく・へする』

ホンル

『みんなが楽しく、平和に過ごせますように』

ウーティス

『管理人様の意へご応えれますように』

ファウスト

『天才になれますように』

ロージャ

『もっと美味しいご飯食べたい!』

グレゴール

『体の変な音がなくなるように』

イサン

『また、わざ見せ合ふべかるべく』

シンクレア

『皆さんが幸せになりますように』

イシュメール

『この旅路に成功がありますように』

ムルソー

『この方達の願いが叶うように』

典型的なものやユニークなものまで、様々願いが短冊には綴られていた。

ダンテ

囚人の七夕か……

珍しく囚人が団結してる様を見て、管理人はどこか嬉しいような仕草を見せる。

そのように関心してるダンテに、誰かの足音が近づいてくる。

ヒースクリフ

あっ、なんだ時計ヅラか

ダンテ

なんだって……私じゃダメだったかな?

その足音の正体は、ヒースクリフだった。どうやら急いでいたようで、手には紫色の短冊を持っていた。

ヒースクリフ

いやあ、むしろ良かったな

ダンテ

はは、ヒースクリフも短冊を?

ヒースクリフ

ああ、なんか皆んなで願い事書く流れになっちまってな

ダンテ

誰の提案?

ヒースクリフ

ホンルだな

ダンテ

やっぱり

そのような会話をしながら、ヒースクリフは笹へ近づき、手に持っていた短冊を吊るした。

ヒースクリフ

……おい、ジロジロ見てんじゃねぇ

ダンテ

ああ、ごめん。みんなのも見ちゃったから、ヒースクリフのも見ておかないとかなって

ヒースクリフ

覗き見かよ。趣味わりぃな

そのようにほざくヒースクリフの短冊にはこう書かれていた。

ヒースクリフ

『キャシーを絶対に返す』

ダンテ

……

ヒースクリフ

急に黙ってどうしたんだ?

ダンテ

いや、ヒースクリフならそう書くなぁって

そっけなく、何と見ないように返したつもりだったが、ヒースクリフは、真面目な顔をして話した。

ヒースクリフ

あの時約束したんだ。決して忘れてないように……。だから、ちょっと恥ずかしいがこういう機会に、思い出すように書くことにしてんだ

本気な顔のヒースクリフに、ダンテはしばらく黙る。

ダンテ

そうだね、いつか取り戻そう

ヒースクリフ

そうだな……時計ヅラも……やるか?

ダンテ

最初からやるつもりだったよ……あ、短冊って

ヒースクリフ

そこに赤いのがないか?

ダンテ

これ、良秀のと同じだけど……

ヒースクリフ

名前つけときゃいけるって…‥ほら、ペンだ

ダンテ

ありがとう……まさかこれを見越してた?

ヒースクリフ

いやぁ、どうだろうな?

はぐらかすヒースクリフを横目に、赤い短冊に己の願い事を書くダンテ。

どうやら最初から決まっていたようで、数秒もかからず書き終え、それを笹の葉に吊るした。

ヒースクリフ

……やっぱそう書くよな

ダンテ

典型的すぎだったかな?

ヒースクリフ

いや、時計ヅラらしいな

2人が笑いながら話し合う場の前にある笹に吊るされた、ダンテの短冊にはこう書かれてあった。

ダンテ

『どうか、囚人と私が困難に向き合わん事を』

クオリティー低くてすまん

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