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芙月みひろ
83
#地雷系
ゆきまん
166
コメント
1件
わあ〜〜〜!!!😭💕 後編、めっちゃ良かった…!! 夜の公園の静けさとか、奏くんの優しい距離感とか、一つ一つの描写がエモすぎて何度も胸がギュッてなったよ…!! 特に「手、繋いでみたかったんだ」からの流れ、もう完全に乙女の心臓持ってかれるやつだよ…!! 失恋の痛みを抱えつつも、新しい温かさに気づいていく舞ちゃんの心情の変化が丁寧で、すごく共感できた〜!!続きが気になりすぎる…!!!🌸✨
舞
ふと、目が覚めた。
夕方だったはずなのに、視界が真っ暗だ。
舞
静寂に包まれた公園内に人の姿はいない。
どうやらブランコに乗ったまま眠っていたらしく、空の果てまで夕闇の深さが色濃く染まっていた。
……頰が涙で濡れて冷たい。
夢の中でも泣いていたらしい。
腫れぼったいまぶたを擦り、錆びついたブランコの鎖をぎゅっと強く握り締めた。
舞
でも立ち上がる気力がない。
体感的に眠っていた時間は長くなさそうだけど、学校から出て結構な時間が経っているはず。
慌ててスマホを確認すると、母親からラインが届いていた。
今日は遅くなるの? と帰宅時間を問うメッセージに、「今から帰る」とだけ文字を打ち込んで、再び画面をオフにした。
―――冷え切った風が頬を撫でる。
スカートから覗く素足も徐々に冷え、体温の低下を感じてブルリと体が震える。
……寒い。
家に帰ったらホットミルクでも飲みたいな。
泣き過ぎたせいで頭も痛いし、心もひどく疲れてる。
こんな日は甘いものを摂取して、嫌なことを忘れたい――― なんて思考を巡らせていた時。
??
舞
??
??
舞
不意に上から降ってきた声。
驚いて見上げた先には、見覚えのある顔―――同じクラスの男の子がいた。
舞
舞
奏
奏
怪訝な表情を浮かべながら、彼―――奏くんは首を傾げた。
木の太い幹に座っている彼を見上げながら、寝起きで冴えない私の思考が動き出す。
飛び降りてきた奏くんは、結構な高さにも関わらず、綺麗に着地してみせた。
膝についた土埃を払い、私の前に立つ。
茶髪の癖毛が照明灯の下で、微かに輝きを増した。
舞
彼は文庫本を腕に抱えている。
わざわざ木に登って、こんな遅くまで本を読んでいたんだろうか?
……変なの。
舞
舞
矢継ぎ早に尋ねれば、彼は少し目を細めた。
奏
舞
急な切り返しに言葉が詰まる。
まさ泣き顔を指摘されるとは思わなくて、慌てて袖で頬を拭う。
舞
奏
舞
途中で言葉を遮られてしまった。
まるで逃げ道を塞がれたみたいで、居心地の悪さを感じる。
―――奏 涼介くん。
1年生の時からの同級生で、2年生の今ではクラスの中心人物。
顔良し・性格良し・頭脳明晰・スポーツ万能……という、まるで少女漫画から出てきたような、完全無欠の男の子。
当然女子からの人気も高く、毎週のように呼び出しを受けていることでも有名だ。
舞
舞
でも私にとっては、ただのクラスメイト。
彼と同じ委員会に入っているだけで、他の接点は何もない。
たまに一言二言言葉を交わしたり、委員会の連絡事項を伝えることがある程度で、普段から話す仲でもないし親しい間柄でもない。
だから、これといって彼に興味はない。
興味のない人間に、泣いていた理由を探られるのは、正直いい気分じゃない。
舞
舞
彼氏に振られたとは言いにくい。
そっぽを向く私に、奏くんは小さくため息をついた。
奏
舞
奏
奏
舞
"ずっと見てた" という言葉が、妙に引っ掛かったけど。
舞
舞
何も知らない他人に何を言われても、心には何も響かない。
奏
舞
奏
舞
彼の言うことは最もだ。
もし私が逆の立場でも、気になって声を掛けると思う。
もしこの人に失恋の苦しみを打ち明けたら、少しは楽になれるんだろうか。
でも同時に、"同情されたくない"という意地も込み上げる。
舞
舞
自棄になって答えれば、奏くんの眉がわずかに寄る。
奏
舞
奏
拍子抜けするほど淡々とした返事だった。
実は心のどこかで、慰めてくれることを期待してた自分が滑稽に思えてくる。
奏
奏くんは足下に視線を落とした。
伏せがちな瞳は、どこか悲しげに見える。
奏
奏
その言葉が、思いのほか私の胸を突いた。
舞
本当にいるのかな、そんな人。
星の数ほどいる人の中で、私を"ちゃんと"見てくれる人に出会える確率って、どれぐらいなんだろうか。
少なくとも、彼らはちゃんと見てくれなかった。
奏
舞
どういう意味だろう……?
首を傾げる私から目を逸らし、奏くんは自分の制服の袖を引っぱった。
よく見ると、腕の内側に小さな切り傷が見える。
舞
奏
何気ない動作で傷を隠す彼の瞳が、一瞬揺らいだ気がした。
舞
奏
舞
奏
奏
奏くんはサッカー部に所属していたはず。
その部活後に何かから逃げてきて、本を読みながら公園で暇潰しをしていた……とか?
舞
舞
奏
舞
ちょっと棘のある言い方になってしまった。
失恋のショックがまだ尾を引いているみたい。
私が放った言葉に何を思ったのか、奏くんの表情が曇る。
奏
舞
意外な返しに顔を上げる。
奏くんの控えめな笑みを見た瞬間、その言葉の意味に気づいた。
舞
奏
舞
奏
舞
ということは、1年生の頃から好きなんだ。
彼とはずっと同じクラスだし、もしかしたら、私の知っている子かもしれない。
奏くんが片想いをしている相手が誰なのかは知らないし、知りたいとも思わないけど。
人気者の彼ですら、叶わない相手がいる。
不謹慎かもしれないけど、その事実が少しだけ、自分を慰めてくれた気がした。
舞
奏
舞
奏
舞
思わず言葉を失う。
まるで自分のことを言われてるような錯覚を覚え、胸がぎゅっと締め付けられた。
弱々しく笑う奏くんの顔に、今まで見たことのない影が差す。
舞
舞
奏
舞
舞
奏くんなら、女の子に不自由しなさそうなのにね。そう伝えれば、微かに笑う気配がした。
それまでの張り詰めた空気が、少しだけ和らぐ。
奏
舞
奏
奏
奏
舞
奏
奏
舞
心臓がドクンと脈打つ。
なんだか妙な胸騒ぎがする。
でも同時に、この"待つ"という選択肢について考えさせられる。
振られたばかりで次に進む勇気も持てない私に、彼の姿勢は意外な形で、希望を投げかけてくれたような気がした。
舞
奏
舞
奏
鋭い指摘にドキッとした。
真っ直ぐな眼差しを私に向けてくる彼の表情には迷いがない。
奏
舞
正論すぎてぐうの音も出ない。
浮気された時点で、私達の間にあった信頼関係は崩壊してる。
もしヨリを戻せたとしても、もう私は元彼に不信感しか抱けない。
それでも胸の痛みは消えてくれない。
奏
舞
奏
舞
舞
奏
奏くんが隣のブランコに腰を下ろした。
沈黙が続く中、かすかに響く虫の音だけが聞こえてくる。
奏
先に沈黙を破ったのは奏くんだった。
奏
奏
奏
フォローが下手だったらごめん、奏くんは照れ臭そうに笑った。
舞
奏
舞
奏
舞
キィ、とブランコが揺れる。
月明かりに照らされた彼の横顔が、不意に無防備な表情を覗かせた。
奏
奏
舞
奏
舞
彼が何を伝えようとしているのかわからなくて首を傾げる。
そんな私の様子を見て、奏くんは渋々といった様子で腰を上げた。
一歩一歩、近づいてくる。
ブランコに座ったままの私の前に来て、同じ目線の高さまで屈んだ奏くんと視線が重なった。
奏
ゆっくりと伸びてきた手が、私の頭にぽんと触れた。
奏
夜風が私達の間をすり抜けていく。
この時になって初めて気づいた。 彼の瞳の中に宿る儚さの意味と、その告白に隠された想い人の正体に。
舞
奏
舞
かあ、と頬に熱が集まる。
さっきまで静かだった鼓動が、急に大きく響き始めた。
ここまで明かされて、彼の好きな人が誰なのか、私に何を伝えようとしていたのか――― わからないほど鈍くはない。
舞
同じクラスだった、同じ委員会だった、でも話した記憶はほとんどない。
好意を寄せてくれる要素なんて、どこにもないはずなのに。
奏
奏くんはすぐに手を離し、立ち上がると数歩下がった。
人生で初めて男の子から告白されたことに困惑して、私は動揺して俯いてしまう。
彼の真っ直ぐな視線を受け止めきれない。
誰かに告白された時は断る――― なんて言ってたくせに、いざ告白されると何も言葉が浮かばない。
奏
奏
舞
どう答えればいいのかもわからず、しどろもどろになる私とは対照的に、奏くんの態度は普段通りで冷静で。
目が合うと、控えめに微笑んでくれる。
それはクラスの皆の前で見せる完璧な笑顔ではなくて、どこか寂しそうで、でも温かみのある笑みだった。
舞
舞
奏
舞
奏
優しい声が落ちる。
告白の返事をこの場でしなくてもいいことに、ひとまず安堵する。
そろそろ帰ろう、そう言いながら、奏くんは私に手を差し伸べてきた。
その手のひらに、恐る恐る自らの手のひらを重ねる。
優しく引っ張り上げてくれて、腰を上げた拍子にブランコが大きく揺れた。
奏
舞
奏
舞
奏
舞
離れる気配のない手の温もりに恐縮していると。
奏
舞
奏
奏
気恥ずかしそうに目を逸らす奏くんの耳が、ほんのりと赤く染まっていて。
その瞬間、胸の奥で燻っていた悲しさや悔しさが消えて、代わりに温かな感情が私の中に広がっていく。
そして思った。
時間はかかるかもしれないけど、私はいつか、この人と恋愛ができるんじゃないかと。
舞
繋がれた手を緩く握り返す。
彼の肩が少しだけ跳ねた。
奏
舞
奏
舞
奏
奏
舞
―――公園を出て、静かな夜道を2人で歩く。
ぽつぽつと交わす会話はぎこちなくて、沈黙が続く時間もあったけど、不思議と気まずさは感じない。
お互いの存在を確かめ合うように、繋がれた手に力を込めたり緩めたりして、その不器用さにくすっと笑みが漏れた。
……失恋の痛みが癒えていく。
胸の中が温かな思いで満たされていく。
まだ元彼のことばかり考えてしまうし、奏くんとどうなりたいとかは考えられないけど、今は彼の想いや優しさに甘えたい。
私を想ってくれる人が近くにいてくれる、そう思うだけで明日も頑張れそうな気がした。
fin.