チョロ松が死んだ。
死因は飛び降りによる自殺らしい。
ギャグアニメだから明日になればケロッとした顔で戻ってくるだろうとか、その時は抱きしめてめいいっぱい愛を伝えてやろうとか
そんなことを思っていてもチョロ松が帰ってくることはなかった。
いや正確に言えば帰ってきた。 帰ってきたと言うより会いに行ったの方が近いかもしれない。
柩の中に入ったチョロ松はまだ息をしていそうなそんな安らかな眠りについていた。
逆三角になった笑顔でもいつもみたいに三角になった困り顔でもないただいつも見てきたようなそんな自然な眠りだった。
そんな中1人の兄弟を除いて葬式が始まった。 周りの兄弟や父さん母さんみんな泣いていた。
ふとあの時の最終回みたいにみんなが悲しんでいる中爆発でもしてド派手に生き返るとかそんなことを考えていたがそんな訳もなく、ただ淡々と黙々と式は進んで行った。
とても呆気なかった。
骨上げをする前最後にチョロ松の顔を覗いた。
やはり眠っているようで今にも柩の狭さに唸り声をあげ寝返りを打ちそうなほどのいつも見てきた顔だった。大好きな恋人の姿だった。
だがどこか何か空っぽさがあり少し頬も痩けているような気がした。 やはりこれは死体なのだと死んでしまったのだと改めて悟った。
火葬が終わるのを待っている間ふとポッケから指輪を2つ取り出した。
こっちがチョロ松の指に付いてた指輪でこっちが俺が付けてる指輪。 なんて思いながらチョロ松にプロポーズをした日に記憶を向ける。
結構前…2年ぐらい前からチョロ松とは付き合っていた。
体の関係も持っていたしお互い性欲はそこそこ強い方だったから兄弟が外出している日やお金が貯まった日にはラブホに行って身体を重ねていた。
上下の問題で討論になると思ったが案外早く決まった。チョロ松は童貞とかそういうことを気にしている割に俺に上を譲ってくれたのだ。
たまに「僕も童貞卒業したい〜」なんて文句を言っていたが結局いつも挿れさせてくれて、最後までアイツは童貞のまま俺と死ぬんだろうななんて思っていた。
いつも通りの夜、いつも通りラブホで行為をしチョロ松がクタクタになった時自分のズボンのポケットから指輪を取り出しチョロ松にプロポーズをした。
おそ松
おそ松
チョロ松
うつ伏せになり枕を抱きながら吐息混じりで疑問をぶつけてくるチョロ松の視界に入るように指輪を見せた。
おそ松
必死に貯めて恋人のために買った指輪。
初めてだから少し照れくさくてプロポーズなんてした事ないから恥ずかしくて、この恥ずかしさを誤魔化すように、にひひと鼻の下を擦り無邪気に笑って見せた。
チョロ松
毒づく恋人の声にはどこか優しさがあり、真っ赤なリンゴのように赤くなったチョロ松の顔をみたら余計に恥ずかしくなった。
おそ松
おそ松
チョロ松
チョロ松
ぽすっと枕に顔を埋め恥ずかしそうに小さい声で言う姿はとても可愛くて愛おしくて、こんな幸せをもらってしまっていいのだろうかとかそんなことを考えてしまう。
おそ松
おそ松
チョロ松
チョロ松
おそ松
チョロ松
おちょくるように言った言葉を否定されなくて嬉しかったのと同時になんかむず痒くてチョロ松の隣のベッドへばたんと倒れる。
チョロ松
チョロ松
おそ松
チョロ松
おそ松
チョロ松
おそ松
チョロ松
チョロ松
おそ松
お互い顔を合わせて笑いあって そんで俺が渡した指輪をお互いに付け合ったっけ。 懐かしくてなんか少し寂しくなった。
そんな思い出に浸っていたらあっという間に時間は過ぎて、カラ松に火葬が終わったから骨上げをすると涙声で呼ばれた。
ぎゅっと俺とチョロ松の指輪を握り締めポッケへ戻しカラ松の後を追った。
今日3回目に見たチョロ松は白い骨だった。
チョロ松を箸で掴むなんて考えただけで殴られそうだなんて思い骨上げをした。
初めに父さんと母さんが2人で骨壺へ入れ次は俺とカラ松.次は一松と十四松.その次にトド松と俺とまぁ、こんな順番で俺らは骨上げをした。
箸を持つカラ松の手もトド松の手も震えていて終わった後はみんな必死に声を殺し泣いていた。
俺は泣けなかった。
ここまでの事がとても呆気なくて夢でもみているようなそんな気がした。 実感がわけなかった。
今はまだ夢の中でチョロ松に叩き起こされ本当の現実へ戻ってくるそんな気がした。
そんな感覚のまま葬式は終わり、チョロ松が生き返ることも、夢から叩き起されることもなく終わった。
帰りはチョロ松を抱いて兄弟と帰った。
骨壺と言うにはあまりにも勿体ない気がしたので心の中では骨壺をチョロ松と思い続けることにする。
小さいチョロ松と抱いているようなそんな感覚がして少し温もりを感じるが「そんなわけない…か…」と現実へ引き戻される。
チョロ松がいた頃の記憶や思い出を何か話すわけでもなく、ただ何も話さず静かにチョロ松を抱いた俺を前にし兄弟順で静かに歩き帰路についた。
恋人が死んでも飯は美味いし腹は減るものだ。
改めて人間は図太いなと感心する。
みんな少量の飯を食べ静かにご馳走様と告げ2階へ向かう。
ご飯を食べる人がいなくなっても俺は1人で食べた。アイツっていつもどんぐらい飯食ってたっけとか色々記憶を辿りながらアイツの分まで食べた。
みんなが家の風呂を使っている中俺はいつものように銭湯へ行った。
家族に内緒で骨壺を持ち出し小さなチョロ松と一緒に銭湯へ入った。
おそ松
濡れないようにビニールをかけた骨壺に向かい話しかける。
チョロ松
なんてチョロ松の声をした幻聴が聞こえ俺もそろそろやべぇなと思いながら優しく愛おしく小さなチョロ松を撫でる。
おそ松
チョロ松
おそ松
チョロ松
いつもならチョロ松に金をせびり買ってもらうが幻聴が聞こえる骨壺にこんなことさせるのは流石にまずいなと思い口を閉ざした。
銭湯の帰り、銭湯の必需品が入ったカゴの中にチョロ松を入れて帰るのは気が引けたので小さなチョロ松を抱えながら器用にカゴを片手で持った。
白い息を吐き、抱えている小さなチョロ松に向かい口を開ける
おそ松
チョロ松
おそ松
チョロ松
熱海の広告を見せてきたあの頃の俺を思い出したのか小さなチョロ松はふふっと可愛げに笑った。
おそ松
チョロ松
おそ松
チョロ松
おそ松
チョロ松
おそ松
チョロ松は何も言ってくれなかった。
小さなチョロ松と言っている存在は所詮ただの骨壺で今会話してるチョロ松はどこにも居ないのだと思ったら苦しくて辛くて仕方がなかった。
目尻からじんわりと涙が滲み鼻をずるっと啜る。
おそ松
おそ松
そう言うと小さなチョロ松を少し強く抱きしめ家の戸を開けた
おそ松
作詞作曲カリスマレジェンドの即興で作った熱海の歌なんかを歌いながら平然とした顔でチョロ松を元に位置に戻す。
幸い仏壇のある部屋には誰もいなかったのでコソコソしながらチョロ松を置く必要もなく持ち出したことがバレることも無く安堵した。
きっと今はチョロ松の骨壷を見れるほどの気力はないのだろう。仏壇のある部屋へ入る家族は誰もいなかった。
1人仏壇の上で寝させるのはチョロ松が悲しむと思いその日は仏壇の下で骨壷を抱いて床で寝ることにした。
今日はもう寝て明日起きたらチョロ松の為に、俺らの最初で最後の新婚旅行の為にお金を貯めよう。
だからそれまでに、
おそ松
なんて無理難題を骨壷に言い返事が返ってくるはずがないよなぁ…なんて思い静かに優しくチョロ松を抱きしめて寝た。
夢の中でチョロ松と出会うなんて事もなく、ごく普通で改めて考えれば意味が分からない変な夢を見ただけだった。
朝起きたら毛布がかけられていた。
誰かチョロ松を見に来た人が、寝ている俺を見つけ優しさでかけてくれたのだろう。
ありがてぇな…なんて思いながら抱き抱えていたチョロ松を見ようとする。
だが手元にはなく持ち前の寝相の悪さでどこかにやってしまったのではないかと少し焦って起き上がると仏壇に置いてあることに気付き一安心した。
その毛布をかけてくれた人が次いでに置いてくれたのだろうか。
母さん辺りがやってくれたんだろうな…なんて思っていたけれど毛布のダサ痛い柄からしてカラ松だなと言うことに気付いた。
アイツはダサいし痛い奴だけど案外兄弟を思っていて優しい奴なんだという事は知っている。
チョロ松と付き合っていると告白した時もカラ松は拒絶せず 「幸せにしてやれよ。」と、痛さの欠片もないとても普通で優しい言葉をかけてくれた。
それほどカラ松は優しい奴だった。
煙草を吹かしながら手持ちのお金を見る。
おそ松
野口さんが3人と1円が4枚入っていた。
乱雑に扱っていたせいか、くしゃくしゃになった野口さんを広げて
おそ松
と煙草の先に付いた火をじゅっと消して灰皿に捨てた。
コメント
6件
すごい切ない恋がありましたね。これからも期待しています
凄い切なかったです… ですが感動もしましたッ、書き方がうますぎてびっくりです…
コメント、失礼します。 話の内容や、雰囲気、テキストの使い方、言葉の使い方、素晴らしく好きです。気づけば、2人の気持ちに感情移入していました。すいません、どうしても伝えたくて....。 これからも頑張って下さい!