明日の君を描く 第2話

放課後の喧騒の中を歩き、生徒玄関の階段を降りてしばらく行った所にある自動販売機に向かう

その先にはグランドがあって、すでに部活が始まっていた。野球、サッカー、テニス、そして陸上。それぞれの部員達が練習の道具の準備や、ウォーミングアップをしている

特に飲みたいものはなかったけれど、私だけ買わない訳にもいかないので、紙パックのフルーツミルクを選んだ。

奏がニコニコしながら顔を寄せてきたので、私は

と笑った。

奏はいちごミルクのパックにストローを刺しながら首を傾げる。その動きに合わせて、ツヤのある長い髪がサラリと揺れた。

色素が薄くて柔らかそうな、綺麗な髪だ。

味が好きな訳ではなくて、パッケージの色の組み合わせと、果物のイラストがいい雰囲気が好きなのだ

でも、そんな理由で飲み物を選ぶのは変だと彼女達に笑われそうだから、何も言わない。

私たちはグランドの横を通って、教室棟に戻る階段へと向かう。

前を歩く奏は、目を奪われたようにグランドの方を見つめていた。それから足を止めて、

奏が唐突に、恥ずかしそうに言った

春夏がぷッと噴き出し、

と彼女の方をぽんと叩く。

菜々美がからかうように言うと、奏は白い頬を赤らめた。

奏の顔は、さらに、赤くなった。

いじわるなんだから、と独りごちながら奏はグランドを取り囲むフェンスの前にたった。

その目がうっとりと、校庭の片隅を見つめている。

その横顔を見ながら私は、恋する乙女の目だ。と思った。

奏は、いつものように小さく叫んだ。あの時もそうだったな。と、思い出す。私が初めて恋をして、同時に失恋した日。