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第1話 - あ

2023年06月19日

#恋愛

結城真矢

カスミ

ソウさん、ですよね？こんばんは。

カスミ

ユウイチの妻、カスミです。突然のLINE失礼します。

ソウ

カスミさん、こんばんは。

ソウ

ユウイチさんにはいつもお世話になってます。

カスミ

こちらこそ、ユウイチがいつもお世話になってます。

カスミ

あなたのお弁当箱と、メッセージカードを見ました。

カスミ

ユウイチの為に、お弁当を作ってくださりありがとうございます。

ソウ

ユウイチさん、いつもお昼は外食かコンビニ弁当ですから。

ソウ

部下として栄養の偏りが心配になっただけです。

ソウ

私が進んでやっている事ですから、お気になさらないでください。

カスミ

いえ、会社の部下に栄養の心配までさせる訳にはいきません。

カスミ

確かに私はユウイチにお昼ご飯の準備はしていませんが、

カスミ

朝食や夕食ではきちんと栄養を考えて食事を出していますので。

ソウ

でも1日で一番力を出さなきゃいけないお昼ご飯ですよ？

ソウ

きちんとした食事を摂ってもらわないと仕事にも影響が出ます。

カスミ

お昼は栄養よりも、食べたい物を食べてテンション上げたいって

カスミ

ユウイチ本人が言っているのですが。

ソウ

え？奥さんにはそう言ってるのですか？

カスミ

どういう意味ですか？

ソウ

嫁は料理苦手で、特に弁当作りは嫌がってるって

ソウ

ユウイチさん言ってましたけど？

カスミ

はあ？

ソウ

だから私の栄養も彩りも愛情も満載のお弁当、

ソウ

とっても喜んでくれましたよ。

カスミ

本当ですか？

ソウ

はい、おいしかったと言ってくれました。

カスミ

そうですか。確かに私は料理は得意ではありません。

カスミ

ユウイチもそれを承知で結婚してくれたのですけど。

ソウ

なんだかんだ言って、男性には料理上手な女性を求めるものです。

ソウ

だから今度、ユウイチさんにはお弁当だけではなく、

ソウ

夕飯も振る舞いたいなあ、と思ってるんですけど。

カスミ

いいえ、お気遣いなく。

カスミ

それどころか、今まで作って頂いたお弁当の材料費とお礼を

カスミ

ユウイチに持たせますので。

カスミ

今後はユウイチの栄養まで考えて頂く必要はありません。

ソウ

だからこれは私が好きでやっている事なんです。

ソウ

奥さんも気を揉む必要はありません。

ソウ

もちろんお礼なんて必要ないですからね。

カスミ

はっきりいいますね。

カスミ

明日からはユウイチの分のお弁当は作って来ないでください。

〜翌日　夜〜

カスミ

ソウさん、これはどういう事ですか？

カスミ

私、昨日言いましたよね？お弁当は作って来ないでって。

ソウ

あれ？何でバレたんですか？

カスミ

ユウイチにはお昼ご飯の分のお金を渡してあるんです。

カスミ

でもユウイチはそのお金をそっくり持ってたんです。

カスミ

問いただしたら、ソウさんのお弁当を食べたからって。

ソウ

ヤダー。財布の中身までチェックしてるんですか？

カスミ

夫婦間でのルールがありますから。

ソウ

もの凄い束縛じゃないですか？ユウイチさん可哀想。

カスミ

結婚する時、夫婦間での約束事がいくつかあって、

カスミ

それにはユウイチも納得しているんです。

カスミ

他人から見れば異常かもしれませんが、

カスミ

これが私達の夫婦のあり方ですから。

ソウ

カスミさんがお弁当を作らないのもその1つですか？

カスミ

お弁当を作らない、というか私の料理はあまり期待しないで、

カスミ

と言った方が正しいですね。

ソウ

ヤダー。それじゃあ、奥さんとしてどうなの？

カスミ

どうなのって、2人ともフルタイムで働いているし、

カスミ

料理はもちろん、家事も夫婦で役割を分担しているの。

カスミ

ちなみにユウイチは私よりも料理は苦手だから私が担当してます。

ソウ

ならお嫁さんとして、料理も頑張ったらどうですか〜？

カスミ

料理は今は勉強中です。

カスミ

確かに料理上手という出来じゃないですけど、

カスミ

決して食べられないものじゃないですから。栄養も考えています。

カスミ

ですから、他人の家庭の事情には口を出さないでもらえますか？

ソウ

ヤダー。こんな奥さんじゃユウイチさん可哀想！

ソウ

ますます私と私の料理で癒やさなくちゃと思っちゃいました。

カスミ

必要ありません。

カスミ

ユウイチは今も我が家で充分リラックスしていますから。

ソウ

いやいや、料理も出来ない上、束縛の激しい奥さんじゃ

ソウ

癒やされないんじゃないですかね？

カスミ

癒やされる方法は人それぞれですよ。

カスミ

ユウイチともじっくりと話し合いますので、

カスミ

今後は上司と部下の関係を超えるような真似はしないでください。

〜翌日　夜〜

カスミ

ユウイチ。今どこにいるの？

ユウイチ

実はさ、会社の上司と飲んでいるんだ。

ユウイチ

急に誘われてさ。連絡しなくて悪かったよ。

カスミ

ソウさんの家じゃなくて？

ユウイチ

まさか！ソウ君から夕飯食べに来ないかって誘われたけど

ユウイチ

きちんと断ったよ。もちろんお弁当もね。

カスミ

昨夜私との話し合い、分かってくれたのね？

ユウイチ

ああ。今まで本当にすまなかった。

ユウイチ

ソウ君が俺の事を心配してくれてると思うと無下にできなくて。

ユウイチ

でも君をそこまで傷つけていたんだな。

ユウイチ

気付かくて本当にすまなかった。

カスミ

分かってくれたらいいの。

カスミ

じゃあ、あまり飲み過ぎないようにね。

ユウイチ

もちろんだよ。日が変わる前には帰るようにするから。

カスミ

って、言うと思った？

ユウイチ

へ？

カスミ

分かってるわよ。ソウさんと一緒にいるんでしょ？

ユウイチ

それはだな。上司と飲んでいるんだけどソウ君も一緒なんだ。

ユウイチ

言わなくて悪かった。ソウ君と一緒だと君が気を悪くするだろ？

カスミ

そういう気遣いいらないから。

カスミ

で、何ていう名前の店で飲んでいるの？

ユウイチ

黒木屋っていう名前の居酒屋だよ。

カスミ

黒木屋ね。

ユウイチ

そうそう。駅前に最近できたんだよ。

ユウイチ

安いし、つまみもなかなか上手いんだ。

ユウイチ

あ、もちろん君のアドバイス通りにサラダを最初に食べてるよ。

カスミ

そうなの。じゃあ羽目を外さないようにね。

ユウイチ

ああ。信用してくれ。頼む。

〜翌明朝〜

ソウ

カスミさん、おはようございます。早朝から失礼しますね。

カスミ

ソウさん。おはようございます。

カスミ

ユウイチがお世話になったようで。

ソウ

これくらい、部下として当然ですよ。

ソウ

ありがとうございます。私も、ユウイチさんも信用してくれて。

カスミ

一夜を過ごした夫とその部下を信用すると思っていますか？

ソウ

へ？

ソウ

いや、誤解ですよ。

ソウ

確かに私達、2人で飲んでいましたけど、

ソウ

つい飲みすぎて終電逃しちゃったんですよ。

ソウ

だからファミレスで時間を潰していたんです。

ソウ

連絡しなくてごめんなさい。

カスミ

ちなみにどこのお店で飲んでいたんですか？

ソウ

豚貴族です。国産黒豚の冷しゃぶサラダが美味しかったんですよ。

ソウ

そうだ。カスミさんも今度一緒にどうですか？

カスミ

結構です。それからユウイチも差し上げますね。

ソウ

え？本当に？

カスミ

嘘を吐いてまであなたと一緒にいるような夫には

カスミ

ほとほと愛想がつきました。

ソウ

いやいや、ユウイチさんをくれるっていうのは嬉しいですが

ソウ

私達、決して不貞な関係ではないですからね。

カスミ

夜明けまで2人で飲んでいるのは私的には不貞行為です。

ソウ

そうですか。でははっきりと言いますけど、

ソウ

ユウイチさん、カスミさんといるのは窮屈なんですって。

カスミ

窮屈？

ソウ

束縛が激しすぎて、心も体も休まらない。

ソウ

会社にいる時が癒しの時間だって言っていましたよ。

カスミ

そうですか。

ソウ

でも私と一緒にいるともっと癒やされるんですってｗｗｗ

ソウ

だからもうユウイチさんを解放してあげてください。

カスミ

わかりました。では窮屈さからユウイチを解放します。

カスミ

後はユウイチのお好きなようにと言ってください。

ソウ

はーい、ありがとうございます。

ソウ

これでユウイチさんは正式に私のもの。

ソウ

返してって言っても聞きませんからね。

カスミ

絶対に言いません。約束します。

カスミ

どこかの誰かさんよりは、言った事は守る方ですので。

ソウ

そんな負け惜しみ言わなくてもｗｗｗ

ソウ

あ、でもユウイチさんとは不貞関係はないですからね。

ソウ

慰謝料とか言われても不貞行為を証明できませんから。

カスミ

不貞行為云々は関係ないです。

カスミ

離婚届とユウイチの荷物はソウさんの家に送ればいいですね？

ソウ

はーい。お願いします。

〜1ヶ月後　夜〜

ソウ

カスミさん。助けて！

ソウ

カスミ！返事してください。今日は土曜日だから休みですよね？

カスミ

おはようございます。ソウさん。

カスミ

ユウイチはたっぷり癒やされていますか？

ソウ

ユウイチさんは癒やされいるみたいだけど、

ソウ

私は全然癒やされない！

カスミ

はあ、そうですか。

ソウ

家に帰ってきた瞬間から、服を脱ぎ散らかして

ソウ

お風呂どころかロクに手も洗わず、どこでもゴロゴロして。

ソウ

ご飯も食べっ放しで片付けもしないんです！

カスミ

まあ、そうでしょうね。ユウイチなら。

ソウ

そうでしょうって、ユウイチさん、そんな人なんですか？

カスミ

はい、そうです。

カスミ

私と離婚する前、家に入れてた時に気付かなかったんですか？

ソウ

その時は、積極的に手伝ってくれて。

ソウ

ユウイチさん、きれい好きだって言っていたし。

ソウ

だから私の家も褒めてくれて、逆にカスミさんとの家が汚いって。

カスミ

それ、ユウイチのやり方だから。

ソウ

へ？

カスミ

だから、最初はいい人ぶっていて、あとで本性を見せるタイプ。

ソウ

へ？

カスミ

我が家が汚いのはね、ユウイチが掃除しないからよ。

ソウ

それは、奥さんであるカスミさんがやればいいじゃないですか。

ソウ

私も家は掃除しています。でも、脱いだ服は洗濯カゴに入れるとか

ソウ

食べた食器を流しに持っていくくらいは自分でするでしょ？

カスミ

だから、本来のユウイチは自分の世話すら

カスミ

妻にやってもらえるものと思っているの。

ソウ

そんな！

カスミ

だから私は夫婦間でルールを決めて生活するようにしたの。

カスミ

掃除は交代でやる。嘘はつかない。

カスミ

お互いのスマホにGPSを入れる。

ソウ

GPS？そこまで束縛していたの？

カスミ

飲み会も終電までに帰るとか約束があったけど、

カスミ

すぐに遅くまで飲みつぶれて、よくスマホを落としていたから。

ソウ

確かに、最近は午前様が多いし、酔って家の鍵を失くした。

カスミ

酔うと判断力なくなるし、路上で寝る事もあったのよね。

ソウ

今もユウイチさん、帰って来ていないの。

ソウ

電話しても連絡つなかいし。

カスミ

連絡しても、デタラメな事言われるかもよ。

ソウ

へ？

ソウ

確かに問だたした時も、辻褄が合わない時があって。

カスミ

うん、多分嘘ついてるね。

ソウ

会社では誠実で優しい人だと思っていたのに。

カスミ

会社で見せる顔と、家の顔は全然違うって事。

ソウ

性格もいいし、大手企業の関連会社で役職もある人だから、

ソウ

同世代よりも年収もあると思ってたのに！

カスミ

思ってたほど給料すくなかった？

ソウ

はい。少ない、というか私よりも低いのがショックで。

カスミ

まあ、同じ会社だから、ユウイチくらいの年と役職じゃ

カスミ

ある程度年収も想像つくから無理ないか。

カスミ

ユウイチね、左遷されてきたのよ。親会社から。

ソウ

へ？

カスミ

親会社で仕事に大きな穴開けちゃってね。

カスミ

大幅降格してさらにあなたのいる関連企業に出向したのよ。

カスミ

クビになるか給与も大幅にカットか選ばせてこうなった訳。

カスミ

あなたが入社するより前の話だから、知らないのも無理ないか。

ソウ

そんな！ユウイチさん返します！

ソウ

今日からカスミさんの家に帰るように言いますから！

カスミ

返してって言っても聞かないと言ったのはソウさんですよ。

ソウ

それはカスミさんが言った時の話です。

ソウ

私から返すんですから、問題ないでしょ？

カスミ

いやいや、私ももうあの人は人生に必要ないですし。

ソウ

私よりも長く一緒にいられたんだから、

ソウ

今後も乗り越えられるんじゃないですか？

カスミ

だからもう無理ですって。私、もう引っ越していますし。

ソウ

へ？

カスミ

ユウイチときっぱり縁が切れた事だし、

カスミ

心機一転、引っ越しをして新生活スタートしたんです。

ソウ

そんな！

カスミ

それからスマホも機種変してGPSも切ったので

カスミ

位置情報は分からないですからね。

ソウ

カスミさん、お願いです。

ソウ

ユウイチさんに家を出て行くように説得してもらえませんか？

カスミ

仮にも略奪した相手に言う事じゃないと思いますけど。

ソウ

ユウイチさんの扱いを知ってるのはカスミさんじゃないですか。

ソウ

お願いします！

カスミ

無理だと思いますよ。

カスミ

ユウイチ、あなたの家は何も言わなくてもご飯が出てきて

カスミ

フカフカのソファやベッドがあって快適って

カスミ

わざわざ私のLINEに報告していましたから。

ソウ

へ？

カスミ

大変ですが、自立支援頑張ってくださいね。

〜後日談〜

カスミ

その後、ソウさんの献身的なお世話のお陰で

カスミ

ユウイチはますます自分では何もできないおじさんに

カスミ

なってしまいました。

カスミ

靴下も履かせてもらっているユウイチに、ソウさんは

カスミ

いつか自分から動いてくれる人になってくれると

カスミ

信じているみたいです。

カスミ

晴れて独身になった私は仕事に打ち込む生活に。

カスミ

料理もまだまだ苦手ですが、ミールキットなどを利用して

カスミ

栄養のある食事を心がけています。

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