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~過去~
クロロ
ある日そう言ってクロロが差し出した写真には、 こちらを向いて微笑む若い男が映っていた。 穏やかな顔。人を殺したことなど、きっと一度もない。 そして、たぶんこの世界のどこかでは、 “誰かの家族”なのだろう。
ユナ
問いかけるとクロロは答えた。
クロロ
命を踏みにじることで、立場を得る。 “蜘蛛”とはそういうものだと、教えるような言い方だった。
私は、写真を受け取った。 何も言えなかった。 シャルナークが、少し離れた場所からそれを見ていた。 目が合うと、小さく肩をすくめる。
シャルナーク
そう言わなかったことだけが現実で、 答えだった。
シャルナーク
シャルナークがぽつりと言った。
シャルナーク
私は、俯いた。 泣く資格なんて、最初からなかった。 私が殺したのは“罪人”じゃない。 逃げた仲間候補。ただそれだけの人間だった。
フィンクスが舌打ちする。
フィンクス
笑った? 私が? ……そうかもしれない。 笑わなければ、壊れそうだった。 感情を捨てることでしか、あの場所に“居場所”はなかった。
クロロは相変わらず無表情だった。 ただ、ひとつ。静かに言った。
クロロ
私は、蜘蛛になることを選んだ。 だからこそ、あのとき誰も悲しまない顔で殺した。 それは、後悔でもない。罪悪感でもない。 ただ、そうするしかなかった。
ユナ
私は立ち上がる。
ユナ
シャルナーク
シャルの声が揺れる。 でも、その優しさにはもう頼らない。 だってこの先に待っているのは、 共犯者としての終わりだから。
コメント
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くもぉぉぉ