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第1話 - あ

2023年11月12日

#恋愛

結城　真矢

ユウキ

お母さん、大丈夫？

ユウキ

お父さん酷いよ。今日は味噌汁の気分じゃなかったっていうだけで、

ユウキ

お母さんに文句付けて殴るなんて…

マサミ

大丈夫よ。お父さんの気分をわかってなかった、お母さんがいけないのよ

ユウキ

毎日こうじゃない。私、もうこんな生活耐えられないよ

ユウキ

お母さん離婚しなよ！あんなお父さんと一緒にいることないよ！

マサミ

そうはいかないわ。お父さんと離婚しないのは、あなたの為だもの

マサミ

片親だと満足に生活していけないし、将来にも影響が出るのよ

ユウキ

私は平気だよ！お母さんが殴られなくなるなら、それでいいの

ユウキ

それに、母子家庭やＤＶの支援だって、調べてみれば色々あるみたいだよ！だから…

マサミ

ありがとうユウキ。でも大丈夫

マサミ

ユウキの為なら、お母さんこれくらい平気よ。いくらだって我慢するわ

～数日後～

マサミ

ユウキ、大丈夫？

ユウキ

私は平気だよ。お母さんばかり殴られてるのを見てられないよ

マサミ

ありがとう、お母さんの味方して、お父さんに立ち向かってくれて

マサミ

それに、代わりに殴られてくれて…

マサミ

ユウキは強いのね。お母さん、あなたを産んで本当に良かった

マサミ

これから、私達二人で助け合って、お父さんに耐えて行こうね

～数年後～

マサミ

ちょっとユウキ！いたのにどうして助けてくれなかったの！

マサミ

お陰でお母さん、お父さんに殴られたのよ！

ユウキ

ごめん、テスト近いから勉強してた

マサミ

勉強！？そんなものがユウキはお母さんより大事なの！？

ユウキ

ごめんって。いつものことだから、お父さんとお母さんの喧嘩を止めるの後回しにしちゃって…

ユウキ

私だって手一杯なんだよ

マサミ

何よそれ。ユウキは、お母さんがお父さんに殴られてもいいの！？

ユウキ

…じゃあ、なんでお母さんは、私がお父さんに殴られる時は庇ってくれないの？

ユウキ

見てるだけで、お父さんに抗議もしてくれないの！？

ユウキ

お母さんこそ、私が殴られてもいいの！？

マサミ

そ、それは、お父さんが怖いからよ！だから何もできないの

マサミ

仕方ないじゃない！

ユウキ

何よそれ…

ユウキ

私が、お父さんが怖くないとでも思ってるの！？

ユウキ

私だって怖いよ

ユウキ

でも、お母さんのために必死でお父さんに立ち向かってるんだよ

ユウキ

それなのに、お母さんは何！？

ユウキ

私と違って大人なのに、夫婦なのに、

ユウキ

お父さんに何も言い返さないで、やり返さないで、離婚もしないで、

ユウキ

私に黙って庇われてて、

ユウキ

挙句の果て、私が代わりに殴られるのが当然みたいなこと言って！！

ユウキ

もううんざりだよ！

ユウキ

子供の頃は、お母さんが感謝してくれるのが嬉しかった

ユウキ

だけど段々それもなくなって、私が庇うのが当たり前みたいな態度になっていったよね

マサミ

何よ、全部私が悪いっていうの？

マサミ

誰のために離婚しないで、長年耐えてやってると思ってるの！

マサミ

全部あなたの為なのに、あなたは感謝するどころか、

マサミ

お父さんみたいに私を責めるのね！酷いわよ！

マサミ

あなたさえいなければとっくに離婚していた

マサミ

私はずっとあなたのために犠牲になってるのよ！

マサミ

私を庇って代わりにちょっと殴られるのくらい、

マサミ

当然の恩返しだわ！

ユウキ

何よそれ…私のせいだっていうの？

ユウキ

私のため私のためって言うけど、結局は自分が一番可愛いんだね

ユウキ

もういいよ。私、児童相談所に話して、施設に入るから

マサミ

え？

マサミ

ちょっと何言ってるのよ

マサミ

受験もあるっていうのに、施設に入るって正気！？

マサミ

どんなに受験に支障が出るかわかってるの！？

ユウキ

わかってるよ。それでも、今の生活よりはましだから

マサミ

そんな、考え直しなさい！

マサミ

今は頭に血が上ってるだけよ。こんなことで施設だなんて、

マサミ

きっと断られるに決まってるわ

ユウキ

話してみなきゃわからないじゃない

ユウキ

モラハラ父の暴力から守ってくれないどころか、

ユウキ

差し出そうとしてくる母親…これって虐待だよね

マサミ

ふざけないで！世間体はどうなるのよ！

マサミ

施設に行くなんて、私もお父さんも許さないからね！！

マサミ

あんたのためなんだからね！！

ユウキ

…わかった

～一年後～

マサミ

ユウキ、本当に独り暮らしする気？

ユウキ

うん。大学の寮で暮らすよ

ユウキ

学費とかは自分で稼ぐから、心配しないで

ユウキ

お父さんとお母さんには何も期待してないよ

マサミ

ねぇ、私も連れて行ってくれない？

ユウキ

は？

マサミ

ほら、一人暮らしって何かと大変でしょ

マサミ

お母さんと一緒の方がいいわよね

ユウキ

大学の寮だよ？親なんて連れて行くわけないじゃん。ご心配なく

マサミ

だったら、寮じゃなくてお母さんと二人でアパート暮らししましょう！

ユウキ

しないよ。その方が大変そうだし

マサミ

そんな…お母さんを置いて行くの！？

マサミ

私を一人にする気！？

ユウキ

一人になったら何が困るの？

マサミ

困るに決まってるじゃない！

マサミ

お父さんに私が殴られても、誰も助けてくれないし庇ってくれないのよ！

ユウキ

私がいるから離婚できないって、お母さん言ってたよね

ユウキ

私がいなくなるんだから、自由に離婚でもなんでもすればいいじゃない

マサミ

できるわけないでしょ！

マサミ

私、長年専業主婦なのよ！

マサミ

それなのに離婚なんてしたら、どう生活していけばいいわけ？世間体だって悪いわよ！

ユウキ

何よそれ…

ユウキ

私のためとか言って、本当の理由はそれ？

ユウキ

結局は自分の為だったんだね

マサミ

うるさい！そもそもあんたがいるから専業主婦になったのに！！

マサミ

全部あんたのせいよ！それなのに、私を見捨てるの！？

マサミ

親不孝者！！やっぱりあんたなんか産むんじゃなかったわ！

ユウキ

結局それか。いつまでも自分を守ってくれない私は要らないんだね

ユウキ

私にしがみつく暇があったら、DV相談や離婚について調べたら？

ユウキ

今の世の中、いくらだって相談窓口や離婚に強い弁護士は出てくるわよ

ユウキ

慰謝料だって取れるのに

マサミ

そんなの、一人じゃできないわよ！

マサミ

お願い、ユウキ！お母さんのために離婚する方法を教えて！

ユウキ

嫌だよ。大人なんだから一人でやって

マサミ

なんでよ！お母さんはただ、アドバイスが欲しいだけなのに！

マサミ

ユウキだって早く離婚してほしいでしょ！

ユウキ

お母さんにアドバイスしたところで、どうせまた私に甘え切って、

ユウキ

デモデモダッテするに決まってるじゃん

ユウキ

それで都合が悪くなれば、お父さんに対して全部私のせいにするよね

ユウキ

ユウキに言われたから離婚しようとしたんだ、って

マサミ

何言ってるの。私そんなことしないわよ！

ユウキ

知らないと思ってるの？

ユウキ

お父さんと二人で、私の悪口言ってたこと

マサミ

へ？

ユウキ

お父さんが『子供を味方につけていい気になるな！』ってお母さんに怒って、

ユウキ

それに対してお母さんが

ユウキ

『違うのよ。あの子が勝手に庇ってるの。私だって迷惑してるのよ』

ユウキ

『大体あの子は勉強でも困ったものでね…』とか悪口言ってるの、

ユウキ

私前に聞いちゃったんだから

ユウキ

それからは二人で私の悪口

ユウキ

それまで、お母さんのためにって思いながら庇ってきたのに、

ユウキ

こんなこと言われるなんてね…

ユウキ

私が助けるのは迷惑なんでしょ

ユウキ

だったら、もう一切私はお母さんを助けないよ

マサミ

ち、違うの！

マサミ

あれは、お父さんの機嫌を損ねて殴られないために、仕方なく言ったことなの！

マサミ

本心じゃないのよ！！本当はユウキが庇ってくれて、凄く助かっていたの！

ユウキ

今更何を言われてもね

ユウキ

お母さんっていつもそう。お父さんのせいにして、私のせいにして、

ユウキ

自分ってものがないの？

ユウキ

もううんざりだよ。じゃあね、一人で頑張って

ユウキ

縁が切れた後、お母さんがお父さんと離婚しようがしまいがどうでもいいから

～一年後～

マサミ

ユウキ、久しぶりね。どう？元気にしてる？

ユウキ

何の用？お母さん

マサミ

あのね、お母さんお父さんと別れたのよ

ユウキ

ふーん

マサミ

だから、二人で会いましょう

マサミ

久しぶりに、親子水入らずで

ユウキ

私、お母さんとは縁を切ったつもりなんだけど

マサミ

へ？

ユウキ

言ったよね。お父さんと離婚しようがしまいがどうでもいいって

マサミ

何それ！離婚しろって散々言うからしたのに！

ユウキ

もっと早くにしてほしかったよ

マサミ

何よ！あんたが出て行った後、私がどれだけ苦労したと思ってるのよ！！

ユウキ

大変だねぇ。代わりにお父さんに差し出せる私がいなくなったんだもの

ユウキ

でもちゃんと離婚できたんじゃん。私がいなくても

ユウキ

だったら私と会わなくても別に問題ないよね

マサミ

それが、相談に乗ってほしいことがあるのよ…

マサミ

お父さんと別れてから、パートを掛け持ちして

マサミ

生活費稼いでるんだけど、正直苦しくて…

ユウキ

へーそう。私だって自力で生活費と学費稼いでるけどね

マサミ

凄いじゃない！だったら、助けてくれない！？

ユウキ

は？助けるわけないじゃん。私だって貧乏学生でカツカツなんだから

ユウキ

というか、ＤＶの慰謝料とかもらわなかったの？

マサミ

それが、慰謝料のもらい方とかよくわからなくて、

マサミ

とにかく早く離婚したかったのよ。仕方ないじゃない

ユウキ

呆れた。自業自得じゃん

マサミ

うるさい！私ずっとつらい思いしてるのに、まだ責めるの！？

ユウキ

はいはい、それで、相談ってそれだけ？

マサミ

実はね、お父さんがあれからしつこいのよ

マサミ

私に毎日、もう二度と殴ったりしない、お前を大切にするから許してくれ、愛してるって、

マサミ

ＬＩＮＥや手紙を送ってくれるの

ユウキ

だったら、弁護士に頼んで接近禁止命令出してもらったら？

マサミ

それが、一人暮らしが思いの外大変で、

マサミ

お父さんが本当にもうしないでくれるなら、

マサミ

やり直してもいいかもしれない…って、悩んでるの

ユウキ

はぁ！？

マサミ

ねぇ、私どうしたらいいの！？

ユウキ

知らないよ

マサミ

何よその冷たい返事！！

ユウキ

個人的にはお父さんはまた殴ると思うし、復縁はお勧めしないけど

マサミ

で、でも本当に反省してるみたいなの。寂しいし…

マサミ

再婚しなかったら、私の生活を助けてくれるの！？

ユウキ

なんでそうなるのよ。好きにすればいいんじゃない？再婚しようがしまいが

ユウキ

私が何を言おうと、絶対また私のせいにするでしょ

ユウキ

その代わり、私にはもう二度と関わらないでね

ユウキ

お父さんにまたDVされても、私には関係ないことだから

～後日談～

ユウキ

その後、結局母は父に押されるままに再婚し、

ユウキ

また元通りＤＶを受けるようになったそうです

ユウキ

母からは『あんたが止めてくれないから！』『お願い助けて！』と

ユウキ

恨み言と助けを求めるLINEが届きましたが、

ユウキ

『だから言ったのに』とも言いたくなかったので黙ってブロックしました

ユウキ

それから両親はまた離婚したらしく、

ユウキ

今度は父から『母さんを匿ってるんだろう！居場所を教えろ！』とLINEが届きましたが、

ユウキ

『知らないよ』とだけ変身してこちらもブロック

ユウキ

噂ですが、その後父は酒に溺れ、荒れ放題の生活を送っているそうです

ユウキ

私は相変わらずカツカツの暮らしですが、

ユウキ

友人達に助けられ、それなりに楽しい大学生活を送っています

ユウキ

何より、モラハラや暴力のない日常は天国のようです

ユウキ

最近気になる人が出来ましたが、父のような人間を選ばないように気をつけたいです

ユウキ

そして、将来は子供のためにも、母のような人間にはならないようにしたいです

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結城　真矢

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