ラブソング

音楽というものは、 その名の通り、“音を楽しむ”ものだ。

楽器の音色、誰かの歌声によって

たった1つの音で雰囲気が変わる

俺は幼少期、それが楽しかった。

俺は小さい頃、歌う事はいまいち苦手だった。

そもそも音楽とは「口から出た声」を意味する 会意文字とされている。

俺には、持っていない、持てない物だ

でも、ピアノは違った。

俺の出せない音を出してくれる、 俺が求める音を押すだけで鳴らしてくれる

発育が整ってない子供には 明るい楽しい音を奏で、

苦しんでる人には、 傍に寄り添ってくれるような曲を、

それだけで、言葉で伝えなくても、

みんなに、伝わってくれる。

紫昏 いるまさん、お願いします＿＿＿

＿＿＿♩♩♩、

『ラ・カンパネラ』

ニコロ・パガニーニのヴァイオリン協奏曲 第2番第3楽章

ニコロ・パガニーニのヴァイオリンの演奏を聴き、 大きな衝撃を受けたリストが自らの技術を磨き、 作り上げた最高難易度の曲

＿＿＿♬♪♪＿！！

ｻﾞﾜｻﾞﾜ…

綺麗…！

これが、才能ってものか…

＿♬＿＿……

👏🏻(ﾊﾟﾁﾊﾟﾁﾊﾟﾁﾊﾟﾁﾊﾟﾁﾊﾟﾁﾊﾟﾁﾊﾟﾁﾊﾟﾁﾊﾟﾁ＿＿＿

紫昏 いるま 高校生にして日本で有名なピアニストだ。

俺は、絵で目に見える景色や何かを 表現する事もできない。

スポーツもできなくはないが、 平均より少し高いだけで 誰かを感動させ応援されるような人でもない。

だから、音楽を選んだ

誰かに届けられるから、笑顔になってくれるから

ｺﾂ、ｺﾂ、ｺﾂ…

俺は親が苦手だ

今回の戯曲も親が決めたし、 頑張って努力しても褒められた事は1度もない

全て塗り潰されてる、縛られてる感覚がする

俺の、羽を伸ばせる場所が欲しい

ﾌﾟﾁ…ﾌﾟﾁ……

ｼｭﾙ……

いつも家に出てから シャツの第1ボタンを開け、ネクタイを緩める

普段でも有名だからっていう そんなレッテルを貼りたくない

そんな俺が唯一、自分でいられる場所

親に練習してくると嘘を言ってまで、 行きたいって思える場所

ﾀｯﾀｯﾀｯ……

東階段の3階の1番奥の音楽準備室

誰からの誘いなんか断って来たから、 友達はいない

てか、どうせ俺が有名人だから 後ろから着いてこようとしてる奴らしかいない

そんな奴なんか、俺には要らない

自分のやりたい事しか頭にないから

それでいい。

ｶﾞﾗﾗﾗ……

俺は昔の人が書いた戯曲なんてどうでもいい

母さんから扱かれて憶えたくらいだ

無機質で、俺に合っていない。

ﾀﾌﾟﾀﾌﾟ……

この時にしか触れないスマホも格別で

音楽の再生リストを見れば 最近の曲も、ボカロも沢山出てくる

＿＿＿＿♪♪！！

昨日より軽やかに動く指に分からせられる

何にも縛られないこの時間が安心する事も、

音楽が楽しいって事も

＿＿＿＿♬

＿＿＿＿♪♪＿！！

っ…＿＿＿！

♬♬＿＿＿！！！

＿＿＿＿♪♪……

良かった

彼には、伝わってくれた

ﾀｯﾀｯﾀｯ…！！

＿＿＿♬♬！！

＿＿＿♩♪！

＿＿＿♬♩♬＿＿！

すごいね…あれ…！

指どうなってんだ…！？

＿＿＿んー、全体的にぶれてねぇか？

全ての人が、俺を好きにならなくてもいい

芸術も、料理も一緒

人の好き嫌いはそれぞれだ

＿＿＿♬♬♩……！

俺もこの曲は苦手だ

でも、100人中80人でも90人でも

好きだって思えてくれる人達がいんなら

それは、凄く良い物だ

何も置き換えなくてもいい、 頑張った自分が正しいものだ

これが、俺の好きな音楽であり、

これが、俺なんだ。

👏🏻(ﾊﾟﾁﾊﾟﾁﾊﾟﾁﾊﾟﾁﾊﾟﾁﾊﾟﾁﾊﾟﾁﾊﾟﾁ＿＿＿

そんな2人のお話のはじまり＿＿＿