図書館の片隅に置いてあった、革張りの分厚い本。
ショウは、引き寄せられるようにその本を手に取った。
黄ばんでボロボロになったページを、ぱらりぱらりとめくってみる。
ショウ
ショウ
しかし、文字を読むことはできなかったが
絵と図で大体の内容が分かりそうだ。
魔法使いのようなローブを着た男が、大きな紙に複雑な図形を描く場面が目にとまった。
次のページには、その図形がアップで記載されていた。
大きな円の中に複雑な文様が緻密に描き込まれたその図形は、まるでゲームや漫画に出てくる「魔法陣」のようだった。
ショウ
ショウ
ショウ
次のページをめくると、魔法陣から黒い悪魔が飛び出して、人間の前に立っている様子が描かれている。
ショウ
そんなバカなこと、ある訳…w
そう思いながらも、ショウの胸は高鳴っていく。
さらにページをめくっていくと、人間が悪魔に命令を下しているシーンや、悪魔がその命令を聞いて人間の望みを叶えてるシーン
悪魔が消えていなくなるシーンなどが書かれていた。
最後のシーンは、その人間が老いて死の床に伏している場面であり、悪魔が人間の魂をつかみとって自分の口の中に放り込む様子が描かれていた。
ショウ
ショウ
ショウ
ショウ
ショウ
もし僕に友達がおったら、この本のこと教えてやったのに。
ショウには’’友達’’と呼べるような存在は1人もいなかった。
ショウ
ショウ
この本が置いてあったのは、図書館のリサイクルコーナーだ。
そこは、処分予定の古い本を市民に無料で提供してくれる場所だ。
だから、ここにある本は自由に持ち帰ることができる。
ショウ
ショウ
ショウ
そんなことを考えながら、ショウは本を抱えて帰宅した。
ほんまに悪魔出てきたんやけど。
ホトケ
画用紙に描いた魔法陣の中から悪魔が飛び出して来た瞬間、ショウは驚いて悲鳴を上げた。
遡ること数分前……
ここは、ショウの住むアパートの一室。
自分の部屋に帰ってくるや、ショウは本が読めないながらも本に描かれた図の通りに、画用紙に魔法陣を描いてみた
そしたらほんとに悪魔が出てきた
ショウ
ショウは声を裏返らせながら、手を伸ばして悪魔のツノに触ろうとした。
ホトケ
悪魔は後ろに飛びすさり、威嚇するように牙をむいた。
ホトケ
ホトケ
勉強机の上に立ち、偉そうにふんぞり返っている悪魔。
かなり小さくて、身長は1mぐらい
水色と紫のグラデーションの髪
尖った耳
しっぽの先は矢じりのようになっていて、手には三つ又の槍を持っている。
ショウ
ショウ
ホトケ
ホトケ
悪魔は怒って、キーキーと怒鳴っている。
もしかすると、自分が描いた魔法陣が雑なものだったから、こんなに雑な悪魔が召喚されてしまったのだろうか。
この悪魔、「怖い」というより、むしろ、「愛嬌がある」ように見えるのだ。
ショウ
ショウ
ところが悪魔は、いっこうに口を閉じようとしない。
ショウが、自分よりも近所のおばさんのことを恐れていることに、腹が立ったらしい。
ショウ
思わず声を張り上げた。
その直後インターホンがなった。
ショウ
<ーーー〜〜〜〜!!!
〜〜〜〜💦💦>
<〜〜〜!
〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!!💦💦>
ショウ
ショウ
ホトケ
ホトケ
ホトケ
ホトケ
悪魔に……いむくんにずいと迫られて、ショウは思わず1歩退いた。
そして、考え込むような顔になり、やがておずおずと答えた。
ショウ
ショウ
ショウ
ホトケ
ホトケ
ホトケ
不敵に笑う悪魔のことを、ショウは、じっと見つめていた。
ホトケ
ホトケ
悪魔は確信していた。
ホトケ
悪魔は不気味な声で笑った。
しかし、ショウは1週間たっても願いを口にしなかった。
ホトケ
ショウの部屋で、苛立ちながら悪魔が怒鳴った。
しかしどれだけ怒られても、ショウは困り顔で薄く微笑むだけで、決して首を縦には振らない。
ショウ
その口調からも、悪魔に対する怖れがとうになくなっているのは間違えない。
しかし、悪魔自身は、そのことを認めたくはなかった。
ホトケ
ホトケ
悪魔に言われて、ショウは身をこわばらせた。
ショウ
ホトケ
ホトケ
ホトケ
ショウは、あからさまに不快そうな顔をする。
ショウ
ショウ
ホトケ
ショウ
その後悪魔がいくら言っても、ショウは絶対に願いをぐらい口に出さなかった
ホトケ
ホトケ
ホトケ
ホトケ
ショウ
ショウ
次の日から、悪魔は常にショウの近くに付きまとい続けた。
学校も、家も、風呂も、トイレも、いついかなるときもだ。
だが、朝から晩まで付きまとわれても、ショウは「契約」をしなかった。
ショウの臆病っぷりは、悪魔の想像を超えるものだった。
ホトケ
ホトケ
とうとう悪魔が、本音をもらした。
ホトケ
ホトケ
ホトケ
ホトケ
困ったような笑顔のまま黙り込んでいるショウを見て、悪魔はわめき散らかした。
騒ぐ悪魔を見つめながら、ショウは笑顔を浮かべていた。
ショウ
ショウには、一つだけ願いがあった。
悪魔を呼び出し、願いごとを叶えてもらおうとしたのも、それが理由だ。
━━ペットを飼いたい。
それがショウの願いだった。
学校で友達ができなかったショウは、寂しさを紛らわすために、犬か猫を飼いたいと思っていた。
しかし、このアパートはペット禁止。
そんなときに、愛嬌のある姿をした悪魔が現れたのだ。
フンの始末もいらないし、いつでもそばにいてくれる。
しかも人間の言葉を理解してくれて、自由に会話も楽しめる。
ちょっとうるさいと感じることもあるが、こんな、ペット、他にいるはずがない。
ショウ
そう思うと、ショウの顔からは笑みがこぼれてくる。
ショウ
ホトケ
ショウにしか聞こえない大きなほえ声で、可愛いペットはいつまでも鳴き続けるのだった。
コメント
1件
あら面白い♡(((((((((((