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第1話 - あ

2023年05月26日

#恋愛

結城真矢

タクヤ

おい。

キムラ

はい？どなたですか？

タクヤ

俺だよ俺。

キムラ

俺・・・？

タクヤ

バイト先でいつも一緒だろ。タクヤだよ。

キムラ

タクヤさん・・・？

キムラ

ああ！わかりました！お疲れ様です。

キムラ

どうかしましたか？ていうか私の連絡先知ってましたっけ？

タクヤ

グループラインから追加したんだよ。悪い？

キムラ

悪くはないですが・・・。

タクヤ

そんなこといちいち気にするなよ。

タクヤ

そんでさ。今週の日曜日、バイト入ってないだろ？

タクヤ

暇？

キムラ

暇ではないですけど、何かありましたか？

タクヤ

なんだよ、暇じゃねーのかよ。

タクヤ

ごはん一緒に食べに行こうかと思ってさ。

キムラ

そうなんですね！メンバーって誰誘ってますか？

タクヤ

メンバー？・・・俺とお前。以上。

キムラ

え？まだ二人しか決まってないんですか？

タクヤ

いやいや、だって俺らの仲じゃん？

タクヤ

別に二人でもいいだろ。

キムラ

私たちってそんなに二人で話すような仲でしたっけ？(笑)

タクヤ

なにいってんだ？当たり前だろ。

キムラ

いやいやいや、当たり前なんですか！？(笑)

キムラ

二人でおしゃべりした記憶があんまりないのですが・・・。

タクヤ

だってお前、俺の事好きだろ？

キムラ

え？なんでですか？

タクヤ

だって、俺の事めちゃ見てくるしさ。

タクヤ

いつも俺に愛想振りまいてるじゃん。

キムラ

え？いつも私、タクヤさんの事見てますか？

タクヤ

なんだよ。自分でも気づいてないのかよ。

タクヤ

ずっと俺の事見てるといっても過言ではないね。

タクヤ

俺、穴あくんじゃないかと思ってたし。

キムラ

そうですかね・・・？

タクヤ

そうだよ。自覚なしで俺の事好きなんて、相当だな。

タクヤ

だから、俺とお前、両思いだから。

キムラ

・・・ん？

タクヤ

だから、俺、お前の事好きなんだよね。

タクヤ

だからもう付き合ってるようなもんじゃん。

タクヤ

今日も、バイトの途中で付き合ってっていったら、はいって言ってただろ？

キムラ

え、あれみんなに向けて今度バイトの懇親会付き合ってって言ってましたよね？

タクヤ

まあ、そうともいうな。けど、俺モテモテだから何人もの女が俺と付き合うって言ってくれたし。

タクヤ

そんなモテモテの俺と付き合えるならよくない？

キムラ

いや、それってみんな、懇親会に行くよってことなのではないでしょうか・・・？

タクヤ

は？そんなことないに決まってるだろ。

タクヤ

だって、俺だぜ？

タクヤ

こんなにかっこよくて性格もいい俺が付き合ってって言ったらそりゃみんなうなずくよな。

キムラ

そうでしょうか・・・。

タクヤ

そんなかで、一番タイプなお前と付き合おうかと思ってさ。

タクヤ

よかったな。俺に選ばれて。

タクヤ

お前、スタイルも俺の好みだし、顔もまあまあかわいいじゃん。

タクヤ

だからまあ、お前とだったら付き合ってもいいかなって思って。

キムラ

そうなんですか・・・。

キムラ

あの、私、そういう意味ではいっていったわけでは無いのですが・・・。

タクヤ

は？どういうこと？

キムラ

まさか、タクヤさんがそういうつもりで発言してたとはおもってなくて。

キムラ

恋人として付き合うとかはちょっとできません。

タクヤ

なに？今はやりのツンデレ？

タクヤ

お前の意見なんか聞いてねーよ。

タクヤ

俺が付き合うって言ったら、付き合うんだよ。

キムラ

いやいや・・・。さすがに私にも拒否権はありますよ？

タクヤ

拒否権？そんなものねーよ。

タクヤ

お前はもう俺のものだから。俺に従っておけばいいんだよ。

キムラ

いやいや、そんなこと言われましても・・・。

キムラ

嫌なので、やめてもらえませんか？

タクヤ

いやいや、俺、バイトの先輩だぜ？

タクヤ

先輩のいうことは絶対って習わなかった？

キムラ

そんな、横暴な・・・。

キムラ

店長に言いますよ？

タクヤ

店長？そんなの役にたたねーよ。

タクヤ

俺の方が歴が長いんだから、俺の方が信頼されてるに決まってるし。

タクヤ

でもあいつ、むかつくんだよな。

タクヤ

ちょっと顔がいいからって俺と同じくらいもてやがって。

タクヤ

性格よさそうにしてるけど、絶対腹黒いぜ、あいつ。(笑)

キムラ

なんでそんな風に思うんですか？何か嫌なことありましたか？

タクヤ

いやー、だってこんなにいけてる俺というものがありながら、ほかの女どもが

タクヤ

店長の事もキャーキャー言ってるのもむかつくしな。

タクヤ

俺はあいつとは違うもて方してるから、キャーキャーは言われないけど

タクヤ

たまには言われてみたいものだよな(笑)

タクヤ

お前、言ってみるか？

キムラ

私、キャーキャー言うようなキャラじゃないので。

キムラ

遠慮しておきます。

タクヤ

なんだよつまんねーな(笑)

タクヤ

まあ、店長に言ったところで何も変わんねーよ。

タクヤ

なんなら、俺、あいつより権力あるから。(笑)

キムラ

そうなんですか？

タクヤ

当たり前だろ。あんなさえない男よりも俺の方が人望もあるし。

タクヤ

権力もある。な？俺の方がいいだろ？

キムラ

そうですかね。店長だっていい人ですよ。

タクヤ

うるさいなー。お前は黙って俺の事好きでいればいいんだよ。

タクヤ

だから、今週の日曜日は俺とデートに行くこと。待ち合わせ場所はキム駅の改札前だからな。

タクヤ

絶対に来いよ。１１時な。俺、もう寝るから。おやすみ。

キムラ

ちょ、行きませんからね！！

～日曜日～

タクヤ

おい！今日はなんで来なかったんだ！！

キムラ

私、行くなんて言っていません！

タクヤ

お前は俺の女だろ！？黙っていうこと聞けよ！！！

タクヤ

女は男に従うのが一般常識だろうが！！！

キムラ

そんな常識、ありませんよ！今は昭和でも戦国時代でもありませんよ！？

タクヤ

なに！？俺の事馬鹿にしてるのか？

キムラ

してません！被害妄想はやめてください！

タクヤ

お前のために、今日高級レストランを予約しちゃったんだぞ！

タクヤ

なのに来ないからいけなかったじゃないか！

タクヤ

キャンセル料だけとられたし、おまえのせいだ！お前が払え！！

キムラ

私は約束してないのに、勝手に予約して勝手にキャンセル料とられてるだけじゃないですか！

タクヤ

うるさいうるさい！

タクヤ

お前に渡す予定だったこのプレゼントも弁償しろ！

キムラ

何渡すつもりだったんですか？

タクヤ

首輪と指輪だよ！悪いかよ！

タクヤ

俺の女になるならそのくらい必要だろうが！

タクヤ

これも弁償しろ！全部で5万だ！！！

タクヤ

キャンセル料も併せて１０万よこせ！

キムラ

なんでですか！勝手に色々しておいて、それはないと思います！

タクヤ

うるさいうるさい！お前、払わなかったら詐欺罪で訴えるぞ！！

キムラ

どうぞ、私は悪くないので訴えてください！

タクヤ

もう怒った！

タクヤ

今からお前の家に行ってやるからな！！

タクヤ

行って、金目の物をもらうか、お金を回収するまで絶対に帰らないからな！

タクヤ

まあ、仲直りしてそのままお前の部屋で過ごしてもいいけど、まずはお前の謝罪からだからな！

キムラ

家！？なんで私の家知ってるんですか？

タクヤ

当り前じゃないか。あの日からお前、一緒に帰ってるじゃないか。

タクヤ

ちゃんと毎日送り届けてるだろ。

キムラ

ええ！？ストーカーですか！？

タクヤ

ストーカーじゃないだろ。まあ、あわよくば襲ってやろうかとも考えたけどな。

タクヤ

外でも楽しめそうだしな。

キムラ

え・・・。

タクヤ

今から行くから、覚悟しておけよ？

キムラ

来てもいいですけど、店長も家にいますよ？

タクヤ

・・・へ？

キムラ

実は、私の義理の兄、店長なんですよね。

タクヤ

へ？ほんと？

キムラ

うちの家、姉夫婦と一緒にすんでるんですよ。

キムラ

なので、義理の兄である店長は家にいます。

キムラ

なので、突撃してきたり訴えられても全部知っているので大丈夫かと思います・・・。

タクヤ

まじか・・・。

キムラ

ちなみに、店長の悪口もちゃんと本人に伝わってますよ。

キムラ

ふーん、そういう風に僕の事思ってたんだね。だからあんなにいつも突っかかってくるんだ。

キムラ

って言ってましたよ。

タクヤ

おい、余計なこと言うな！！

キムラ

ちなみに店長はいい人ぶってるのではなく、いつでもいい人ですよ。

キムラ

あなたのような人をずっと雇ってくれていますしね。

キムラ

うち以外で働くのは難しいんじゃないでしょうか？

キムラ

まあ、そんな店長の優しさにも、もう触れることはできないんですね。

キムラ

かわいそうに。

タクヤ

へ？なんで？どういうこと？

キムラ

もう、退職してもらっても大丈夫ですとのことです。

タクヤ

そ、そんなこと言うなよ。俺がいないと回らないだろ？

キムラ

いえ、いままでは色々と大目に見て、タクヤさんがミスしてもみんながフォローに入れるように

キムラ

店長が気を使って配置していたんですが。

キムラ

そんなことにも気が付かなかったんですね。

キムラ

しかも、タクヤさん、うちのバイト辞めたらどうやって生きていくんですか？

キムラ

ここを辞めたらもう生きていけないって店長に泣きながら話をしていたらしいじゃないですか。(笑)

キムラ

だから店長はそれはかわいそうだと思って雇ってあげていたのに・・・。

キムラ

恩をあだで返しちゃったらもうだめですよね。

キムラ

それには気づいていたらしいのですが、大目にみてあげていたのに、

キムラ

今度は私に脅しをかけて付き合うだのなんだのと・・・・。

キムラ

うちのバイト先に女の子いなかったり、すぐに辞めてっちゃう原因って

キムラ

タクヤさんに言い寄られたりしてるからかもしれませんね。

タクヤ

そ、そんなことないし！言いがかりはやめろよな！

タクヤ

俺はちゃんと俺の事を好きなのかなって女にしか手をだしていないぞ？

キムラ

そこからまず間違っているのかもしれませんね。

キムラ

別にみてるからと言って好きという感情が生まれてるわけではありませんし、

キムラ

何なら別にみんな、タクヤさんの事見てませんよ。

キムラ

タクヤさんの先にいる店長を見ているんだと思います。イケメンですし。

タクヤ

は？店長より、俺の方がイケメンだろ？

キムラ

そんなことは絶対にないですよ！

キムラ

店長は３０代。顔もかっこいいし、性格もいい。

キムラ

対してタクヤさんは４０代。バイト。メタボ。

キムラ

そりゃ、店長のほうが人気ありますよね。

タクヤ

そうなのか？

キムラ

そうですよ。

キムラ

もし店長に勝ちたかったらまず身なりからきちんとしてくださいね。

タクヤ

そんなあ・・・。

キムラ

ちなみに、私に送ってた口調なんですけど。

キムラ

あれって、前、ほかのバイトの子たちがこう言うともてるよって話していたのを

キムラ

パクったんですよね？

キムラ

あれって、好きな人からされるか、イケメンからされるからうれしいわけで。

キムラ

正直、全然好きでもない、むしろ嫌いなおじさんに言われても。

キムラ

ただのうざい人としか思いませんけどね。

タクヤ

え！？これって別にもてるわけじゃないのかよ・・・。

タクヤ

なあ、俺がクビって嘘だよな？

タクヤ

店長に謝るからさ・・・。

タクヤ

首だけは勘弁してください・・・。

キムラ

しりませ～ん！

キムラ

あとは、弁護士をとおしてくださ～い！

タクヤ

そんなあ！助けてくれ～。

～後日談～

キムラ

こうしてクビになってしまったタクヤは、他の仕事に就こうとするも全部撃沈。

キムラ

なので、今はバイトもせずに、ニートをしているそうです。

キムラ

今までためてきたお金もそろそろ底をつきてくるのかも・・・？

キムラ

そしたら、野宿でもするんですかね？(笑)

キムラ

ちなみに私は、義理の兄である店長から、女性の従業員が次々と辞めていってしまうから

キムラ

実際に働いて何が悪いのか教えてほしいと言われてはいっていました。

キムラ

大方、タクヤさんのせいだと思うと報告しておきました。

キムラ

これで、きっといいバイト先に元通りですね。

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結城真矢

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