君の全てを見せて

『君の全てを見せて』 第21話

スタート！！

ピピｯ ﾋﾟﾋﾟﾋﾟﾋﾟｯｯ…

ピﾋﾟﾋﾟｯｯ､……((止

…朝は嫌いだ。 学校に行かなきゃという意識が嫌でも込み上げてくる。

そんなことを考えながら俺は重い腰を上げて支度を始めた。

《__お次は天気予報のお時間です。

《〇〇では空気が湿った状態が続く見込みです。

《傘を持って行くことをお勧めします。

《また､〇〇地方では……

　…トーストと簡単なサラダ､ヨーグルトに適当な果物… 何年も変わってないいつも通りのつまらない朝食と、 1人で座るには大きすぎるダイニングテーブル､ そして､自分の咀嚼音とテレビの音以外何も聞こえない不気味なほど静かな この家。

子供の頃から多忙な両親だった。 大手の食品会社で働いている父と 有名デザイン会社の代表である母… 小学生の頃は3人揃って食事することすら珍しいかったけれど､中学から2人は海外に赴任していて､今は家族に会うことなんて滅多にない。

「一緒に来る？」 そう聞かれたけれど､どうせ海外へ行っても今と変わらず3人で過ごすことなんてないだろうし､日本も海外も同じならこのままここにいたいという気持ちの方が強かったため断った。 流石の両親もそんな俺を心配して､ 多額の生活費を送ってくれたり､ 都内のマンションを借りてくれた。 1人で暮らすには広すぎる部屋を｡

…ここに住んでからはずっと独りだ。 客人が来ることもないし、 両親は一度も帰ってこようとしないし…

だからって寂しいとは思ってない。 俺だってもう高校生だし､ 子供の頃からずっとそうだったから 慣れっこだ。

……だけど……

なんというか…つまんなかった

ｶﾞﾁｬｯｯ((ドア

ｶﾞﾀﾝｯ_ガタンｯ…

俺が通ってる学校は家から少し遠いところにある。 朝7時の電車に乗って約30分。 そこから歩いて約20分で着く。

最初は少し面倒に思ってたけど、 それくらい地元と離れている高校行きたかったため､ 今ではなんとも思わない。

…"学校"… その単語が頭にチラつくだけで ため息が出てくる。

昔から学校というものが大嫌いだった｡

勉強がめんどくさいとかそういう理由じゃなくて､ 同年代の女子に会うのが嫌で仕方なかったからだ。 昔からこの容姿のせいでされたくもない期待をされて､ その度に幻滅されないよう自分を取り繕うのが面倒でしかなかった。

"かっこいい"とか､ "王子様みたい"とか…… みんな俺のことを外見でしか見てなくて……､ 異性から好意を寄せられたことはたくさんあるし､なんなら告白なんて何十回と経験してるけど､ その人たちも全員俺の見た目が好きっていうだけで､内面は見てない。

「イケメンで羨ましい」 「もともと整ってるやつはいいよな」 クラスの男子からそうよく言われるけれど､ あんな人たちから好かれてもちっとも嬉しくないし､ どちらかというと面倒だし…､ 俺からしたら外見だけじゃなくて内面も好きになってもらえるクラスの男子が羨ましかった。

そんなんだから学校に行くのがいつも億劫だった。

…そう思ってたけど…

最近は､ 学校に行くのが少し楽しみになった｡

この人が最近の俺の楽しみである、 黒澤うり先輩だ。

1個先輩で、俺の彼女。 同じ男だなんて信じられないほど 可愛くて愛おしい人。

初めて､俺が好きだと思えた人。

初めて 外見だけじゃなくて、 俺の中身も見てくれた人。

俺が好きっていうたびに肩を震わせて、 顔が赤くなってしまう先輩が､ 可愛くて可愛くて仕方がない。

音楽が大好きで ピアノがとても上手なところも、 運動神経バツグンだけど、 勉強は微妙なところも、 いつもは頼もしくて明るい人だけど、 俺の目の前だと照れ屋でツンデレな人になるところも、

全部愛おしく思ってしまう。

俺の先輩は、そんな、 笑顔が似合う太陽みたいな人だ。

…だけど…

少し前から､ 何か思い詰めたような表情をしている時がある。

多分､ 夜2人で電話したあの日からだ。

直接聞けばいいって？ それができるならとっくにしてるわ！

ずっとって訳じゃぁなくて、 2人で話している時とか､一緒に帰っている時とか… 突然ﾎﾞｰｯと遠い方を見始めて、何か思い詰めたような顔をする。

無理やり先輩から聞くなんてことはしたくないし この前それで先輩を傷つけたから､ できるならその選択は取りたくない。

昼休み((飛ばします

2年1組(うりのクラス)

ﾋﾟｺﾝｯ_ピｺﾝｯｯ