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悲鳴は、校舎の廊下を引き裂くように響いた。
最初に走り出したのは赤ちゃんだった。
無鉄砲で、考えるより先に体が動く性格が、こんな時だけは頼もしい。
Mr.赤ちゃん
銀さんとラッシュが後に続き、他の生徒達も恐る恐る廊下に出る。
カスミ
カスミは震える声でそう叫んでいた。
僕は、最後に教室を出た。
ーー足が重い。
床に張り付いた影が、引き留めているようだった。
逃げることと、向かわないことは違う。
それでも、足は前に進まなかった。
旧校舎は、雨に沈んでいた。
改修工事の途中で放置された廊下は、薄暗く、湿った匂いが充満している。
立ち入り禁止のテープが無残に破られ、床には濡れた足跡が点々と繋いでいた。
Mr.赤ちゃん
赤ちゃんが立ち止まる。
空き教室の扉は、半開きだった。
その隙間から、冷たい空気が流れ出している。
まるで、教室そのものが息をしているようだった。
銀さんが、そっと扉を押す。
きい、と嫌な音がして、視界が開けた。
そこにあったのはーー。
倒れた机。
散乱したノート。
床に広がる、黒ずんだ赤。
そして、動かない生徒。
クラスの男子生徒だった。
仰向けに倒れ、目を見開いたまま、天井を見つめている。
ラッシュ
ラッシュが呟いた。
Mr.マネー
Mr.バナナ
Mr.ブラック
Mr.銀さん
Mr.ブラック
Mr.ブラック
Mr.ブルー
Mr.赤ちゃん
Mr.すまない
僕の喉が、ひくりと鳴った。
死は、突然訪れるものではない。
ずっとそこにあって、気づかれずに立っているだけだ。
Mr.赤ちゃん
赤ちゃんが倒れている男子生徒に触れようとした。
Mr.ブラック
ブラックの声が、珍しく大きく響いた。
Mr.ブラック
Mr.ブラック
理屈は正しい。
だが、その声は恐怖で裏返っていた。
バナナは静かに周囲を見回している。
血の量、窓の位置、床の濡れ具合。
その視線は、冷静すぎて、逆に不気味だった。
Mr.レッド
アレスは、教室の隅に立ったまま、表情を変えない。
まるで、予測していたかのように。
やがて教師達が駆けつけ、騒然となった。
救急車のサイレンが、雨の中で溶けていく。
結論は、転倒事故。
濡れた床で足を滑らせ、頭を強く打った。
そう処理された。
Mr.すまない
僕は、心の中で呟いた。
一年前と、同じだ。
同じ雨。同じ校舎。同じ"事故"という言葉。
真実は、いつも都合のいい形に折りたたまれている。