橙紫

瓜二つ

橙紫

おかんが向かったのは

泣いている子供の所

その子は

口を大きく開けて

涙を流していた

きっと

声をあげて泣いているのだろう

なんで泣いているの

本当は聴きたいけど

笑顔にしたいけど

それすら分からないから

手話しかないけど

きっと知らないだろうし

聴く勇気なんて自分に無くて

ここはおかんに任せよかな

と、そうする内に

泣いていた子を連れて戻って来るおかん

あ、俺の事知らないのか

俺は橙

男で、子供です

普通

…に、なりたかったです

大体2歳ぐらいの時に、事故で聴力を失いました

補聴器を付けたら聞こえますが、何かある時以外は基本付けていません

友達はいません。誰も手話が分からないからです

みんな、離れちゃいました

でもいいんです

そっちの方が

みんなも、自分も

1番楽なんです

何を言っているのだろう

笑っていて…

あれ、男の子もいる

俯いてる…？

やっぱり何かあったんだ。

隣？

渡されたのは

大嫌いな補聴器

男の子は

人間の作れる1番小さな海を

止まらんばかりに作り出す

何がわからんの？

話していいのか分からんの？

それとも、何が辛いんか分からんの？

なんでここにおるか分からんの？

ここにおるのが怖くて泣いとんの？

おぉ、大きく出たなこいつ

世界が分からんてどういうことやねん

成程

確かに、あった時も思ってたけど

目が他と違かった

何か、障害なんかな

そうやって深く頭を下げた

おとんはええやつやったんやな

じゃあこいつのおかんが問題なんか

なんでここで寝とんねん

あれから‪月日は過ぎてった

中学を卒業し、高校も卒業間際

ただ、なぁ裙の盲目と、俺の難聴は

まだ治っていなかった

俺が補聴器を嫌う理由

何個かあるんやけど

まず、普通に聞くより音がでかいねん

やから、音楽の時間とか、もう地獄

次に間違え

よくイヤホンと間違われて没収されんねん

イヤホンの何倍も高いから、買おうおもても、負担が大きいし

そう軽く買われへんねん

最後は

やっぱりあれも機械やからさ

聴いてる音は本物じゃないんよ

限られた音の中で、いっちゃん似とる音を出してるだけ

やから、少しの違いやとしても

補聴器で聞く音と、実際に聞く音って

やっぱちゃうと思ってんねん

やから補聴器は嫌い

補聴器を見る度嫌になる

だから

早く手術をしたい

お金貯めて、大きい病院で手術するんや

あ、そうそう

なぁ裙はな、明日手術やねん

可能性は低いんやけど、「ちょっとでも可能性があるなら」って

決めたらしいで

そういや、あれからなぁ裙の声聴いとらんな…

でも

次聴くんやったら

「実際」に聞きたいんよな

あれから数日が経った

手術はなんと成功

これは、神様からのプレゼントなのか

はたまた、なぁ裙の気持ちのおかげなのか…

分からんけど

ありがとう

神様

でも

俺の聴力は

いつ戻るん？

今のなぁ裙は違う

あった時とは違う涙や

これが言わゆる

「嬉し涙」

なんやな

目の前で大切な人が泣いている

でもその涙は拭わなくても大丈夫

もう彼に俺は必要ない

彼はもう、ひとりじゃない

すぐ側に大切な人が居るのに

なんで寂しいのだろう

なんでこんなに

みんなを感じないんだろう

怖い

なんか怖い

なんか怖いけど

その気持ちを隠して

言葉を1つ。

なんて言ったかは

自分でも分からないけど

上手く言えたかな。

瓜二つ

でした。

結構無理やり終わる（（