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__王国東方 封じられた神殿跡
そこは、かつて最初の姫が 神に捧げられた場所
石に刻まれた痛みと、 消された記憶の全てが残る場所だった
神を祀るその地に ついにミレイユたちは辿り着いた
そこに現れたのは 神の依代と呼ばれる存在__
無貌の神 アト=ノス
かつて人に失望し、 贄を求める神意そのもの
アト=ノス
アト=ノス
アト=ノス
アト=ノス
神の声は耳ではなく、魂に響く
ミレイユは、剣を構えた
かつてセリルに教わった剣
けれどその刃に宿っていたのは、 ただの技術ではなかった
仲間たちとの記憶__ 彼女自身が歩んだ選択の重み
ミレイユ
ミレイユ
神の咆哮が大地を揺らす
その身体は巨大な黒い影
幾千もの眼と手を持ち、 空さえも飲み込もうとしていた
だがその前に__仲間たちが立つ
セリル
騎士団長として 神の化身に真っ向から立ち向かう
ミレイユを王都から 奪い出した罪も背負って
ラズロ
師であるアレクシスが残した魔術を展開し、神の再生能力を封じる禁呪を発動
エルネスト
神の腕を折る巨大な石槌を振るい、 サフィルの身体の最終補強を行う
ジル
残影と陽動を駆使し、 ミレイユの道を切り開く奇襲の達人
レオン
王国の軍を抑え、ミレイユを異端として 封じようとする枢密院と対立し、剣を抜く
そして__
サフィル
サフィル
彼は、石の身体に最終の命を宿し、 神の核に迫る
だが、神の一撃がサフィルを貫こうとしたその瞬間__
ミレイユの手が、サフィルを包んだ
ミレイユ
サフィル
サフィル
ミレイユは涙を流しながらも、 サフィルと共に神の核へ踏み込む
魂と魂の接触
神の意志と、人の祈りが衝突する瞬間
ミレイユ
ミレイユ
ミレイユの叫びが、神の中枢を砕いた
その衝撃の中、光が走る
神の体は崩れ、巨大な影は空へ溶けていく
ミレイユはサフィルの胸にすがりつき__
彼の手が、静かに彼女の髪をなでた
サフィル
サフィル
サフィルの身体に入っていた魂の光が、 淡く消えようとしていた
神の怒りが鎮まり、 長い旅はついに終わりを告げた
けれどそれは、 すべてが元に戻るという意味ではなかった
サフィルの身体は、 もはや限界に達していた
石の肌に深く走る亀裂
補修しても、崩れていく芯の部分
魂の光が、日ごとに淡くなるのが 誰の目にも明らかだった
ラズロ
ラズロの言葉に、誰も反論できなかった
彼の魂は、あまりにも強く、 あまりにも美しく
石の中に閉じ込めておくには もう相応しくなかったのだ
ミレイユとサフィルは かつて出会ったあの美術館の屋上にいた
風が優しく、二人の髪を揺らす
サフィルは、静かに口を開いた
サフィル
サフィル
サフィル
ミレイユ
ミレイユ
ミレイユ
ミレイユは、震える声で言う
ミレイユ
サフィルは彼女の手をそっと握る
そして、淡く光る涙を指先で拭った
サフィル
サフィル
サフィル
サフィル
ミレイユは、目を見開き
そして、泣きながら笑った
ミレイユ
ミレイユ
サフィル
サフィル
サフィル
月が照らす夜の屋上
ふたりは最後の口付けを交わした
それは甘く、切なく、 永遠よりも深い約束だった
_翌朝
彼は、いなくなっていた
けれど、石の破片ひとつと
ミレイユの胸元にあったペンダントだけが 静かに残されていた
それから数年が経ち__
田舎の村の石工房
一人の少女が、彫刻の手伝いをしていると 店の扉が開いた
???
???
現れたのは、どこか見覚えのある
穏やかな青年だった
彼の瞳は、 宝石のように青く澄んでいる__
そして、ミレイユは確信した
ミレイユ
青年は少し驚きながらも少し微笑んだ
???
???
二人の再会に、風が鳴いた
世界は今日も、静かに時を刻む
けれど、その中で 確かに一つの軌跡が芽吹いていた
__君に、また会いに来る
それは、ただの誓いじゃない
私の存在そのものなんだ
だから、また歩こう
いつかもう一度、手を取り合うために