神の独占欲

書斎の外が、ふっとざわついた。

なんだか、久しぶりに“人間”の気配がする。

耳を澄ませた瞬間、廊下の向こうから足音が近づいてきた。

コン、コン── 控えめなノックの音。

思わず呟いた直後、横で気配がすっと薄くなる。

声だけ残して、jpはふっと姿を消した。

気を取り直して扉を開ける。

するとその人は、胸の前で手を組みながら顔を伏せ、少し震えた声で言った。

そう言いながら、手を握ってくる。

その瞬間、背後の空気が、かすかにぴくっと揺れた気がした。

優しくそう言うと、来訪者はほっとした表情でうなずく。

その瞬間。

ぱちん──と、空気が弾けたみたいに、書斎の奥の空間が揺れた。

突然、そこに修道士の格好をしたjpが現れる。

来訪者は驚いて身をのけぞらせる。

にこーっと笑うその顔。 優しいのに、どこか圧を感じる。

小声でつぶやくと、jpが小さな声で返す。

やけに穏やかに聞こえるけど、目だけは全然穏やかには見えない。

それを見た来訪者は不安そうにしている。

歩きながらもちら、とこちらを見ているのがわかった。

来訪者には見えない角度で、jpはにこ、と笑みを浮かべる。

いつもより少し低い声。

言い返す間もなく、jpは来訪者を連れて静かに扉を閉めた。

書斎に静寂が戻る。

……でも、心は全然静かじゃなかった。

さっきまでの体温が、まだ胸の奥に残っている。

本当に勝手なやつだ。 勝手に触って、勝手に満たして。

そして今度は、人が来たら人間のフリまでして割り込んでくる。

複雑な気持ちは、しばらくは晴れることはなかった。