きっと、もう無理だ。
フェンスを握る手に力をこめる。
最期に、貴方と......笑えたらな。
イギリス
目をぎゅっと瞑った。
正直なところ、貴方も一緒にきてほしかった。
もっと我が儘を言えば、貴方から言ってほしかった。
でも、このままだと、きっと私は貴方を苦しめ続ける。
だから......きっとこれでいいんだ。
プルルルルルル
イギリス
携帯から着信音が響いた。
画面を見る。
イギリス
イギリス
鼻の先がつんと痛くなって、視界がぼやけた。
いつも見ているはずの画面が、
『フランス』と表示された無機質な画面が、
今はどうしようもなく愛しく見えた。
無視してきた。
拒絶してきた。
それでもこの思いは拭いきれなかった。
胸にそっと手を当てた。
少し前までの凍えるような恐怖や、息苦しさなんて、なにもなかったみたいに穏やかで、あたたかかった。
空を見た。
爽やかで、でも不思議と寒さを感じさせない、鮮やかな蒼色だった。
私は許されないことをした。
どんな理由があろうとも、私は貴方に謝らなければならない。
でも、どうしても貴方に伝えたいことがある。
どうしても貴方に、言わなければいけないことがある。
深く息を吸って、吐く。
緊張に震える手を、ゆっくりと画面に近づける。
勇気を出して、大嫌いな貴方に。
大嫌いで、大切な貴方に。
世の中が微睡みから覚める、いつも通りのある朝のことだった。
なんて、
もしかしたら、あったかもしれない。
幸せな話。
【大嫌いな貴方の殺し方】より ハッピーエンド『大嫌いな貴方との笑い方』
コメント
5件
あったかもしれないシリーズが大大大好きな人です☺️ 多分着信来てもあの状態だと…と思ってしまうからこそ「あったかもしれない」未来なんだな…
もしかしたら、あったかもしれない。 って残酷すぎやしませんか?!ひどいですってうわあああああん(好きです)
1日に二つも投稿すみません。 もしかしたらあったかもしれない、大嫌いな貴方のシリーズの最期です。 本当は解説も終えてから出したかったんですけど、こりゃ下手したら解説終わるの3、4週間後くらいだべ、と思ったので投稿させていただきました。