麗らかな陽気とは裏腹だ。
チラチラと舞う桃色はまるで春雪のよう。
カナタ
スクールバッグからひょっこりと顔を出すぬいぐるみの頭をなぞりながらそっと語りかける。
中学生がぬいぐるみに話しかけるなんて変だって思われるかもしれない。
だけど、ヒナタとは物心ついた頃から一緒だ。
ヒナタと2人だけの世界に閉じこもる。
それが、僕だ。
「おはよう。ヒナタ」
カナタ
不意に背後から声をかけられ、思わずひっくり返った声が漏れる。
ゾーヤ
口元を手で覆いながら静かに笑うのは保育園の時から一緒で、なんだかんだ腐れ縁のゾーヤだ。
「フツフツし始めたパンケーキ」というのは、ひっくり返った僕の声を比喩しているのだろう。
変わった例えを用いるのは、保育園の頃から変わらない。
カナタ
ゾーヤ
言いながら僕は歩き出すと、ゾーヤも横に並んで歩き始める。
どうやら一緒に登校するつもりのようだ。
ゾーヤ
カナタ
ゾーヤ
カナタ
カナタ
ゾーヤ
口ではそう言いつつも、知らない人ばっかりよりも、少しでも知ってる人がいた方が良いと思っている自分もいる。
ゾーヤと一緒だったら……
頭に浮かんだ考えを慌てて振り払う。
ゾーヤ
ゾーヤは突然立ち止まって、こちらを向いた。
僕も釣られて足を止める。
ゾーヤは何も言わずにただこちらを眺めている。
カナタ
ゾーヤ
言い終わるや否や、僕に向かって手を伸ばす。
カナタ
目が一人でに閉じて開かない。
言われるがままにじっと待っている。
その時
撫でるような柔らかい感触が
僕の頭に触れた。
ゾーヤ
恐る恐る目を開けると、悪戯っぽい笑みを浮かべ、手には小さな花びらをつまんでいるゾーヤと目が合った。
心臓がドキリと跳ね上がる。
視線がグラグラと揺れている。それに顔が熱い。
ゾーヤ
花弁から手を離すと、ゾーヤの手元を離れて風に吹かれていく。
ゾーヤ
カナタ
僕らは再び並んで歩き出す。
ゾーヤの横顔にチラリと視線をやると、触られた箇所がまた熱くなった。
コメント
2件
大好きなカナタ君とゾーヤ君の話キター!2人とも可愛くて、凄く面白いです。
最推しのカナタくんとゾーヤくんが2人ともかわいくて最高です。ゾヤカナが一番好きなカプなのでこれからも楽しみに待ってます。