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注意書きはあらすじにて。 NEXT本編
❅ Rin side ~イレギュラー王国「名も無き海岸」にて~
夜の海はとても静かだった。 私の耳に届くのは微かな波の音のみ。 港町の外れにあるこの海岸は、 昼間はクリンプトの商船や、 地元の漁師たちの漁船で賑わいを見せる。 だがこんな夜更けには、 夜に漁に出る漁船がちらほら見える程度だ。
さらに街から離れると、そんな漁船すらもいない。 ただ、南の果てしなく続く海岸と 広大な海が広がっているだけだ。
一旦部屋に戻った私は、"とある物"を持ち出して、 とある部屋に向かったものの、 そこに部屋の主たちは居らず、 次に再び懺悔室にいっても、誰もいなかった。
ただ、その懺悔室の窓の外には見覚えのある3人… ないと、まろ、いむが修道院を抜け出して どこかに向かおうとしている背中が見えた。
どこへ向かうのかはわからなかったが、 私はその後を追うことにした。 3人は今この海岸でただぼうっと海を眺めている。 そして、私はそんな3人を少し離れた場所から 様子を伺っていた。
Rin.
…やがてまろは、懐から瓶のようなものを取りだし 海に放り投げた。
Rin.
修道院長から、 この海に伝わる言い伝えを聞いたことがある。 羊皮紙に願いを書いて小瓶に詰め、 それを海に流すと、願いが叶うのだという。
Rin.
私は、3人に気づかれないように 忍び足で近づいていく。距離を縮める。 すると耳元で、誰かの囁き声が聞こえた。 それはさざ波に混じった、小さな囁き声だった。
?
Rin.
まだ、気づかれた様子はない。 流れていく小瓶をただ、見つめている。 そして、囁き声は次第に大きくなっていく。
?
Rin.
?
私は部屋から持って来た___ナイフを取り出し、 柄をしっかりと握る。囁き声はさらに大きく、 唸り声のように響いた。
Rin.
…何が懺悔だ。今更そんなことをしたって彼女は… ルカは帰ってこない。笑うことも泣くこともない。 植物になる?神になる? そんなのルカは望んで無かったはずだ。 彼女は人間として、私と暮らしていたかった筈だ。
_それをお前らは奪った。 ルカの願いも、私の願いも、全部奪ったんだ。 そんなお前らが願い事?ふざけるな。
?
Rin.
3人の背中は目の前だ。だけど、彼らは 目の前の小瓶に夢中で私に気がついていない。
?
私は、ナイフを振り上げた。
…
……?
誰?
誰なの、あなた達は?
なんで私の邪魔をするの? いむにそっくりな白い髪の男の子、 まろにそっくりな黒髪の男の子、 ないとにそっくりな赤髪の男の子
どいてよ!!彼らを殺せないでしょ!! なんでそんなに悲しい顔で私を見つめるの? やめてよ。そんな顔でみないで。
そうだ、ルカからもこの子達になんか言っ…
_誰?貴女はルカじゃない。 ルカはそんな憎しみに満ちた顔はしない。 だって、彼女はずっと優しい顔で笑っていた。 あなたは、誰?
…あぁ、そうか。 あなたは…その悪魔の様な顔は、私の___
時間にして、どれほどの時が流れたんだろう。 突然白昼夢のような感覚に襲われた。
気がついた時、私の存在に気づいた3人が、 驚いた顔でこちらを見つめていた。 そして、彼らは私が振り上げているものに 気がついて唖然としている。 そして、この沈黙を破ったのは、ないとだった。
Naito.
全てを悟った彼はいつもの表情に戻った。 私は、彼らが逃げ出すか、あるいは抵抗する… そう思って焦っていたけれど、
Imu.
帰ってきた言葉は意外なものだった。 そして、その場で静かに目を閉じ、 全てを受け入れるような、 今までに見た事がないくらい 悲しい笑顔を彼らは浮かべた。
Maro.
もう私には、どうしていいのかわからない。 教えてくれる人はいないんだ。 ルカはもういない。 私が、私が自分で決めなくちゃいけない。
3人は、ルカを殺した。 3人は、私の本当の兄弟のような存在。 3人は、とても酷いことをした、悪ノ王子 3人はとても孤独で、悲しい人…
3人は…彼らは…
Rin.
私は心を決め、ナイフを振り下ろした。
夜の海岸はとても静かだ。 私の耳に届くのは、 かすかな波の音。
そして…
_砂浜に、空振ったナイフが落ちる音だけだった。
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