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小説、かくの上手すぎ… すごっ!
混雑した朝の電車には、 むせ返るような香水の匂いが充満していた。
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思わず眉間に皺がよる。
原因はわかっている。
目の前の席ですやすやと眠る中年男性だ。
幸せそうなその寝顔が憎たらしい。
悠佑
小さな声で名前を呼ばれた。
隣に立つその人は、読んでいた本から顔を上げてこちらを見上げている。
if
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悠佑
笑って手元の本に視線を落とした。
そっと横顔を盗み見る。
if
長い髪が顔にかかる様が美しくて思わず見惚れる。
読書の邪魔しないように自分も手元のケータイを見、仕事のLINEを返していると、
不意にアニキが電車を降りた。
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嫌な予感がして慌ててifも電車を飛び降りる。
脇目も振らずに人気の少ない自販機の影まで来た瞬間、 その体が膝から崩れた。
if
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覗き込んだ顔は真っ白で。
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悠佑
言いかけたとたん、
悠佑
吐き出されたのは重い咳。
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悠佑
if
問えば、必死にこくこくと頷く。
if
返事をするのも、息を吸うのすらままならない様子のアニキは、 やっと小さく首肯すると、鞄の外のポケットを指さした。
手渡すと、慣れた手つきで吸入した。
悠佑
大きく息を吸って、吐いて。
まだぜえぜえと音が聞こえるものの、アニキの咳は収まっていた。
if
悠佑
そう言って笑うアニキの顔は未だ真っ青。
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悠佑
if
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悠佑
if
悠佑
悠佑
if
悠佑
面と向かって言われると照れる。
if
悠佑
if
悠佑
if
悠佑
悠佑
if
悠佑
あ、まろは先行っててええんやで 優しすぎるから
if
まだその顔色はいいとは言えない。
でも、俺に遠慮してか辛そうな素振りを見せないアニキがとてつもなく愛おしくて、
なんだかやるせなくて。
この人を、守りたいと。
素顔でいられる場所になりたいと、強く思った。
「素顔でいられる場所に」
Fin