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《BL作品》贖罪

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《BL作品》贖罪

1 - 《BL作品》贖罪

♥

454

2020年07月07日

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サン

そういえば

綴りなんて聞いてなかったな

サン

なあソニア

サン

俺の名前はどう書くんだ?

サン

貴方にとって‥俺は

一体

《 何 》だったんだ‥?

贖罪

ソニア

おい、サン

ソニア

そこの道具を取ってくれないか

サン

‥ん

ソニア

‥聞いてるのか?

ソニア

‥おい

ソニア

サン!!

サン

わっ‥!

ソニア

全く‥
最近ずっとそんな調子じゃないか

サン

ごめんって〜

サン

でもでも‥しょうがないだろ

ソニア

何がだ

サン

ほら、見て!

サン

《太陽》が顔を出して、夜が終わり始めてる

サン

俺‥この光景が一番好きなんだ

ソニア

‥また、《セカイ》か

ソニア

いくら肌身離さず持ってたって
意味無いぞ

サン

もちろん、
‥分かってるけどさ

サン

ソニアが預けてくれたものだから

サン

大切にしたいんだ‥

‥《セカイ》は 地球の様子が映し出される 小瓶のような物体だ

ソニア

‥そうか

ソニア

で‥どうなんだ?今日の様子は

サン

やっと
空が晴れてきたけど

サン

地面は‥
かなり荒れてる

ソニア

まあ‥
それは仕方ないだろう

サン

ソニアは
実際に見たんだよな‥?

サン

20年前に
地球を焼き尽くした業火を

ソニア

‥ああ

ソニア

今でも
鮮明に思い出せる

‥それは20年前 突然発生した

大地の怒りとさえ 呼ばれるほどの業火は

世界を瞬く間に 焼き尽くした

‥らしい

サン

(俺はこの
《船》の中で
生まれたから‥)

サン

(よく‥知らない)

‥とある国際機関は そんな非常時に備えて

前もって開発してあった この《船》に 生き残った人々を乗せて

宇宙に漕ぎ出した

…らしい

サン

(全部
ソニアからの
又聞きだけど‥)

ソニアの横顔を ちらりと盗み見る

ソニア

‥何だ?

サン


いや‥

サン

ごめん‥
ジロジロ見て。
気に障った?

ソニア

‥何を今更

ソニア

お前の相手をするのには
慣れてるよ

サン

‥っ何それ
どういう意味?

ソニア

別に‥
好きに見ていろって事だ

サン

‥うん

‥止めていた手を 再び作業へと戻す ソニア

《船》の管理人として 各所を周って 修理を行うソニアに

俺も同行している わけだけど

サン

(‥ソニア)

サン

(俺は‥)

サン

(ソニアのことが‥)

‥ソニアの気持ちは 分からない

でも 俺は‥

貴方が 俺の運命を変えた あの日から

ずっと‥

バキッ

薄汚い子供だね!

良いから盗みを働いて来い!

飯にありつくのはそれからだ!

サン

‥うぅ

サン

痛い‥
それに

サン

お腹空いた‥

サン

‥何か
盗んでこなきゃ

サン

じゃないとまた

サン

お父さんに
殴られちゃう

サン

でも
どこに行けば‥

サン

‥あ

サン

管理人室‥
ドアが少し開いてる

サン

管理人はいつも
《船》の修理をしてて
部屋に居ないって

サン

お母さんが
言ってた‥

サン

‥それなら

ギィィ

サン

‥誰もいない

サン

何か
ぬすむもの‥

サン

‥これ
なんだろう?

サン

すごく
綺麗‥

サン

‥これを持って帰ったら
お母さんもきっと‥

ソニア

それが
気に入ったのか

サン

わあっ‥!?

‥気づいたら 後ろに男の人が 立っていた

寝起きみたいな声で 気だるそうに 頭をかく

サン

ご‥
ごめんなさい

サン

許して
ください‥

ソニア

‥?
どうし‥

おもむろに手をかざす 管理人に対して ‥反射的に体が跳ねた

サン

な‥
なぐらないで

サン

殴らないでください‥

ソニア

‥っ

ソニア

お前
顔をよく見せてみろ

サン

え‥

ソニア

良いから‥
ほら

管理人は 屈んで 顔を覗き込んだ

ソニア

サン

(‥どうしたんだろう)

サン

(やっぱり
怒ってるのかな)

サン

あ‥あの
ごめんなさい

サン

管理人さんのものを
盗もうとしました‥

サン

僕が悪いんです
ごめんなさい‥

ソニア

‥これが
欲しいのか

サン

‥え?

ソニア

この瓶が欲しいのか
と聞いてる

サン

あ‥

サン

は‥
はい

サン

欲しいです

ソニア

‥そうか

ソニア

それなら
お前にやってもいい

サン

え!?

サン

い‥
いいんですか‥?

ソニア

ただし

ソニア

条件がある

サン

‥条件?

ソニア

これからずっと
俺の手伝いをしろ

サン

‥え…

サン

ど‥
どういうこと?

ソニア

この瓶は
とても価値のあるものだ

ソニア

お前に譲れと言うなら‥
その分働いて返してもらう

ソニア

それも
住み込みで働かなければ
採算が取れん

サン

え‥
で、でもそれは‥

ソニア

‥だから
今日からお前はここにいろ

サン

え?

管理人は伸ばした手で ‥そっと 頬を撫でた

サン

(っいた‥)

サン

(‥アザになってるの
気づかれた)

ソニア

分かったか?

サン

‥は、い

ソニア

返事は大きくだ

サン

はい!

ソニア

それで良い

そう言うと管理人は フフッと頬を緩めて

ぽんぽんと 俺の頭を軽く叩いた

‥ドクン

サン

(‥?)

サン

(なんだ
この気持ち‥)

ソニア

‥どうした?

サン

あ‥ううん

サン

‥ありがとう
おじさん

ソニア

‥おじさんじゃない

ソニア

俺は、ソニアだ
‥この船の修繕をしている

ソニア

お前の名前は?

サン

えぇと‥

サン

‥名前は
無いよ

ソニア

無い‥?

サン

僕は
拾われた子供だから

サン

名前は必要ないんだって

サン

お父さんとお母さんが‥

ソニア

ソニア

サン

サン

え?

ソニア

なら俺は
お前をサンと呼ぶよ

サン

サン‥

サン

‥地球を照らしている
っていう大きな星と
同じ名前?

ソニア

‥え?
‥ああ

ソニア

《太陽》の事か

ソニア

まあ‥
そういうことになるな

サン

‥僕が《太陽》‥

サン

ありがとう
ソニア

サン


この名前大事にする

ソニア

‥ああ

ソニア

それなら
良かった

あの日

俺の頬を撫でた その華奢で角張った手に

ろくに整えていない 柔らかそうな癖毛に

メガネ越しに微笑む 切れ長の目に

不健康そうな 白い肌に

落ち着いた声音に

俺を救った その暖かさに

貴方の全てに

恋をした

サン

(ズルズルと
想いを引き摺ったまま
10年近く経ったけど)

サン

(やっぱり俺は
貴方のことが)

修繕作業に没頭する ソニアの横顔は

出会った時より 少し老けたけど 凛としていて綺麗だ

サン

(‥好きだ)

サン

(ソニアは
俺の事をどう思ってるのか
分からないけど)

サン

(‥もしかしたら)

ソニア

今度は何だ?

サン

‥ううん

サン

見てただけだよ

ソニア

変なやつだな

サン

(貴方がそうやって
笑う顔を見せるのは)

サン

(俺だけ)

サン

(だから
もしかしたらって)

サン

(望むことくらい
良いよな‥?)

カタタッ

サン

‥ん

サン


あれ‥

ソニア

どうした?

サン

‥セカイが

《セカイ》が突然 ひとりでに震えながら 青く輝き始めた

サン

‥っこれ
ど、どういうことなんだ?

ソニア

落ち着け
サン

サン


だって今までこんなこと

ソニア

良いから

ソニア

‥思ったより
早かったな

サン

え?

ソニア

黙っていたが

ソニア

この《セカイ》は
ただ地球の様子を
映すだけの物じゃない

ソニア

地球がまた人間の
住める環境になった時

ソニア

地球へのポータルを
吐き出す装置でもある

サン

ポータル‥?

ソニア

この船から
地球に人間を《転送》する
抜け穴みたいなものだ

サン

地球‥に

サン

行ける
ってことか?

ソニア

そうなるな

サン

そ、それで今
《セカイ》が震えてるのは‥?

ソニア

‥そのポータルを
生成している
準備段階なんだろう

ソニア

…正直
《転送》はまだ
開発途上の技術だ

ソニア

適切に機能するか
不安もあるが

サン

大丈夫

サン

ソニアが作ったんだ

サン

ちゃんと作動するよ

サン

(この船がちゃんと
動いているのだって)

サン

(みんな
ソニアのおかげなんだ)

サン

(ソニアのする事に
間違いなんてない)

サン

(‥ああ
それより)

地球‥ どんな場所なんだろう

サン

(まさか‥
行けることになるなんて)

サン

(ソニアは
ずっとこの時を
待ってたのかな)

サン

(人類を地球に舞い戻らせる
なんて
歴史に残る大仕事だ)

サン

(今まできっと
気苦労が多かっただろうな‥)

サン

(‥そうだ)

サン

(地球に行ったら
ソニアにこの気持ちを伝えよう)

サン

(ずっと一緒にいたいって)

サン

(そう言おう‥)

サン

(‥きっと
その時になったら)

サン

(ソニアも
責務から解放されて)

サン

(少しは
楽になってる
だろうし‥)

ソニア

ああ
そうだ

ソニア

この件はまだ
他の人間には
伏せておいてくれ

ソニア

‥ただでさえ
《船》の現状は
好ましくないのに

ソニア

これ以上
混乱を招きたくない

サン

‥うん
わかったよ

サン

犯罪率も高いし
船の管理に不満を唱える
ヤツも多いもんな

ソニア

‥ああ
頼んだぞ

サン

(‥それなら
今はまだ)

サン

(俺と
貴方だけの秘密だ)

‥いつか二人で 地球に降り立って

《太陽》を見たいという 夢が

これできっと叶う__

バキッ

許してくれ!

あの時は 仕方なかったんだ

もう 関わらないから

誰か!!助け‥

バキッ

ソニア

‥またか

ソニア

ここ最近‥
こういう事例が多いな

《船》内での犯罪を 取り締まっている組織からの 報告書に目を通す

ソニア

《船》の貧民街の住人が
行動不能の状態で発見‥

ソニア

舌が切られていて喋れない上に
手が使えず筆談にも応じられない

ソニア

‥これじゃあ
犯人の手掛かりが
掴めない

《船》が地球を発って以来 軽犯罪は少なからず 横行していたが

こんな立て続けに 暴行事件‥それも

殺人未遂が 起こったのは初めてだ

ソニア

こんな状況は
想定していなかった
‥というよりは

ソニア

想定したくも
なかったんだがな‥

何せ 地球を共に脱して来た 運命共同体なのだ

ソニア

(‥船内の人口は多い)

ソニア

(全員と
家族のようになれる
とは思っていないが)

ソニア

(こんな事に
なってしまうとは)

サン

ソーニアっ

サン

何やってるんだよ

ソニア

‥サン

ソニア

(こいつを
巻き込む訳にはいかない)

素直なサンの事だ

きっと俺が困っていると知れば すぐに突っ走ってしまうだろう

ソニア

いや

ソニア

何でもないよ

サン

そんなこと言って

サン

まーた
事件でもあったのか?

サン

ソニアの手を煩わせるなよな

ソニア

‥まあ
そんなところだ

サン

げ‥
この書類全部ソニアが
読まないといけないの?

ソニア

‥犯人が特定できない分
より広い範囲で情報を
網羅しなきゃいけないんだ

ソニア

被害者の措置も
考えないといけないしな

サン

へぇ‥

ソニア

(結局言ってしまった‥)

ソニア

それより
《セカイ》の方はどうだ?

サン

相変わらず
カタカタ言ってるよ

サン

もうすぐなのかも

ソニア

‥そうか

ソニア

‥サン
俺はもう少し作業があるから

ソニア

お前はもう寝てなさい

サン

何それ
子供扱い?

サン

俺もう
子供じゃないんですけど

ソニア

サンはいつまで経っても
サンのままだよ

サン

は‥
成長してないってこと?

サン

傷つく〜

ソニア

そうじゃないが

ソニア

‥ただ
俺にとっては今も昔も
変わらず

ソニア

サンは
サンのままだ

サン

‥それ

サン

どういう意味に捉えれば
いいの?

ソニア

どうもこうも‥

サンがおもむろに近付き たどたどしい手付きで 指に触れる

サン

‥俺の事を
どう思ってるの?

ソニア

‥サン…?

熱っぽい眼差しに 紅潮した頬

ソニア

(‥まさか)

サン

‥ソニア

サン

俺もう
子供じゃないよ

サン

覚えておいて

言葉の意味がわからず 固まっている俺の頬に

そっと キスを落として

サンは 足早に去っていった

ソニア

‥っ

ソニア

サ‥ン‥

サン、という呼称を 口にするのが

はばかられる

ああ

Son(息子)よ

一体 どうして こうなった?

ソニア

‥っ‥

どうにか 落ち着こうとする 意志とは裏腹に

自分の鼓動は 煩いほど高鳴りを増す

ソニア

‥どうかしてる

その音をかき消すように バサバサと 報告書の束をめくった

ねえ ソニア

ソニア

‥なんだ?

ソニアには 想ってる人はいないの?

ソニア

なんだ‥出し抜けに

良いじゃん

たまには こういう話も

ソニア

ソニア

いるよ

ソニア

いた
の方が正しいかな

いた?

ソニア

ああ

ソニア

もういないからな

どうして?

ソニア

‥俺は

ソニア

彼女と結婚してからも
仕事が忙しくて

ソニア

自分ではちゃんと
愛しているつもりでも

ソニア

全く
気付けていなかったんだ

‥何に?

ソニア

彼女は

ソニア

俺との間に生まれた子供に

ソニア

日常的に
暴力をふるっていた

ソニア

‥気付かなかったんだ

ソニア

娘がとうとう
昏睡状態で病院に搬送されるまで

ソニア

それ以来

ソニア

最愛と呼べる人間は娘だけだ

‥娘さんがいたんだね

ソニア

‥ああ

ソニア

娘も《船》にいるよ

‥どうして

滅多に 会いに行かないの?

ソニア

‥俺は彼女の苦しみに
気付けなくて

ソニア

結果命までも
危険に晒してしまった

ソニア

‥父親を名乗っていいのかすら

ソニア

分からない‥

‥ソニアは

立派だよ

俺が保証する

ソニア

サン‥

娘さんはきっと ソニアに会いたがってるよ

ソニア

‥どうかな

罪を感じているなら

会ってあげて

それが贖罪になるから

少なくとも 俺はそう思うよ

ソニア

(‥あの時からだったな)

ソニア

(ちゃんと娘と
向き合えるようになったのは)

ソニア

(サンに背中を
押されていなかったら)

ソニア

(きっと
今でも罪の意識に囚われて‥)

ソニア

ソニア

(‥サン)

サンの屈託ない笑顔が 頭に浮かぶ

ソニア

(‥この感情は)

ソニア

(お前が俺に抱いているものと)

ソニア

(同じ‥
なのか?)

ソニア

(‥いや
でも)

ソニア

(俺はサンの育て親で‥)

ソニア

(何より
男同士だろう)

ソニア

(こんなの
きっと間違っている‥)

ガタンッ

ソニア

‥っ!?

音のした方を見ると

勢い良く開かれた扉の外から 知り合いの男が

血相を変えて走り込んできた

ソニアさん‥ッ!!

ソニア

‥どうしたんだ

まずいです

‥が

ソニア

え‥?

サンが‥!!

カツン‥

カツン‥

冷え冷えとした 地下牢に足音が響く

灰色の鉄格子の向こうで 俯いているその姿を

とても信じることが出来ない

ソニア

‥サン‥!

サン

‥っ!

サン

ソニア‥

ソニア

お前‥
お前は一体

ソニア

何をしたんだ‥!?

サン

‥バレちゃったか

サン

ごめんね
ソニア

サン

ソニアに面倒かけるつもりは
無かったんだけどな

ソニア

御託は良い

ソニア

状況を説明しろ

サン

‥ソニア

サン

俺はね
ソニアがどれだけ大変か
知ってるんだよ

サン

ずっと
‥そばに居たから

ソニア

サン

でも‥
その努力が報われてないのも
知ってる

サン

この船を
俺たちの生活を守って
くれてるのはソニアなのに

サン

住人から反発を受けたり
見下されたり‥

サン

‥だから

サン

次こそは
‥そういう事が無いように
したかったんだよ

ソニア

‥次‥?

サン

地球だよ

サン

地球に帰った時
また同じことが
起こらないように

サン

ソニアが大変な思いを
しないように

サン

不当な扱いを
受けないように‥

サン

不穏因子を
確実に排除しようって
思ったんだ

ソニア

‥まさかそれで
お前は‥

サン

うん

サン

貧民街のクズ共を
懲らしめて回ったよ‥

サン

‥ああ

サン

俺のオカアサンとオトウサン
まだ生きてたんだ

サン

ウケるよね
許してくれなんて

サン

いつまで俺に
命令する気なんだよ

サン

もう子供じゃないってのに

サン

それに‥
俺に指図していいのは
ソニアだけだ

ソニア

いい加減にしろ‥!!

サン

‥っ

サン

ソニア‥?

ソニア

‥いや

ソニア

(‥これは)

ソニア

(俺の責任でも
あるのか?)

ソニア

(‥俺はまた
やってしまったのか?)

ソニア

(同じ過ちを)

ソニア

(また‥気付かないうちに
大切なものを歪めて
しまっていたのか)

ソニア

(‥俺のせいなのか)

ソニア

(なあ‥
サン)

サン

ソニア‥

ソニア

‥サン
お前は

ソニア

何をしようと
俺の息子だ

サン

‥え…

ソニア

昔も今も
その気持ちは変わらない

ソニア

俺がお前を
歪めてしまったなら
生涯をかけて償おう

サン

ち‥違う‥
違うよ

サン

俺は別に‥

ソニア

悪かった‥サン

ソニア

また俺は
気付けなかったんだな

ソニア

家族の過ちに

サン

過ち
なんて

サン

違う

サン

全部違うよ

サン

俺はソニアを
父親なんて思ったこと
ないし

サン

俺のこの気持ちが

サン

行動が
過ちなんて
そんなの

ソニア

お前が歪んだのは
俺のせいだ

ソニア

‥ちゃんと面倒を見て

ソニア

治してやる

ソニア

だから‥
安心しろ

サン

‥ソ、ニア

殺人未遂という 罪を背負いながらも

精神疾患が認められ また犯人として 公表されなかったため

サンは カウンセリングを受けながら 徐々に《復帰》していった

サン

え‥

サン

ミネルカと
結婚?

ソニア

良い話だと思うが‥
どうだ?

サン

そりゃまあ
ミネルカは良い娘だし
ありがたいけど

サン

‥良いのかな

ソニア

‥ああ

ソニア

お前はもう
立派に社会復帰を果たした

ソニア

きっと
良い夫になるよ

サン

‥ありがとう

サン

サン

そういえば
《セカイ》は

サン

もう
ピタリと動かなくなったな

ソニア

‥ああ

数年前にサンが逮捕されて 以来‥《セカイ》の 管理は疎かになっていたが

《ポータル》が開くことは なかった

ソニア

ポータルが正常に
作動できないのか
ただ地球の環境が整ってない
のかは知らないが

ソニア

‥まあ
どっちでもいいさ

サン

‥良いの?

ソニア

ああ

《セカイ》は サンと本当の意味での 家族になるために必要だった

‥そう思えばいい

カタッ…

ソニア

ソニア‥

ソニア

‥サン?

好き..

愛してるよ

ソニア

‥!

ソニア

‥やめろ‥

ソニア

お前は
もう‥

わかってるよ

ソニアも本当は

俺が 欲しいんでしょ?

ソニア

‥違う

ソニア

やめろ

ねぇ 俺に触れてよ

貴方にキスした あの日から

ずっと見てるの 知ってるんだからね

ソニア

‥ちがう
俺は

ソニア

俺は‥

愛してるよ

ソニアも 同じでしょ?

ほら 来なよ

ソニア

‥っ…

ソニア

サン‥

ははっ‥

やっぱり そうだよな

愛してるよ ソニア‥

ソニア

‥っ!!

ソニア

‥ゆ
夢‥か‥

ソニア

‥っ‥また
だな

サンに迫られて以来 毎晩のように見る夢

毎回毎回 同じ内容で

最後は決まって 俺の方から

ソニア

‥っ

ソニア

ただの夢だ‥
こんなの

ソニア

‥全く

ソニア

(サンは立派に
社会復帰したというのに)

ソニア

(俺は
このザマだ)

ソニア

(‥サン)

あの細い首筋に 噛み付いたなら

一体 どんな顔を するだろう

ソニア

‥って

ソニア

(‥何を
考えているんだ)

ソニア

(‥ああ
早く)

ソニア

(早く
俺の手を離れてくれ)

ソニア

(俺が父親を
保っていられるうちに‥)

ソニア

支度はできたか?

サン

ああ
ソニア

サン

これ
変じゃない?

ソニア

‥ああ

サン

ああ
ってそれだけ〜?

サン

もっとなんか無いわけ?

ソニア

‥いや

ソニア

俺から言うことはもう
何も無いよ

サン

‥ソニア

ソニア

ん‥?

サン

‥これは
ちゃんと言いたいから

ソニア

‥え

ソニア

何だ?

サン

今まで
本当にありがとう

サン

ソニアは
俺が何もしても

サン

俺を見捨てずに
救い続けてくれたよね

サン

父親として‥

ソニア

‥ああ

サン

本当に‥ありがとう

サン

ソニアは俺にとって
最高の父親だよ

ソニア

どうして

その言葉で ‥胸が痛むんだ

ソニア

(息子、息子と
‥自分では呼び続けておいて)

ソニア

(いざ父親と呼ばれると)

ソニア

(こんなにも)

サン

ソニア?

ソニア

‥あ
いや

ソニア

なんでも‥

カタ____

サン

‥っ‥!?

ソニア

な‥

その時《セカイ》が 一際大きく揺れたかと思うと

人間が1人通れるほどの 《穴》が 瓶の口から投影された

サン

まさか‥

ソニア

(その
まさかだ)

ソニア

(こんなタイミングで‥!)

サン

‥ソニア

サン

皆を呼ぶ?

ソニア

‥いや

ソニア

こんなに
不安定な状態で出現して

ソニア

全員が渡り切るまで
持続するか怪しい

ソニア

それに
ちゃんと地球に飛ばされる
かもわからない

ソニア

今その判断を
下すのは
危ない‥

サン

‥でも
それこそ

サン

いつ消えてしまうか
分からないなら

サン

‥今しか
ないんじゃないの?

ソニア

ソニア

そうだな

タッ

サン

‥!?

サン

ソニア‥

俺は《セカイ》に歩み寄り

《ポータル》に 片足を踏み入れた

ソニア

サン

ソニア

‥お前に
ひとつ謝らなければ

サン

何してるの
ソニア‥

サン

まさか
一人で行くつもり?

ソニア

‥サン

ソニア

俺はお前の幸せを
誰よりも望んでいると同時に

ソニア

‥他の人間と
幸せになる姿を見るのは
耐えられない

サン

‥え

ソニア

今更こんなこと言うなんて

ソニア

利己的すぎる

ソニア

自分でも分かってるけど

ソニア

‥やっと気付いたんだ

ソニア

お前への気持ちに‥

サン

ソニア‥?

ソニア

愛してる

ソニア

‥きっと
お前の気持ちを知るより
ずっと前から

ソニア

本当はずっと
お前が欲しかったんだ

サン


だろ‥?

サン

だって
そんな‥

サン

そんなの
勝手だ

サン

俺の気持ちを

サン

過ちとか
病気とか

サン

そんなふうに
扱ったくせに

ソニア

‥それは
きっと

ソニア

元々お前にそういう感情を
持っていたことに
罪悪感があったから

ソニア

俺の態度が
知らず知らずのうちに
お前を歪めてしまったんだって

ソニア

‥事件を聞いたとき
思ったんだよ

サン

‥っ‥!

ソニア

今更謝って
済むような事ではないのは

ソニア

分かってる

ソニア

でも

ソニア

‥悪かった

サン

‥ひとつだけ
教えてくれる?

ソニア

何だ?

サン

俺の名前を付けた時

サン

貴方にとっては
《息子》って意味
だったんだよな

ソニア

‥ああ

サン

今は

サン

変わった?

ソニア

‥《Sun(太陽)》

サン

‥太陽?

ソニア

ああ

ソニア

十数年前のあの日から

ソニア

お前は
俺の人生を
照らし続けてくれた

ソニア

お前がいなかったら
なんて

ソニア

想像もできない

ソニア

それが俺にとっての
お前の存在だ

サン

ソニア‥

サン

俺‥
俺は‥

ソニア

答えなくていい

《ポータル》に踏み出した足を 見やって目を伏せる

ソニア

俺はこの世界から
消える事にする

ソニア

俺のためにも

ソニア

‥お前のためにも

サン

そ‥んな

ソニア

辿り着いた先が
宇宙の果てでも

ソニア

不毛な焼け野原でも

ソニア

お前を想って生き続ける

ソニア

それが俺の贖罪だ

サン

ソニア‥嫌だ

サン

待って

サン

おいていかないで‥!!

サンが言い終えるより 先に

俺は

あれから

どのくらいの 歳月が経っただろう?

結局あの装置は 正常に作動したようで

ソニア

(とはいえ)

ソニア

(最初は『正常』と
信じられなかったほど)

ソニア

(この地は
荒れ果てている)

予想した通り 焼き尽くされ 不毛となった大地

食糧を探してなんとか 食いつないでいるが

今後を考えると どうにか 再生させなければならない‥

ソニア

(‥しばらくは
この辺りで)

ソニア

(様子を見てみよう‥)

照りつけるような太陽の元

拾い集めた植物の種を 植えようと 地面を見やった時

ソニア

(‥?)

ソニア

(これは‥)

小さな‥芽が出ていた

たった一つではあるが しっかりと太陽に向かって 背を伸ばしている

ソニア

(‥それも)

つい最近植えたばかり のようで

ソニア

‥っ‥

ソニア

ま‥さか

咄嗟に辺りを見回す

誰の気配もしない

塵の交じった風が 吹きすさぶ荒野で

ただ1人 立っているのは俺だけだ

ソニア

(でも)

ソニア

(万が一‥あの時)

『サンが俺の後を 追ったとしたら__』

ソニア

(別の場所に転送されて‥
一人で生きていたとしたら)

ソニア

(‥なんて利己的な
希望的観測)

ソニア

(だが‥
ずっと可能性は考えていた)

ソニア

(それが
もしかしたら本当に‥)

考えれば考えるほど

辺りは静けさを増して

孤独が のしかかってくる

ソニア

‥はははっ

ソニア

たった1本
芽が出ていただけで

ソニア

こんな‥

ソニア

‥おかしいよな

ソニア

ただ
自然に再生に向かっている
だけかもしれないのに

ソニア

(サン)

ソニア

(お前であればと
願ってしまう)

ソニア

(‥ああ)

ソニア

(これが俺の罰なのか)

絶望と孤独を謳う この大地で

たった一つの希望に 縋りながら

ソニア

(‥この小さな芽に気付かず
この地を離れて
しまったのか?)

ソニア

(普通に考えれば
これを見守った方がいい)

ソニア

(だが‥)

それでも

お前を探し求めて

追い続ける

それが俺の

贖罪 なのだから

fin

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コメント

1

ユーザー

愛する人と、一緒にはなれない。この結末は、サンにとっても、贖罪なんですね。

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