リーナ・アイアン
……

リーナ・アイアン
にしても、本当に大丈夫なんでしょうか

国王
む?

国王
ヒンドラのことか?

リーナ・アイアン
はい

国王
あいつの力を甘く見てはならないぞ

リーナ・アイアン
えっ?

先程もヒンドラ殿下が言っていたでしょう

国王
!また台詞を取りおって!

「この国随一の魔力を持っている」と

リーナ・アイアン
…そういえばそうでしたね

……あの方の魔力はとてつもなく強力なんです

リーナ・アイアン
…なら、倒せるのでは!?

国王
言っていなかったことがあるのだが…

リーナ・アイアン
言っていなかったこと?

国王
そうじゃ。彼奴(あやつ)は昔、"魔力暴走"を起こしていたことがあるのじゃ

リーナ・アイアン
…?

リーナ・アイアン
"魔力暴走"…?

国王
…魔力が強ければ強いほど、使いすぎれば暴走してしまうのじゃ

リーナ・アイアン
っは、そんな話…

国王
其方(そなた)の国ではあまり知られていないからのぉ…

リーナ・アイアン
どうしてですか?そんな貴重な情報がどうして…!

リーナが声を荒らげた瞬間、それを止めようと冷静に口を挟む。
策略ですよ。

リーナ・アイアン
っ…策、略?

はい。貴女の国と敵対する国の策略です

リーナ・アイアン
でも、私の国では今まで魔力暴走は起きたことありませんよ?

貴女にだけ知らされていないだけなのではないでしょうか

リーナ・アイアン
え…?

貴女からはどう見ても箱入り娘…という印象が強いので

リーナ・アイアン
私は、薬草と薬の材料になるものを探したことあるんですよ!?

国王
ここまでのお転婆なお姫様は初めてじゃな!

笑っている場合ですか…

イーベラ王太子殿下のお相手様の魔力はどの程度なのかな…
リーナ・アイアン
…あの!

国王
なんじゃ、質問か?

リーナ・アイアン
……リリース公爵令嬢というのでしたよね、イーベラ王太子殿下のお相手様は

国王
ああ。どうかしたか?

リーナ・アイアン
その、リリース公爵令嬢はどの程度の魔力をお持ちなのか気になってしまって…

…

国王
…

国王
そういうことか

あの御方の魔力は、この国…いえ、全国随一です

リーナ・アイアン
………え…?

生命力も高いので、本来なら致命的の場所であってもあの御方が死ぬことはないです

リーナ・アイアン
……そんな、方が…この国にいらっしゃるのですか?

綺麗で美しいけど、魔力の強力さや生命力の高さのせいで、一部の貴族の方からは化け物だと思われ疎まれているんです

リーナ・アイアン
……そんな、、

ですが、ヒンドラ殿下はそんな彼女を避けようともせず、ただ歩み寄るのです

……

優しい言葉はかけませんが、キツい物言いの裏には優しさが隠れているんです

リリース公爵令嬢にはバレバレでしょうけど

この人がイーベラ王太子殿下とリリース公爵令嬢の話をすると、羨望(せんぼう)を目に宿していた。
リーナ・アイアン
…?

国王
はっは!羨ましいんじゃろう、ヒンドラが!

は、羨ましいとはなんのことで…?

リーナ・アイアン
……(ああ…なるほど)

国王
此奴(こやつ)が自覚したらどうなるか見物じゃのぉ!アイアン姫よ!

リーナ・アイアン
…ふふっ、そうですね

国王
わしの見立てなら…引くはずじゃ

リーナ・アイアン
いえいえ!きっと、一旦引きはしますけど、やっぱり抑えきれない恋情に従うはずです!

国王
ふむ…それもありそうじゃな…

えっと…お二人共…?

リーナ・アイアン
はっ、!

国王
ふぉっふぉっ…すまんすまん

はあ…?

…それで、姫様

リーナ・アイアン
はい

どうしてリリース公爵令嬢の魔力を気になされたのでしょう

リーナ・アイアン
あー、実は…

国王
確かにあの二人の魔力を合体させれば暴走も防げるが…

リーナ・アイアン
…どうしたんですか?

…実はあの御方、人助けや魔物退治はなさらないのです

リーナ・アイアン
……ええ!?!?

リーナ・アイアン
嘘でしょ…?

いえ、本当のことです

それに…もしかしたら姫様とリリース公爵令嬢はウマが合わない気がします

リーナ・アイアン
…そうなんですか?

はい

リリース公爵令嬢は貴女と違い、希望や努力、全てを嫌っているんです

リーナ・アイアン
……どうしてですか?

リーナ・アイアン
努力や希望は必要なのは、公爵令嬢もご存知のはず…!

国王
……過去に何かあったんじゃろう

リーナ・アイアン
過去に…?

リーナ・アイアン
それって──

ヒンドラ・イーベラ
っはぁ…はあ、、ドラゴンの存在にはもう怯える必要はありません…っ

国王
…、!傷が…

治癒魔法があれば治せはしますが…

リーナ・アイアン
私の魔力は役に立ちません…申し訳ありません…この様なときに……、、

大丈夫ですよ

リーナ・アイアン
え?

リリース公爵令嬢に頼めば…なんとかなるでしょう

リーナ・アイアン
えっ、?人助けはしない方なのでは…?

…この方に対しては違います。助けたいと思っておられる

リーナ・アイアン
……(なんだか、苦しそう)

愛があるから…なんでしょうね

リーナ・アイアン
(ちょっと泣きそう…?でも、もう御相手がいらっしゃる令嬢に恋をしてしまえば、叶うことはないと分かってしまう…)

リーナ・アイアン
では、リリース公爵令嬢に頼みましょう

国王
わしが頼み込んでくるわい

はい

リーナ・アイアン
え、待って、側近の方もでは!?

…──

国王
此奴は一旦休ませる。別室で寝てこい

え、あー…分かりました

国王
その先にわしは呼んでくるとしよう

リーナ・アイアン
待っております…!

ヒンドラ・イーベラ
…そんなことしなくても──

リーナ・アイアン
駄目です!

ヒンドラ・イーベラ
っ…

リーナ・アイアン
貴方は一国の次期王なのですよ!?

リーナ・アイアン
そんな方がこんな調子では不満に思われます!!

ヒンドラ・イーベラ
そ、……そうだな

ヒンドラ・イーベラ
すまない

リーナ・アイアン
いいんです、!分かっていただけただけで大丈夫ですので

……それでは、お時間になれば

そう言って国王の側近は別室へ行って眠りについた。
リーナは国王の側近の心を案じて、願う。
あの方に、素敵で幸ある未来を──
と。