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どこかを彷徨っている感覚。

何から逃げ回っている感覚。

息を殺す。

刃が掠めていく。

仲間の声。

息が切れる。

脚が重い。

耳に響く機械音。

この感覚を、私は知っている。

っ!!

がばりと勢いよく起き上がる。

バクバクと鼓動がうるさい。

……

夢…。

はぁ、とひとつ息を吐き、ベットから立ち上がった。

水…。

フラフラとおぼつかない足取りで自室を出る。

ふと、明かりがついていることに気がつく。

『また』こんな時間まで起きてるの…?

ぅっ、まぶし…

煤で汚れた少年

あれ、どうしたの?

煤で汚れた少年

寝たんじゃなかったの?

……喉が、渇いて…

その瞬間、息が詰まる。

あれ、ここ、どこ…?

煤で汚れた少年

どうしたの?大丈夫?

少年らしき人物が彼女に近づくと、びくりと肩が大きく揺れた。

ど、どなた、ですか…?

煤で汚れた少年

…え?

シア

シア、ですか…?

煤で汚れた少年

うん、そうだよ

煤で汚れた少年

君の名前はシア

煤で汚れた少年

パンタシアのシアをとってシアって名乗ってた

シア

パンタシア?

煤で汚れた少年

そ。
ラテン語?で、幻想をパンタシアって言うんだって

シア

幻想…

今に至るまでの経緯を簡潔に説明してくれた。

ここは『荘園』と言い、招待状が送られてきた者のみ入ることが許されているらしい。

荘園の中では『ゲーム』と言って脱出を懸けた文字通り、ゲームが開催されているという。無事脱出できた者には懸賞金も与えられるようだ。

狩る側と逃げる側。4:1のゲーム。簡単に言えば隠れ鬼ごっこ。 しかし、その脱出回数が一定にならないと荘園から出られないことはもとより、懸賞金も手には出来ない。

だが、明確な一定回数が荘園主から宣言されていないのだ。つまりは、半永久的にここからは出られないと言うこと。

ここに来る者は訳ありが多いらしい。 違法を犯した者、ある人物を追いかけてきた者、何かから逃げてきた者─。

私は一体何しにここへ…。

シア

えっと、トレイシー、さん

トレイシー

あは、トレイシーって呼んで欲しいな…。君からそう呼ばれると、ちょっとくすぐったいよ

シア

じゃあ、トレイシー

シア

私は、私について何か言ってた?

トレイシー

…特に何も

シア

そっ、か……

トレイシー

で、でも、エミリーも言ってたでしょ?
何かがきっかけで思い出す可能性があるって!

シア

…うん

エミリーとは、この荘園で『医師』として名乗っている人物。実際のところ、腕の良い医師ではある。

エミリー

かと言って、無理しないことね

エミリー

焦らず、ゆっくりが第一よ

シア

うん、ありがとう

エミリー

…けど、不思議ね

エミリー

記憶は『ある』のに記憶がない

シア

……

そう、そこが厄介なのだ。確実に体は覚えているはずの場所なのだが、シア自体が記憶にない。

フードを被った男

治るのか?

エミリー

見込みはあるわ

フードを被った男

ふーん。記憶戻ると良いな

シア

わっ…

フードを被った男が彼女の頭をわしゃわしゃと撫で回した。

エミリー

こら、やめなさい。ナワーブ

エミリー

困ってるでしょ

ナワーブ

おっと、すまん。
いつもの癖で…

シア

あ、お気になさらず

日常的に、私は好かれていたのか…?

エミリー

けれど、そうね

エミリー

今日はもう遅いわ。また明日にしましょ

エミリー

朝はみんなに情報共有よ

トレイシー

そうだね

ナワーブ

個性的な奴らが多いが、みんないい奴だから安心しろよ

シア

はい

そんなにここには人がいるのか…。

にこりとぎこちなく笑った。

ここにきた目的を思い出さなきゃ。 何か、何か大事なことを忘れている気がする。

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