「貴方がほしい」 !
「彼奴でいいの」 ?
ベガとアルタイルみたい
本当に愛しているのなら、
運命だって神様だって
何を放っても手にいれたいでしょ?
私には貴方が必要不可欠。
きっといかなることも 成してみせる。
彼奴が知らない些細な秘密を
私が持っているだけでよかったと、
それはもう昔の話。
幸せな妄想ばかりして、
「あいたい」と「おもって」
そんな行き場のない 心と欲と闇が
どんどん大きく膨らんで
あるとき破裂して、 そして
私を 呑みこんだ。
ライトのあかりが 主張してくるせいで
街はまるで昼みたい。
いつまでも 眠らない 明るさで
夜の輪郭が ぼやけていく。
枯れた葉っぱや花びらで デコレーションされた ベンチに座り
中途半端な薄暗さを放つ 街灯の下で
私は、思い出を スクロールしていた。
君がくれた手紙もプレゼントも
尽きそうにない メッセージのやりとりも
寝るまで続いた電話も SNSの何気ない呟きも
全部、とっていて
永久に保存していた。
スマホも愛の容量も
いつしか想いでいっぱいになって
唯一私が証明できるものになる。
意図せず飛びだす わがままな言葉。
刃先は月光で、より鋭く見えた。
何もする気が起きなくて
いつも朝になるまで
路地裏でぼんやりと 空を見あげていた私に
はじめて、 欲望をくれたひと。
だけど私のことなんて、
貴方には絶対 気づかれない。
だからこそ、 白く吐いた声が
予想以上に 反射して
深夜の空気を震わせた。
私のなかで 貴方の時間は 止まっていて、
幸福な夢が 現実との差を より見せつけて
服の袖に 血と涙を 染ませた。
えへへ、なんて 笑ってしまって
青白い肌に走る 無数の赤線を眺めながら
生きているという かなしい痛みに 顔を歪ませた。
貴方の存在を 知れるのなら
貴方が生きていると わかっていられるなら
それが私の全てだった。
だけど
密やかな想いとは 反して
いつか傍にいきたい、 もっと近くにいたい、
そんな生意気な 思いだけが
どんどん重みを つけていったの。
だから
いつも自分につける傷より
ずっと濃く、 もっと深く。
そうすれば
ほらっ
私の気持ちに色がついた!
重い粘性のある色水は いずれ茶色に乾くから
今のうちに貰っちゃおう。
貴方のことを撮ったって、
知りたいから録ってみたって、
彼奴のものだという事実は 何ひとつ変わらないから、
それなら 盗るしかないんだ。
愛するひとを手にいれる為
どんなことでも犯してみせた。
映画の主人公に なったみたいで
今、 そんな自分に 酔っている。
ばらばらに刻まれた 貴方の身体。
何がしたかったんだっけ?
私の心もばらばらで
世界一素敵なお揃いだね。
空が泣いて喜んでくれた。
冷たい雨が接着剤のように、
髪や服をべたべたと貼りつけて
貴方から出た命の欠片を洗っていく。
守るように貴方を覆う。
すこしだけ 遺った温度が心地よくて、
鉄の匂いに顔をうずめた。
私たちは特別だよね。
意地悪な神様の涙で 逢うことのできない
可哀想な織姫と彦星 なんかじゃないの。
やっと伝えられました
悦びで唇が震える。
なのに閉じた瞼の隙間からは
ぬるい雫が 延々と垂れていて、
ぐちゃぐちゃに 歪んでしまった。
戻れないから苦しかった。
貴方さえ得られれば、 獲ることができたら、
彼奴のことなんて 忘れてあげるから。
だから
貴方から彼奴宛の 贈りものとか、
貴方と彼奴の 長く永かったやりとりとか、
私が覗いていたもの、 消してあげるね。
貴方はもう、 動かないから
私の意のままに 動かしてあげる。
1年に1回しか 逢えない、
幻想的な星の物語 なんかじゃなくってさ。
これからは ずっといっしょに いられるね。
生命という輝きが葬られた、
世界でいちばん大切な 私だけの貴方。
はじめて交わした感触は
固くて冷たい、錆びた味がして。
だけど
全て叶えた今、
これから 何をどうすれば いいのか
ちっとも わからない私は、
止む気配のない雨に 降られ
貴方と共に 濡れつづけた。
真夜中パラディーゾ
コメント
9件
お久しぶりです 元檸檬です アカウント消えました😭😭😭 今回も、すうさんのお話とても素敵でした、、、😢 すうさんのお話はいつもお話の輪郭がぼんやりと心に残り不思議な気持ちになりますね、、、
タイトルやあらすじにイタリア語を用いているところや七夕を加えていることで、読む人をそのストーリーに惹き込ませるような素敵な魅力がありますよね😇💭 読んでて必ず主人公(語り手)に感情移入しちゃいます🙌 最高でした✨✨