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湊の突然の独占欲に触れたあの日から、二人の間の空気は、甘く切ない緊張感を孕むようになった。
「独り占めしたい」
その言葉が、遥の頭の中で何度もリフレインしては、胸の奥を熱く焦がす。
文化祭当日。
校内は浮き足立った熱気に包まれ、廊下には模擬店のソースの香りと、生徒たちの弾んだ声が充満していた。
遥は一人、喧騒を避けるようにして、静まり返った屋上へと続く階段を登っていた。
瀬戸 遥
屋上の扉を開けると、澄み渡った秋の空が広がっていた。
フェンスに寄りかかり、眼下に広がる賑やかな校庭を眺める。
そこには、クラスの出し物の衣装に身を包み、大勢の女子に囲まれて写真撮影に応じる湊の姿があった。
瀬戸 遥
瀬戸 遥
湊が自分に向けてくれた特別な言葉や、図書室での二人きりの時間は、祭りの夜の夢のようなもの。
そう自分に言い聞かせて、遥は静かに目を閉じた。
一条 湊
聞き間違えるはずのない声がして、遥は勢いよく振り返った。
そこには、さっきまで校庭にいたはずの湊が、息を切らして立っていた。
瀬戸 遥
一条 湊
一条 湊
湊は一歩、また一歩と遥に歩み寄る。その瞳は、迷いのない強い光を宿していた。
一条 湊
瀬戸 遥
一条 湊
一条 湊
一条 湊
湊は遥の両手を優しく、けれど離さないように強く包み込んだ。
一条 湊
一条 湊
一条 湊
一条 湊
一条 湊
瀬戸 遥
一条 湊
一条 湊
湊の顔がゆっくりと近づいてくる。
遥は逃げることもできず、ただ、世界で一番大好きな人の体温を間近に感じていた。
瀬戸 遥
一条 湊
一条 湊
湊の唇が、遥の額にそっと触れた。
それから、熱を確かめるように頬を撫で、最後に唇が優しく重なった。
風が吹き抜け、校庭から聞こえる喧騒が遠ざかっていく。
世界には、二人しかいないような錯覚に陥る。
一条 湊
初めて名前で呼ばれた瞬間、遥の目から一粒の涙が溢れた。
それは悲しみではなく、あまりにも大きな幸福に心が追いつかなかったから。
瀬戸 遥
遥が湊のシャツをぎゅっと掴むと、湊は愛おしそうに遥を抱き寄せた。
かつて、遠くから眺めるだけだった光。
届かないと思っていたその光は、今、遥の腕の中で、誰よりも温かく輝いていた。
もう、視線を逸らす必要はない。
二人の物語は、この眩しい光の中で、新しく始まったばかりなのだから。