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僕はピンをそっと引っ張った
蝶はもう乾いていたので、形は崩れなかった。
僕はソレを掌に乗せエーミールの部屋から持ち出した。
その時さしずめ僕は___
大きな満足感のほか
何も感じていなかった。
僕
蝶を右手に隠し僕は階段を降りた。
その時だ。
僕
僕
下の方から僕の方に上がってくるのが聞こえた。
その瞬間
僕は良心の心に目覚めた。
僕
盗みをした下劣なやつだと悟った。
同時に見つかりはしないかという恐ろしい恐怖に襲われた。
僕
僕は本能的に獲物を隠していた手を上着のポケットに突っ込んだ。
ゆっくりと僕は歩き出したが、大それた恥すべきことをしたという
冷たい気持ちに震えていた。
上がってきた女中とビクビクしながらすれ違い
僕は胸をドキドキさせ、
額に汗をかき
落ち着きを失い
自分自身に怯えながら
家の入り口で止まった。
元に戻して、できるなら
僕
人に出くわしてみつかりはしないかということを極度に恐れながら
急いで引き返し
階段を駆け上がり
僕
一分後には
エーミールの部屋の中に立っていた。
僕はポケットから手を取り出し
僕
机の上に置いた。
僕
そこにあるのは潰れたクジャクヤママユだった。
前羽が1つと触角が1本なくなっていた。
千切れた羽を用心深くポケットから引き出そうとすると
僕
羽はバラバラになっていて繕うことなんかもう思いも寄らなかった。
盗みをしたという気持ちより
美しい
珍しい蝶を
自分が潰してしまった
蝶を見る方が僕を苦しめた
微妙なとび色がかった羽の粉が自分の指にくっついているのを見た。
また、バラバラになった羽がそこに転がっていた。
それをすっかり元通りにすることが出来たら
僕はどんな持ち物でも楽しみでも
喜んで投げ出しただろう。