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前澤

ジッと俺を見下ろす

吸い込まれそうな瞳が俺を捉えて離さない

前澤

…ひ、さ、しぶり

なるべく明るく言う

彼女の唇が動いた

前澤

言ってないよね

前澤

誰にも

何を、というのは聞かなかった

あの時彼女がぼんやりと呟いた言葉は

2人だけの秘密なのだから

『楽になりたい』

『さっさと死にたい』

ふわりと風が花びらと共に舞う

それにつられるように振り返った彼女は

全てを諦めたような

何もかもが嫌いになったような

地獄の中で笑っているような

そんな顔をしていた

『君話しやすいから』

取ってつけたようにペラペラ喋り出す

『そんなこと言ってくる子いるかもね』

『しょうもないよね』

『そういう奴に限ってリスカとか依存とかするんだよ』

『気持ち悪いよね』

もう止まらないと思った言葉の羅列は

彼女が口を閉じて無理やり終わらせた

そのあと唇を噛んで

少し俯き、指を髪に絡ませる

そして再び顔を上げて俺を見る

ふんわりとした笑顔を纏いながら

『なんてね』

それが作り笑いだとすぐに分かった

桜はハラハラと散っていく

少し緑がかった木が風に揺られる

『…』

『面白くなかったね』

黙った俺にまた笑いかけ

舞う花びらを追いかけるように歩を進めた

言ってたら、どうする?

少し意地悪をしてみる

彼女のはあくまで冗談で

本人がそういうわけじゃない

きっと、

例え話だ

前澤

前澤

さぁ、

前澤

そうならないと分からないんじゃない?

低い声がはばかる

軽蔑した瞳に捕えられる

しばらく2人見つめ合う

長い睫毛が俺を指している

月雫

…ちょ

沈黙を破ったのは月雫の声ではなく

無機質なチャイムだった

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