リアム・クラエスが王宮を訪れた翌日、彼の元に一通の手紙が届いた。
アデル・セバスティアン
ジオルド・スティアート殿下より、午後のティータイムにお誘いがございます
リアムは気が重かった。昨日の出会いで、彼はジオルドの鋭い目に警戒心を抱いていた。とはいえ、王太子の誘いを断るのは難しい。結局、彼はアデルと共に王宮を再び訪れることになった。
王宮の庭園は、まるで別世界のように美しかった。中央には噴水があり、色とりどりの花々が咲き誇っている。その一角に設けられたティーテーブルには、既にジオルドが待っていた。
ジオルド
よく来てくれたね、リアム
ジオルドは微笑みながら席を勧める。彼の笑顔は完璧で、隙がない。
リアム
ええ、光栄です、殿下
リアムも礼儀正しく応じながら席に着いた。ティーセットには高級な茶葉が用意され、焼き菓子の甘い香りが漂っている。しかし、リアムの警戒心は解けなかった。
ジオルド
昨日の君の態度、面白かったよ
ジオルドが穏やかな口調で言った。
ジオルド
普通なら、王太子を前にすれば多少は畏縮するものだ。だが、君は違った。余計なへりくだりもなく、媚びる様子もない。それが実に新鮮だった
リアムは肩をすくめた。
リアム
単に面倒なだけですよ。貴族社会の駆け引きには興味がありませんから
ジオルドはくすりと笑う。
ジオルド
なるほど。君は実に興味深い。……友人にならないか?
リアムは思わずアデルの顔を見た。アデルは微笑みながら頷く。どうやらジオルドは本気のようだ。
リアム
……友人、ですか?
ジオルド
そうだ。君と話していると退屈しない。だから僕の友人になってくれ
リアムはしばし沈黙した後、ため息をつきながら答えた。
リアム
まあ、断る理由もないので
ジオルドの笑みが深まる。
ジオルド
それでいい。これからよろしく頼むよ、リアム
こうして、リアムとジオルドの奇妙な友情が始まった。
だが、それが後にどれほど大きな影響を及ぼすのか、当時のリアムは知る由もなかった。