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主
主
主
主
主
主
主
初兎
1月もあと数日で終わりを告げる頃、僕は彼の家に向かっとる
彼──いむくんは双子と言われるほど仲のいい相方であり、恋人同士でもある
数日前いむくんに「僕の家で二人だけで誕生日を祝わない?」と言われたんや
そして今日はその当日
準備は全部やってくれとるらしいから、僕は時間通りに彼の家に向かうだけや
初兎
スマホで時間を確認する
約束の時間は夜の8:00、現在時刻は7:30
ここからいむくんの家までは20分ぐらいやからちょうどいい時間や
初兎
ゆっくりと息を吐くと暗闇に白く広がる
体温と外気の温度差で起こるこの現象は今しか感じられへん風物詩や
悴んだ手をコートのポケットに突っ込む
氷のように冷たく、感覚がなくなってきた足をなんとか動かし彼の家に向かう
初兎
歩くたびに吹き付ける寒さと戦っとると、春の暖かさが恋しくなる
暦上の春はもうすぐやってくるが、まだまだ冷え込みは続く
太陽が出とる内はええけど、日が沈むと冷凍庫の中みたいに寒い
初兎
気が付けばいむくんの家の前に着いとった
初兎
スマホで時間を確認すると7:50分と丁度ええ時間になっとった
ピーンポーン
少し緊張しながらインターホンを押す
彼が出てくるのを今か今かと待つ
ガチャ
ほとけ
満面の笑みを浮かべて僕を招き入れてくれるいむくん
初兎
一方僕は寒さでつい無愛想になってしまう
楽しみにはしとるから、勘違いせんといて欲しい
いむしょー
バタン
扉が閉まるとさっきまでの寒さが嘘みたいに暖かい
初兎
ほとけ
初兎
ブルブルと震えるいむくんは、小動物みたいで可愛く思えた
ずっと家の中におったから、より寒いんやろうな
僕も家出た瞬間寒すぎて凍えそうやった
ほとけ
初兎
ガチャ
初兎
風船やガーランドで飾り付けられたリビングは圧巻や
白と紫基調でむちゃくちゃ綺麗や
僕のためを思って用意してくれたんやと思うと、すごく嬉しい
ほとけ
初兎
初兎
キッチンへと走っていくいむくんを横目にダイニングの椅子に座る
いつもはお世辞にも綺麗とは言えへん部屋やけど、今日はかなり綺麗や
この日にのためにどんだけ準備してくれたんやろう
脳裏に僕に喜んでもらおうと努力する彼の姿が浮かぶ
普段はあんな感じやけど、常に僕のことを優先してくれる
彼の愛を感じて恥ずかしくなる
ほとけ
そんなことを考えとったらいむくんが戻ってきた
机には豪華な料理が並べられていく
シンプルなサラダにフランスパン、そしてメインディッシュのクリームシチュー
さっきまで無機質やった机が彩り豊かになった
ほとけ
初兎
いむしょー
初兎
初兎
シチューを一口スプーンで掬って食べる
濃厚なクリームとブイヨンの旨みが絶妙なハーモニーを醸し出しとる
具材もほろほろとしとって美味しい
ほとけ
少し不安げに聞いてくる彼は小動物みたいや
初兎
そんな彼を安心させるためにも心からの感想を告げる
お世辞とかやなくて、ホンマに美味しい
いむくんが作ってくれただけでなんでも美味いんやけど(笑)
ほとけ
ほとけ
さっきとは打って変わってホッとした表情や
コロコロと表情が変わるから、見とって飽きへん
ほとけ
ほとけ
初兎
お互いの近況を話しながら囲む食事は心が温まる
この時間がずっと続けばええのに、、、
なんて思ってしまう
実際はそんなこと叶わんこともわかっとるけど、それぐらい今が幸せなんや
一人じゃいくら手を伸ばしても届かない幸福が今ここにはある
いむくんと過ごせるこの時間が何より大切で、かけがえのないものや
代わりなんていくら探しても見つからへんぐらい特別な存在になっとる
子供の頃に見た恋愛ドラマとは全然違う僕らだけの幸せの形
…確かに僕らは、普通やないかも知れへん
それでも僕らの幸せが侵害されるなんてあってええわけがない
これから何十年先の未来も、二人で並んで歩きたい
本気でそう思うんや
ほとけ
初兎
ほとけ
心配そうに僕の顔を覗き込むいむくん
考え事をしすぎて、手が止まっとった
目の前の彼のお皿は空っぽなのに対して、僕のはまだまだ残っとる
初兎
ほとけ
まだ怪訝そうな表情を浮かべたままの彼に申し訳なく思うが、 恥ずかしくてさっき考えとったことは言えそうにない
心の中で謝っておく
初兎
誤魔化すように少し冷えてしまったシチューを口に運ぶ
まだ十分美味しい
彼の愛情が詰まった味に舌鼓を打つ
初兎
あっという間に食べ終わってしまった
名残惜しく思いながら作ってくれた彼に感謝を告げる
ほとけ
初兎
ほとけ
初兎
突然部屋へ走っていくいむくん
訳がわからず混乱する
ほとけ
初兎
バタン
よくわからへんけど、とりあえずいむくんの言う通りすることにする
初兎
ジャー🚰
さっきまで賑やかやったのに、今は水の音だけが響いとる
いむくんは何をしに行ったんやろう?
見当もつかん
キュ
水道を止め、ダイニングに戻る
初兎
人の家をウロウロと歩き回るんは罪悪感が湧くし、大人しく待っとくことにする
数分しか経ってへん筈やのに、もっと長い時間のように感じる
いむくんと一緒におったら時の流れが早く感じるんや
人は楽しい時ほど時間が経つんが早く感じて、つまらない時ほど遅く感じるらしい
どうせなら逆やったらええのにな
気まずい時間とかが短く感じたら嬉しいやん
ガチャ
突拍子もないこと考えとったら、いむくんが戻ってきた
手には大きなリボンのついた袋が抱えられとる
ほとけ
初兎
よくわからず混乱する僕
ほとけ
初兎
驚いた
まさかプレゼントをもう一個用意してくれとったなんて思いもせんかった
初兎
初兎
ほとけ
ほとけ
初兎
彼の不意打ちな言葉にキャパオーバーしかける
全身の熱が顔をに集まっていく感覚がする
きっと今の僕は林檎のように真っ赤やろう
ほとけ
初兎
ほとけ
頬を膨らませて怒る僕
そして、反省しているようで楽しんでいるいむくん
口角が上がっとるんが見え見えや
ちょっとむかつくが憎めへん
初兎
ほとけ
ほとけ
話を逸らされてような気もするが、気のせいってことにしてあげよう
中身が気になっとるのが大きな理由やけど…w
初兎
初兎
丁寧にリボンを外していく
袋は白いツルツルとした素材に紫のサテンリボンがついとって、僕好みのデザインや
片手やとギリ持てへんぐらいのサイズやけど、中身は何が入っとるんやろうか
初兎
中に入っとったんはうさぎのぬいぐるみ
抱き抱えれる程のちょうどいいサイズや
モフモフで触り心地がええ
ほとけ
少し不安げに聞く彼にかわいいな、なんて思いながら言葉を返す
初兎
初兎
ほとけ
僕が喜びの言葉を告げると、パッと顔を明るくさせるいむくん
心底安心した様子や
確かに僕もプレゼントが相手に喜んでもらえるか心配になる
万が一にでも気に入ってもらえんかったら数日落ち込むと思う
初兎
ぬいぐるみを優しく撫でる
ふわふわもちもちの感触に頰が緩んでいく
ほとけ
初兎
ほとけ
喉も渇いとったし、ちょうどよかった
うさぎのぬいぐるみと戯れながら彼が戻ってくるのを待つ
長い耳とつぶらな瞳は僕の好みにどストライクや
また大切なものが増えた
これからたくさん愛でてあげよう
ほとけ
初兎
いむくんの声で顔を上げながら感謝を伝える
初兎
机の上にはティーカップが二つとケーキの箱
よく見ると有名なお店に物や
ほとけ
初兎
よくテレビとかで取材されとる人気店やから、簡単には買えへんやろう
2時間待ちが当たり前やと聞いたことがある
ほとけ
初兎
ほとけ
確かにそうや
イベントごとが近くになくても、買いたいやつが売り切れる可能性は十分ある
僕のために前々から用意してくれとったことがわかって嬉しくなる
初兎
ほとけ
初兎
ほとけ
初兎
初兎
中にはうさぎが形どられたホールケーキが入っとった
サイズは4号ぐらいやろうか
4号サイズは2〜4人前ぐらいのサイズやって聞いたことがある
僕らはまだ若いし、なんなく食べ切れそうや
そういえばご飯の量がいつもより控えめやった気がする
ケーキが食べれるように考えてくれとったんやろうか?
きっと優しい彼のことやからそうなんやろう
初兎
ほとけ
ほとけ
初兎
ほとけ
ほとけ
初兎
不意打ちな愛の言葉に恥ずかしさでいっぱいになる
いむくんはかわいいは言っても、滅多に愛の言葉を言わない
そんな彼に真剣な眼差しで言われると、照れへん訳がない
照れやすい訳やないけど、やっぱり恋人には敵わない
初兎
僕も面と向かって好きとか言わへんけど、いい機会やし勇気を出して言った
想像以上に恥ずかしい
穴があったら入りたいとはまさにことのことや
ほとけ
手で口元を覆い、目線外しながらそう言ういむくん
本人は隠しとるつもりやろうけど、耳が真っ赤で照れとるんがバレバレや
初兎
つい本音が漏れてしまった
ほとけ
ほとけ
ほとけ
顔をさっきより赤くしてキッチンへ向かっていったいむくん
いつもは僕ばっかり照れとるし、たまには僕が照れさせる側でもええやろう
ほとけ
初兎
戻ってきたいむくんはいつも通りに戻っとった
名残惜しくもあるが今はこの目の前の甘味を味わいたい
いむしょー
初兎
初兎
足をバタバタさせながら全身で美味しさを感じる
なめらかな舌触りの生クリームにふわふわなスポンジ生地、間に挟まれたフルーツたちが 絶妙にマッチして最高の幸福感を醸し出しとる
ほとけ
初兎
二人で笑顔を浮かべながらケーキを頬張る
紅茶をお供にどんどん食べ進めていく
今日はホンマに最高の誕生日や
家族にメンバー、リスナーさん達に誕生日を祝ってもらえて、 おまけに大好きな彼氏と誕生日の夜が過ごせるなんて僕は幸せ者や
また来年もこんな誕生日が過ごせればええな、と心から思った
〜終〜