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零斗
低く短い声が、陸斗の耳元に落ちた。
零斗だった。
零斗の手は容赦なく俺の首元を掴んでくる。
陸斗
陸斗は、すぐに身を起こした。
ごめんなさい。反射的に、何度も何度も口の中で唱える。
母に殴られる前と同じ癖だった。
零斗に手を引かれ、薄暗い廊下を進む。
お風呂場の扉が開くと、暖かな湯気がもわっと顔に当たった。
陸斗
零斗
陸斗
身体が震えた。
浴槽の湯は張られていて、湯気は柔らかく、タイルは綺麗に磨かれている。
俺の家に風呂はなかった。
母はいつも水をかけるだけで済ませていた。
湯船など、夢のまた夢だった。
零斗
零斗の声は柔らかく笑っていた。
でも、背筋が凍る。
零斗
陸斗
陸斗が慌てて断ると、いつの間にか背後から祐希が入ってきていた。
祐希
祐希
陸斗
蓮
蓮が湯気の中から現れた。 いつ来たのか分からない。
何も言わないのに、空気がピリッと張り詰める。
3人に囲まれた状態。
逃げ場は、もう何処にもなかった。
陸斗
陸斗はとうとう口にした。
「 ありがとう 」なんてただの服従の印でしかないことを知っていながら。
でも、それ以外に生きる術を知らなかった。
蓮の指が、濡れた髪を掬う。
その目はまるで玩具を見るように静かだった。
祐希
祐希が、笑った。