颯斗
けんしん…
謙信
ん?
どうしよう、迫り上がってくる感情が激しく波を立てて俺を襲ってくるせいで息が苦しくなる。
謙信のことが好きだよ、って伝えたいのに。
謙信
颯斗?
颯斗
……っ、
いざ好きな人を目の前にしたら何も言えなくなってしまう現象が今まさに自分に起こっている。
颯斗
(嘘でしょ…)
俺たちは付き合いたてのカップルでもないのに、 どうしてこんなに上手く息ができなくなるの。
颯斗
けんしん、
謙信
どうしたの
颯斗
どうしよ、
颯斗
おれ…変だっ……
視界がじわりと滲み、涙が頬を伝うのが分かる。
謙信
颯斗、どうしたの、
謙信
なんで、
そう言いながら、大きな手で涙が拭われる。
俺の頬に触れる謙信の手の温もりに、
さらに涙が溢れた。
謙信
はやと
謙信
泣かないで
颯斗
っ、
俺の頬に手を当てたまま、 謙信は優しく俺の唇を掠め取った。
謙信は、そっと俺を抱きしめ髪に軽く口付けた。
颯斗
……っ好き、謙信
謙信
俺も好きだよ
颯斗
(ああ、ようやく言えた)
謙信に包まれながら、 ここの中なら上手く息ができるとぼんやりと思った。
俺はきっとこの男に溶かされながら、何度も何度も何度でも、この男に恋するんだろうな。
「俺も」と即答してくれる謙信に胸のときめきを感じる。
せっかくのふたりの時間を有効に使おうと心に決めて 謙信の頬にキスを落とした。